米モルガン・スタンレー主導の投資ラウンド
デジタル証券の発行と管理プラットフォームを提供する米セキュリタイズ(Securitize)が、4800万ドル(約53億円)の資金調達に成功したことがわかった。
今回の投資ラウンド(シリーズB)は、米モルガン・スタンレーとブロックチェーン ・キャピタル(Blockchain Capital)が主導し、日本からは三井住友信託銀行やNTTデータが新規に参画。暗号資産(仮想通貨)業界からもリップル社やAva Labsが参加した。
今回初めて参加した投資家ならびに既存の投資家は、セキュリタイズの株式を同社が発行するデジタル証券(セキュリティトークン=ST)の形で受け取ることになるという。
またセキュリタイズは、今回の資金調達の成功を受けて、取締役会のメンバーにモルガン・スタンレーからPedro Teixeira氏を迎える。セキュリタイズへの資金提供は、モルガン・スタンレーにとって初のブロックチェーン分野への投資となる。
Teixeira氏は、モルガン・スタンレーの「Tactical Value Investing (戦術的価値投資)」部門を率いており、「デジタル資産証券化の先駆者」であるセキュリタイズへの投資は、「デジタル資産証券の成長と普及を確信している」ことの証だと述べている。
セキュリタイズと三井住友信託銀行の提携
三井住友信託銀行は今年3月末に、国内初となるセキュリティ・トークン(ST)の発行を発表。セキュリタイズの日本法人、Securitize Japan株式会社のSTOプラットフォームを通じて、証券化商品を裏付けとするST発行の試験的取り組みを実施した。
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同行によると、受益証券発行信託を設定後、受益証券を不発行とした上でトークン化し、ブロックチェーン上の記録と受益証券発行信託の受益権原簿を書き換えることで、投資家の権利移転が可能になる仕組みだという。
また、ST(=デジタル化された有価証券)の法的な位置付けは、2020年5月施行の改正金融商品取引法および関連政府令等によって明確化されていると同行は説明している。
執行役員法人企画部長の若尾一輝氏は、このようなST発行に加えて、今回のセキュリタイズへの投資は「商業的に最も利用され、先進技術に支えられたデジタル資産証券ソリューションとの連携をさらに強化する」とコメント。「日本と世界における金融サービスのデジタル化をリードし、付加価値の高い最先端の商品とサービスの提供が可能になる。」と付け加えた。
国内大手との提携
2017年に設立されたセキュリタイズは米サンフランシスコを拠点としているが、日本では完全子会社であるSecuritize Japan株式会社が、以下のような国内著名企業との提携を進めているようだ。
- SBI アセットホールディングス:同社のデジタルウォレット・カストディソリューションとセキュリタイズのデジタル証券発行・管理プラットフォームの統合を計画
- NTTデータ:日本市場向けSTプラットフォーム実現に向け共同研究開始
- 株式会社LIFULL(住宅・不動産情報サイト運営):不動産のデジタル証券化サービス
セキュリタイズは、これまでに、野村、三菱UFJフィナンシャル、SBIホールディングス、ソニー・フィナンシャル・ベンチャーズ、三井不動産の31Venturesなどから出資を受けている。
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仮想通貨レンディングの証券化
一方、セキュリタイズ本社は米国内で暗号資産(仮想通貨)レンディングの利回りをデジタル証券化するために、先月、完全子会社となるSecuritize Capitalを立ち上げた。
ビットコイン(BTC)とステーブルコインUSDCの利回りファンドを、アルゴランド(Algorand)ブロックチェーン上でデジタル証券化し、仮想通貨とDeFi(分散型金融)で得られる利回りへのアクセスを提供する。まずは適格認定を受けた機関投資家のみへの提供となるという。
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さらに、同社はデジタル証券取引のための市場「Securitize Markets」も開発中で、今後数ヶ月以内に立ち上げが予定されている。