ミキシングサービス運営で容疑者逮捕
米国で、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)ミキシングサービスを運営しマネーロンダリングに関わっていたとして、ロシアとスウェーデンに籍を持つRoman Sterlingov容疑者が逮捕されたことがわかった。
ミキシングサービスは、仮想通貨の取引データを複数混ぜ合わせることによって、その仮想通貨の出所や保有者のアイデンティティを隠すもの。本来はプライバシーを強化するための仕組みだが、ハッキングなどで違法に取得した仮想通貨の資金洗浄に利用される事例も少なくない。
Sterlingov容疑者が運営していたとされる「Bitcoin Fog」は次のように説明していた。
当サービスを使用すると、あなたのビットコインは、我々のプール内にある他のユーザーのビットコインと混合され、そこから複数アドレスに払い戻される。
4月26日に米内国歳入庁(IRS)が事件に関して提出した文書によると、「ビットコイン取引、財務記録、インターネットサービスプロバイダーの記録、電子メールの記録」などの分析により、Sterlingov容疑者がBitcoin Fogの主な運営者であることが示されたという。
Bitcoin Fogは2011年10月頃に開設され、2021年4月26日時点でもまだ運営されていた。IRSによると同サイトは、ダークネット(一般に、特定のソフトウェアや設定がなければアクセスできないネット領域)において最も古くからあるビットコインミキシングサイトの一つだ。
2011年から現在まで、このサイトを通じて120万BTC以上、すなわち取引された時点の法定通貨相当額では約3億ドル(325億円)が送金されている模様。最大の送金者は、Agora、Silk Road 2.0、Silk Road、Evolution、AlphaBayなど、主に麻薬やその他の違法商品を取引するダークネット市場だった。
ウェブ掲示板などで公に宣伝も
Bitcoin Fogは、ウェブサイトやTwitterを通じてサービスを公に宣伝していたようだ。
例えばビットコインについての掲示板サイトで「当局や、関心のある研究者など、利害関係者」が、ビットコイン取引の追跡を困難にするためのツールだと紹介している。
他のユーザーから「仮想通貨のミックスに、一般的な取引所を使用することはできないのか」と聞かれた際には、「ほとんどの取引所は、法的根拠のあるビジネスとして運営されており、当局から要請があった場合には、資金に関する情報を明らかにせざるを得ない」と回答。
また関連ニュースも引用して、Bitcoin Fogを使うように促していた。
例えば2017年には、IRSがブロックチェーン分析ソフトウェアを使ってビットコインを追跡しているというニュースへのリンクをツイートしてミキシングの必要性をアピール。2019年には別のビットコインミキシングサイト「Bestmixer.io」をユーロポール(欧州刑事警察機構)が強制閉鎖した件について紹介し、Bitcoin Fogの方が安全であると示唆している。
こうしたことからBitcoin Fogは、自身のサイトが取締りを受けにくいものであると考えていた可能性があるが、今回ついに容疑者の逮捕に至った形だ。違法行為の取締りは、仮想通貨がさらに信頼性を得ていく上でも望ましい。
当局はSterlingov容疑者が「金融商品のマネロン」「無許可の送金ビジネス運営」「無許可の送金」などの違法行為を行っていたとしている。