はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

分散型取引所DODOの女性CMOが語る、DeFiにおけるAMMのメリット・デメリット

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

DODO・CMOインタビュー

分散型取引所DODOのCMO(Chief Marketing Officer)and Co-FounderであるDiane Dai氏はブロックチェーン業界では数少ない女性コーファウンダー(共同設立者)の一人。DeFi(分散型金融)の優れている点やクリプト業界におけるダイバーシティ(多様性)などについて意見を伺った。

寄稿者:Diane DaiDiane Dai

DDEXで2017年から2年間インターンとしてメディアマーケティングやコミュニティー形成を担当。

初期DeFiプロジェクトについて深く調査する過程で、ファイナンスとブロックチェーン技術とのシナジーを感じて、2018年よりDeFiに関する個人ブログを開始。DeFiの概念や早期プロジェクトを中国ユーザーに紹介し、中国界隈では初期のDeFi系インフルエンサーとなる。

黎明期のDeFi・ブロックチェーン業界に可能性を感じ、2020年8月にDODOを設立。現在も共同設立者の一人としてチームを率いる。

DODO設立の経緯(Diane Dai氏寄稿)

私のインターン先だった取引所DDEXは、オーダーブック(板取引)形式を採用していました。マーケットメイカーは人間が操作していたため、市場のボラティリティに反応することができたため、資本効率制に優れていました。

ただ、これは伝統金融ではうまく機能したこの仕組みなのですが、ブロックチェーンのオンチェーン上では、ガス代(イーサリアムの取引手数料)が多く発生してしまう問題があります。

その点では、AMM(自動マーケットメイカー)は全てのトレードがオンチェーン上で一つのトランザクションとして完結する為、ガス代の低下を抑えるのには良いシステムです。しかし、AMMには資本効率が悪いという欠点があることに気付きました。

(AMMの)XY=kという方程式は全ての資本を価格帯に平等に配置するため、市場価格付近の資本しか利用されない不効率的な状況が発生してしまうのです。

そこで、伝統金融のオーダーブック形式とAMMを融合することで、双方の課題を克服する新たなマーケットメイカーを生み出す案に辿り着きました。

AMMとは

Automated Market Makerの略称。予めプログラムされた価格決定アルゴリズムにより、注文の約定が自動化、及び最適化されたマーケットメーカー。分散型取引所が急速に発展する基盤となった。

スマートコントラクトを利用したプールにトークンを提供することで、オーダーブックを介さずトレードできる仕組み。

▶️仮想通貨用語集

関連:AMM(自動マーケットメーカー)が価格に与える影響とは|

他のDEXとの違い

DODO独自のマーケットメイカーモデルであるPMM(プロアクティブ・マーケット・メイカー)アルゴリズムは、資本効率を増加させつつ、スリッページ(注文価格と約定価格の差)や変動損失を最小限に抑える事ができます。

AMMが分散化金融の世界を変えたのは揺るぎない事実です。しかし、「XY=K」の方程式は市場価格に頼り過ぎていて、人間のマーケットメイカーのように市場のムーブメントに応じてプロアクティブなトレード戦略を取らなかったり、取らないことがあります。

AMMの最大の欠点は先ほども申し上げた通り、価格帯で資本を均一に配当してしまう点です。つまり、トレードでは市場価格に近い資本しか活用されない為、AMMモデルでは多くの資本が活用しきれていない状況が発生します。

この点では、人間のマーケットメイカーの方が優れていると思います。市場から得た情報に基づき、変動している途中に動くことができます。マーケットの中値(高値と安値との中間の値段)付近でのみ注文を入れ、より高い価格で売る、またはより低い価格で買おうとします。そして市場価格が変化した際には、古い注文をキャンセルして新たな価格を中値で追います。

