はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

価格変動損失リスクの少ないオラクル基盤のDEX、CoFiXとは──NESTがアップデートを発表

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

CoFiXがアップデート

イーサリアム上で分散型オラクル開発に取り組むプロジェクト「NEST」は、自身のオラクルを活用したAMM(Automated Market Maker、自動マーケットメイカー)、「CoFiX」のアップデートを実施。このアップデートは主に、リスクヘッジ・プロセスの簡易化や、リスク算出に使用されるアルゴリズムの最適化を目的としている。

NESTのオラクル技術は、仮想通貨Chainlink(LINK)などとは異なる価格取得モデルを基盤に構築されており、アービトラージ取引の特性を活かした分散的な手法で、イーサリアムエコシステム外の価格情報をチェーンに持ち込んでいる。

CoFiXは既存のAMMとは異なる新たなモデルを提供しており、価格変動損失のリスクが少ないなどのメリットがある。これまでにCoinbase VenturesやDragonfly Capital Partners、Huobi Capitalなど、著名投資企業から投資を受けている。

関連:分散型価格オラクルネットワーク、NESTとは

既存AMMのリスク

Uniswapを初めとした一般的なAMM形式のDEX(分散型取引所)では、ブロックチェーン外の価格を反映することが不可能なため、公式を用いることによりトレード価格を設定している。採用されている公式はDEXによって異なるが、基本的には、あるプールに預けられたトークンペアの需給のバランスにより、価格が決定される(Uniswapの場合はx*y=k、kは定数)。

言い換えれば、AMMにおけるトレード価格に影響を与えるのは、プール内にあるトークンの需給バランスのみであり、各トークンの外部の市場価格がどれだけ変動しようと、その価格はAMMでは考慮されていない。

トレーダーのリスク

このモデルでは、多少でもプールに流動性(トークン)が預けられている限り、レートが悪かったとしてもトレードが成立するという利点がある一方、市場価格が反映されないことにより、オーダーブック型の取引所と比較すると、トレーダーにとって損となることもある。

例えば外部の市場では、1ETH=1,000USDTでトレードが成立していたとする。この時、AMMのプール内でETHの需要が高ければ、1ETHを1,000USDT以上の価値でトレードできるため、トレーダーにとっては市場価格で取引するよりも利益が増えることになる。しかし反対にUSDTの需要が高い場合、1,000USDT未満の価値でしか1ETHを売れず、オーダーブック型取引などと比較して損が生じる。

流動性提供者のリスク

一方で流動性提供者も、価格変動損失という、AMM特有のリスクに晒されることになる。

英語ではImpermanent Loss(IL、直訳すると未確定損失)と呼ばれている価格変動損失とは、AMMへ資産を預け入れている(流動性を提供している)間に、価格が変動することにより生じる損失を指している。この損失が生じると、提供した資産を回収する際に受け取ることができる価値と、仮に流動性提供をせずに自身の手元にその資産を置いたままにした場合に保有しているであろう価値を比較した際に、前者の方が少なくなってしまう。つまり、利益を求めて流動性を提供したにもかかわらず、結果として流動性を提供しない方が得であったという状況に陥る。

価格変動損失は、上述のように、既存のAMMモデルでは市場価格に関係なく需給でトレード価格が決定していること、およびそれにより流動性提供の際には、二つのトークンをペアにして預け入れる必要があることに起因している。

価格変動損失の詳細は、「初心者でもわかるUniswap完全ガイド|Kyber network寄稿」に詳しく解説されている。

例えば、AさんがUniswap v2に、1ETH=1,000USDTでETHおよびUSDTの流動性を提供すると仮定する。提供した資産を回収する際は、預けたトークンが全く同量で戻ってくるのではなく、「現在のプールの総価値に対して、どのトークンをどの割合で預け入れたか」に基づいて、回収できる資産の量が決定する。

