「全人代」「全国政協」でデジタル人民元を議論か
中国の代表的な会議「全国人民代表大会(NPC)」と「中国人民政治協商会議(CPPCC)」の両方で、デジタル人民元(DCEP)が議題にのぼりそうだ。地元メディアGlobal Timesが報じた。
全国人民代表大会(NPC)は3月5日、中国人民政治協商会議(CPPCC)は3月4日に開幕する予定。NPCは中国の立法機関で一院制議会だ。CPPCCは中国共産党が主導し、全国委員会と地方委員会から構成される協力組織。メンバーは各派閥や無党派、社会団体、少数民族や台湾・香港などから選ばれている。
大会を前にして、NPCの香港における代理人Witman Hung Wai-man氏は、広東省の深セン、香港特別行政区で共同のデジタル人民元パイロットテストを行うことを提案。
この目的についてGlobal Timesに「デジタル人民元を採用した、国際的ビジネスについてさらに調査を行うことができる」と説明した。また、「中国本土で活躍する、香港資本の企業が、最初にそうしたテストを実施する可能性がある」と続けている。
またCPPCCのメンバーChen Chunxing氏も、Global Timesに「デジタル人民元ができるだけ早く正式に導入されることを期待している」と語った。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入することの利点の1つは、お金の流通をデジタル形式で追跡し、不正などの根絶に役立つことだという。
こうした発言から、Global Timesはいずれの会議でもデジタル人民元が議題として取り上げられることが予測されるとする。
ただ、デジタル人民元の開発自体は安全性を考慮してこれからも慎重に行われる可能性が高い。今年1月のダボス会議でも、中国国立金融研究所の所長はセキュリティが最も重要だと強調した。今後も実証実験を多く行っていく予定だという。
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フィンテック企業に関連して提示される可能性も
中国人民大学のWang Peng助教授によると、デジタル人民元の議題は、中国のアリババグループの関連会社Ant Groupなどフィンテック企業に対する規制や、その他のフィンテック開発計画とあわせて提案される可能性がある。
中国政府は2020年、資本が不十分なまま上場しているとしてAnt Groupの株式公開を停止。また独占禁止法違反についてもアリババグループの調査を始めた。
デジタル人民元については、取扱いを許可されるのが伝統的な銀行のみとなる見込みである。このためAlipayやWechatpayなど巨大な規模に成長した民間のフィンテックに対して、商業銀行が競争力を取り戻すことに繋がるとの議論もある。
米大手投資銀行ゴールドマン・サックスは、中国の年間総支払い額について、2019年の実績値でフィンテック決済が68%を占めていたことを報告した。民間決済部門が強力になり過ぎていることを、中国政府が警戒している面もあるようだ。
Wang Peng助教授は、フィンテックとデジタル人民元の関係性について詳細に語ってはいないが、もし両者があわせて議題にのぼるとすれば、民間決済と中央政府が準備する決済との兼ね合いに関連することかもしれない。
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