仮想通貨について切り込む
日本維新の会の音喜多駿議員は22日、参議院の財政金融員会において暗号資産(仮想通貨)の税制や規制について麻生財務大臣らに質疑を行った。
仮想通貨税制について
音喜多議員はまず、ビットコイン価格が1BTC=600万円を超え話題を呼んだことに触れるなか、現行の仮想通貨税制について切り出した。「金融商品取引法の改正で暗号資産が金融商品として位置づけられ、株式取引やFX同様、金融資産性をもつ支払手段という複合的な性質をもつことが明確化」したと説明。
租税の公平性という観点から、株式取引やFXなど他の金融商品先物取引等の決済と同様に、「税率20%の分離課税」とすべきと考えるとし、金融庁に見解を尋ねた。これに対し、金融庁中島総合政策局長が回答した。
暗号資産の取引にかかる所得は、株式等の売却益が分離課税とされていることと異なり、雑所得として総合課税の対象となっている。
株式等の売却益が分離課税となっているのは、「家計の資産形成を後押しする」という政策的要請を考慮したものと認識しており、こうしたことを踏まえると暗号資産を株式等と同列に論じることについては、慎重に検討する必要があると考えている。
株式取引などは家計の資産形成という役割を担っているため、仮想通貨取引と必ずしも同列で議論することはできないとの認識を示した格好だ。
この答弁を受け、音喜多議員は仮想通貨は価格変動が大きく投機性があるため、仮想通貨を株式取引等と同じ扱いにすることは難しいという答弁内容に理解を示しつつも、市場の成熟を促すためにも、引き続き税制の変更を検討するよう要請した。
規制緩和を提案
証拠金取引の倍率
続いて、音喜多議員は金融商品取引法の改正により、仮想通貨の証拠金取引のレバレッジ倍率が最大4倍から2倍に引き下げられたことに言及。「規制強化は投資家の自由な取引を妨げると考えられる。施行以降の現状を中止し、定期的に見直す機会を検討するべきと考える」とし、金融庁の見解を問うた。これに対し、金融庁の古澤企画市場局長が答弁した。
18年12月の研究会の報告において、暗号資産の価格変動は法定通貨よりも大きいという実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当である、また、EUにおける規制で2倍とされている、こういうことで2倍とすることを基本として検討すべきという意見があった。
これを踏まえてその条件については、過去のデータから、取引量の多い主要な暗号資産から一日の取引量をカバーする水準を算出・勘案して2倍としている。直近の、例えば1月30日では暗号資産の価格は大幅に変動している。引き続き証拠金取引の倍率は2倍程度が相当であると考えられる。
いずれにせよ、暗号資産の価格変動を含む取引状況や海外の規制同行は継続的に注視している。利用者保護の業務の適正な実施の確保と観点を踏まえ、必要に応じて制度の在り方に関しては検討していきたい。
金融庁は、仮想通貨の価格変動の大きさから、投資家保護という観点で証拠金取引の倍率を引き下げる決定を下したと説明している。これに対し音喜多議員は、倍率を4倍から2倍に引き下げたからといって必ずしも安全性が増すわけではないと反論。「逆に(必要以上に)売買板が薄くなり、リスクが増すという指摘もある」とし、投資家のためにも定期的に制度を見直すよう要望した。
麻生財務大臣への質疑
最後に音喜多議員は、ブロックチェーン技術は欠くことのできない先端技術であると説明し、NFT(非代替性トークン)の盛り上がりにも言及。麻生財務大臣に対し、「ブロックチェーン技術の発展のためにも、規制に重きを置いた暗号資産取引規制について、緩和の方針に転換していくべき」と質疑を行った。これに対し、麻生財務大臣が回答している。
暗号資産に使われるブロックチェーンに関しては肯定的な評価が多いが、暗号資産は投機的な取引を助長しているという指摘、また複数の業者による顧客資産の流出事案等の発生、また、マネロン対策に関する国際的な議論の動向など、さまざまな問題がある。
昨年5月に施行された現行制度を見ると、イノベーションと利用者保護等のバランスを考えながら必要な規制を整備してきたが、利用者保護が確実でないと発展しない。まずは現行制度のもとで暗号資産に関する取引の適切性を確保していくことが重要。
麻生大臣は、「暗号資産は投機を助長する」との従来の見解を繰り返しつつ、過去に国内取引所で大規模なハッキング事件が発生したことやマネーロンダリングの問題が懸念材料にあることを指摘。イノベーションを促進するには、その前提として消費者保護を確実なものにすべきであるとの見解を示した。
過去の麻生財務大臣の答弁
20年6月の参議院財政金融委員会においても、音喜多議員は仮想通貨の税制や規制について質疑を行なっている。
仮想通貨税制については、最大税率55%とされている雑所得に区分される税制をあらためて、国際水準並みの税制にするべく金融庁が旗振り役となって要望するべきと考えると説明。
分離課税にすること、損益通算、繰越控除を認めること、仮想通貨間の媒介や少額決済を非課税化することなど、金融庁として、税制改正要望をするべきだと求めた。
雑所得に区分されている仮想通貨税制については、1900兆円の個人金融資産のうち950兆円ほどが現金預金である中で、各家庭に貯金より投資を勧めているが、政府の政策として暗号資産の税制を改めることは、一般家庭に「暗号資産を家庭に勧めることにつながり、これは現時点では難しいのではないか」と指摘。分離課税に否定的な見解を示した。
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