Aさんの流動性提供の後、何らかの理由でプール内のETHの需要が急拡大したとする。そうすると流動性提供時と比較してプール内のETH量が減少し、反対にUSDTが増加することになる。このタイミングで提供した流動性を回収しようと試みると、プール全体の需給のバランスがAさんの流動性提供時とは異なっている、つまりETHが減少しUSDTが増えているため、1ETHよりも少ない量のETHおよび1,000USDTよりも多い量のUSDTが返ってくることになる。

この場合、ETHの市場価格によっては、流動性提供せずにウォレットなどに保管していた方が、ETHおよびUSDTの総価値が高くなることもありうる。

オラクル基盤の市場価格に基づいたAMM

上記のトレーダーおよび流動性提供者のリスクは、市場価格を反映できないというAMMの設計に付随したリスクである。裏を返せば、市場価格を反映する方法があれば、需給に基づいた公式がなくてもトレードが可能になるため、このようなリスクは軽減される。

CoFiXでは、NEST開発の分散型オラクルを統合することにより、市場価格でのトレードを可能にしている。Bancorのv2やDODOに類似した仕組みだ。このようなオラクル統合型のAMMでは、21年5月にローンチが話題となったUniswap v3とは全く異なる観点から、変動損失のリスク軽減に取り組んでいる。

関連:Uniswap v3、イーサリアムメインネット実装完了

具体的には、CoFiXで流動性提供する場合、流動性提供者はUniswapなどと同様にあるプールにトークンを預け入れる。ここまでは一般的なAMMと同様だが、実際にそのプール内でトレードが行われた際は、トレード価格はx*y=kのような公式に沿ってではなく、オラクルから提供される市場価格を基に決定される。そのため、前述のように市場価格とのズレから生じるトレーダーの損や、流動性提供者の価格変動損失が、既存のAMMの規模では起こり得ない。

また、オラクルから市場価格を取得することにより、ボラティリティを初めとしたリスクの数値化が容易になるため、多くのAMMのような固定手数料(Uniswap v2では一律で0.3%)ではなく、流動性提供者が負いうるリスクの大きさに応じた手数料を、ユーザーに課すことができる。つまり、オラクルでより正確にリスクを計測することにより、そのリスクに見合った報酬を流動性提供者へ与えられるようになる。

NESTは、このような全てのパラメータが数値化可能な金融サービス群を「Computable Finance(計算可能な金融)」と呼び、CoFiXの名前の由来にもしている。

v2へのアップデート

CoFiXは、5月にv2へのアップデートを発表。複数の変更がプロトコルに加えられたが、最も特筆すべきアップデートは、リスクヘッジ方法の変更だ。

一般的な価格変動損失のリスクが軽減されたとはいえ、プール内の需給のバランスが崩れた場合には、CoFiXの流動性提供においても、引き出せる資産の総価値が下がる可能性は拭いきれない。v1では、流動性提供者が、CoFiX以外の取引所でアービトラージ取引を手動で実行することにより、このリスクを回避するしかなかった。

しかしv2では、このプロセスが自動化された。あるトレードによりプール内のトークン比率が崩れた場合、元の比率に戻すことを目的に、比率を崩したトレードとは逆のトレードを行うようなインセンティブがトレーダーへ付与される。このインセンティブも、オラクル価格を基に数値化されており、リスクが大きければ大きいほど、インセンティブも大きく設計されている。これにより、トレーダーのリスクを正確にカバーできるようになる。

