クリーンエネルギーでマイニングを
米フロリダ州マイアミ市のFrancis Suarez市長は、ビットコイン批判派が指摘するマイニングによる環境への影響は、マイニング拠点を米国に移転することで、「非常に簡単に」解決できると主張した。
暗号資産(仮想通貨)ジャーナリストLaura Shin氏がホストを務めるポッドキャスト「Unconfirmed」に出演したSuarez市長は、現在、ビットコインマイニングの90%が「汚れたエネルギー」を利用している海外で行われていることを問題視。そのため、ビットコインマイニング自体が「汚れた活動」との汚名を着せられたという。
しかしSuarez市長は「原子力発電などによるクリーンなエネルギー」が利用できる米国内にマイニング拠点を増やすことは、国家安全保障の観点からも有益なだけではなく、仮想通貨コミュニティにとっても恩恵があると主張。米国のクリーンなエネルギーがマイニングを支えるようになることにより、ビットコインマイニングに対する論調やダイナミクスも変化するだろうと語った。その中で「是非ともマイアミ市がビットコインマイニングの中心になって欲しい」と改めて意欲を見せた。
また将来に目を向けると、マイニングを促進する技術として、太陽光発電や水素などのクリーンなテクノロジーが登場するだろうと述べるとともに、同氏は、マイニング自体が異なった形態で行われるようになる可能性を示唆。ブロックサイズや認証方法の変更などのテクノロジーの改革により、エネルギー消費の削減、より効率的で安価なマイニングが可能になるだろうと予測した。
仮想通貨の首都を目指すマイアミ
マイアミ市では「仮想通貨の首都」となるべく、仮想通貨の普及を支援する様々な活動が行われている。
直近では、同市のNBAアリーナの19年間の命名権を、仮想通貨取引所FTXが獲得することが、所有者であるMiami-Dade郡委員会で4対1の賛成により承認された。その契約金額は1億3,500万ドル(約148億円)に相当する。
これまではアメリカン航空が命名権を所有していたため、アリーナの屋根には「AA」と飛行機のシルエットが描かれていた。しかし今後はFTXのロゴがNBAチーム「マイアミ・ヒート」のホームコートの屋根を飾ることになる。
Suarez市長は、「大手仮想通貨取引所を誘致できたことは、素晴らしいことだ」と述べ、「仮想通貨都市」としてマイアミ市のブランド力の向上につながるとコメントした。
仮想通貨先進都市の構想
マイアミ市は、米国で最も仮想通貨に友好的なワイオミング州の法律を「模倣し、さらに改善する」ことから、「仮想通貨先進都市」体制を整える政策を推進してきたとSuarez氏は説明。現在は、フロリダ州上下両院で、仮想通貨法案が審議されており、州知事の手元に法案が届いている状態だという。この法案が承認されると、全米でフロリダ州が「最も仮想通貨に友好的な州」になると見込んでいる。
また、マイアミ市では2月、市職員の給与をビットコインで支払うことを可能にする決議案を可決。希望する職員への給与支給だけではなく、市民もビットコインで納税や手数料の支払いができるようになる。
さらに、同市の財務資産の一部にビットコインを組み入れる構想もあるが、法律に準拠するか現在も審査中で、最終的には州議会が判断を下すことになる模様だ。
「仮想通貨は未来」
フロリダ州のブロックチェーン財団と州知事の設立したブロックチェーンタスクフォースのメンバーだったSuarez市長は、早くから仮想通貨の可能性に注目していたようだ。
マイアミ市の公式サイトにもビットコインのホワイトペーパーのリンクを掲載するなど、仮想通貨の技術と理念にに大きな共感を示している。
またポッドキャストでは、政府が抱える巨大な負債を憂い、政府も一般大衆同様、その信用度によって、借金に対する貸付金利が定められるようになるべきだと主張。また、市長という立場にもかかわらず、政府が「独自の判断で紙幣を発行し、自由に金利を設定する」ことで市場操作が可能な通貨体制の限界を指摘した。
将来的には法定通貨が決済を独占するのではなく、人々がビットコインのような民間の仮想通貨で決済する日も可能だと予想を展開した。
さらにビットコインはテクノロジーの民主化を促進し、人々が何に価値を置くかについての認識を共有し、取引を行うことができる優れたシステムを体現してると言及。規制が必要以上にテクノロジーの進化を妨げず、大きなハッキングなどの事件が起こらない限り、仮想通貨の未来は明るいものになると楽観的な見方を熱弁した。
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