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/22 木曜日
13:45
バイナンス、トランプ関連のステーブルコイン『USD1』を新規上場予定
世界最大手取引所バイナンスがWorld Liberty Financial発行のドル裏付けステーブルコインUSD1を5月22日に上場開始。BitGo管理で時価総額21億ドル規模。
13:30
米国のビットコイン保有者5000万人突破、金ホルダーを上回る=Riverレポート
River社が、米国でビットコイン保有者が5,000万人に達しゴールド保有者を上回ったと報告。米国の仮想通貨ビットコイン採用は世界をリードしているとして様々なデータを示した。
12:45
ワールドコイン、WLD価格10%上昇 新たに200億円調達
仮想通貨プロジェクトWorld Network(ワールドコイン)が200億円分のWLDトークンをa16zとベインキャピタルに売却し資金を調達し、米国展開を本格化へ。
12:03
ビットコイン史上最高値11万ドル突破、専門家の年末20万ドル予測も
ビットコインが史上最高値を更新し、11万500ドルを記録した。英スタンダード・チャータード銀行は年末20万ドル、著名投資家は8月15万ドルを予測する理由を解説。ブラックロックCEOの後押しやトランプ政権の規制緩和、米財政不安によるヘッジ需要が上昇要因に。
11:10
「ビットコインは最大100万ドル到達へ」金持ち父さん著者キヨサキ
『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏は、仮想通貨ビットコインの価格が50万ドルから100万ドルに到達すると予想。今回の予想の背景には、米国債入札の低調さがあるようだ。
10:55
VanEck、アバランチ投資ファンド「PurposeBuilt」を立ち上げ
資産運用大手VanEckが仮想通貨アバランチ上のプロジェクトに投資する新ファンドをローンチする。長期的価値を重視し価値ある事業を進めるプロジェクトに投資していく。
10:20
4月に新規採掘超えのビットコイン売却、マイナーの資金難鮮明に 5月の急騰直前=レポート
仮想通貨ビットコインマイニング企業が4月に生産量を上回る115%のビットコインを売却し5月の価格上昇の恩恵を受けられず。ハッシュレート競争激化の中、CleanSparkが40EH/s超え、IRENがRiotを抜き3位に浮上。
09:20
12億円でイーサリアム追加取得、米上場のBTCS社 ETH保有量38%増
米ナスダック上場BTCSが842万ドルで3450ETHを追加取得。保有量12500ETHで38%増。イーサリアム戦略強化でステーキング収益拡大を目指す。
08:25
二代目ソラナスマホのSeeker、独自トークン「SKR」発行へ
仮想通貨ソラナのスマホを開発するソラナ・モバイルは、独自トークンSKRを発行する計画を発表。Seekerの正式な出荷開始日は2025年8月4日に決定した。
07:45
イーサリアム・XRPなど仮想通貨市場で売り圧力が大幅低下=Cryptoquant分析
仮想通貨イーサリアム、XRP、ビットコインの取引所流入量が急減し売り圧力が低下。一方でUSDT在庫は469億ドルの史上最高を記録し、仮想通貨市場の流動性をブーストしている。
07:45
時価総額311兆円到達、ビットコイン 最高値更新でアマゾン超え世界5位に
ビットコイン時価総額が2.16兆ドルに達しアマゾンを上回り世界第5位に。機関投資家による需要がビットコインETFの運用資産額を大幅に押し上げた。
07:30
ビットコイン史上最高値更新、テキサス州法案可決とバンス副大統領期待が後押し|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは、22日未明に史上最高値を更新した。その背景には、米国第2位のGDP規模を有するテキサス州において「ビットコイン準備金法案」の成立見込みが高まったことが決定的な要因として挙げられる。
06:29
運用額9兆円のビットコインETF『IBIT』、米ETFランキング5位に急浮上
米ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」が1ヶ月で47位から5位へ急上昇。89億ドルの年初来純流入と669億ドルの運用資産を達成し、金など従来の金融商品と肩を並べる存在感を示す。
06:15
ミシガン州で仮想通貨法案4つ提出、州退職基金のビットコイン投資など
ミシガン州でも動き 22日に、ミシガン州議会で4つの仮想通貨関連法案が新たに提出された。 法案は州退職基金のビットコイン投資許可、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の禁止と権利保…
05:40
テキサス州下院がビットコイン準備金法案『 SB21 』を可決 最終成立には上院再承認が必要
テキサス州下院がビットコイン戦略準備金設立法案を可決。上院の再承認が必要で、知事の署名を経て、ニューハンプシャー州、アリゾナ州に続く米国3州目のビットコイン保有州となる見込み。なお、初期投資は数千万ドル規模と予測。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