ブロックチェーン業界の優れている点

ブロックチェーン業界は、誰でも許可なくアクセス可能なパーミッションレスでボトムアップ、そして日々進化を遂げているプラットフォームです。

伝統金融では、企業を設立するには様々な機関で登録しなければならず、ベンチャーキャピタルからの資本を受けるためには、創設者は高度な教育水準やキャリア経験を有する必要があります。

しかし、ブロックチェーン業界は起業家の参入障壁を下げ、誰でも優れたプロダクトを提供できれば特定の機関から許可を得る必要もなくなります。イノベーション(技術革新)と相互運用性、そして構造可能性を持ち合わせていると言えます。また、ブロックチェーン上では、レゴピースのように異なるプロトコルでも連携して組み合わせる事で新たなものを生み出すこともできます。

そして、ブロックチェーン技術はエコシステム内のプロトコルが絶えず自己進化しているので、無数の可能性を秘めています。他にも、ブロックチェーンはプロジェクト自体の所有構造さえも変えてしまいます。

伝統金融では、事業主やオーナー、そして従業員だったのが、この業界ではDAO(自立分散型組織)とコミュニティー、すなわち投資家と界隈のユーザー全員が平等にプロジェクトの方針に発言することが可能です。また、トークン経済を通じて、誰でも方向性の決定に参加できます。

対照的に、Web2.0企業や伝統企業など従来の事業体制では、自社のプロダクトやサービスから可能な限り多くの価値を引き出すことで、株主の利益を最大化するために設計されています。

しかし、ブロックチェーン上の分散化プロトコルはフリーでオープンソースです。利益を最大限することを課す法的義務も無いため、全ての人にアクセス可能な公共財として捉えられます。

DeFi業界の課題とは

私はDeFiの課題が主に以下の点だと考えています。

  • 資本効率性の低さ
  • DeFi 1.0:AMMと流動性マイニング
  • DeFi 2.0:他の手段で資本効率アップする手段を模索
  • セキュリティー面の改善

DeFi業界の喫緊の課題は、資本効率の改善だと思います。

現状では、個人投資家に対するクジラ(大口投資家)のアドバンテージが大き過ぎるのです。市場に及ぼす影響があるため、高いイールド(利回り)を得ながら、多大な資本でコミュニティーのガバナンス投票も左右できてしまいます。

将来的には、このようなDeFiクジラに有利に働き過ぎている状況は、インセンティブ設計などで変化していくことも大いに有り得ると思います。

現在、最も主流なインセンティブ設計は流動性を提供することと引き換えに取引手数料や採掘(マイニング)報酬をもらう仕組みですが、これは多くの資本を持っている投資家が優先される状況です。

長期的には、単純にプロトコルに流動性を提供するだけではなく、コミュニティーのガバナンスやキャンペーンへの参加に応じたインセンティブなど、個人投資家が恩恵を受けられる方向に進んで行くと予想しています。

また、私の専門分野では有りませんが、今後DeFiが主流化する為にはセキュリティー面の改善も必要不可欠だと思います。

DODOに対する日本コミュニティーの印象

DODOが日本市場へと参入したのは最近ですが、すでに予想を上回る多くの温かいご声援をいただいております。我々の日本ファンはDODOアバターをゲーム内で利用したり、設立1周年を記念したDODOをテーマとした食器やお菓子を作ってくれました。

10月にDODOグッズの配布キャンペーンを開催した際には、DODOのキャラ・デザインやグッズが特に好評でした。(特にDODOフィギュア)

DODOチームは日本コミュニティのサポートを心より感謝しております。我々の平均年齢は比較的若く、私やCEOのRadarbearをはじめ、多くのチームメンバーは日本のアニメやマンガ、ゲーム文化を楽しみながら育ちました。

DODOチームは日本の仮想通貨コミュニティーと強い繋がりを築けているため、今後も日本との関係をさらに強めていけたらと願っております。

またNFT(非代替性トークン)関連のプロダクトやサービスは今後もDODOの主要分野であるため、長期的には日本のエンタメ要素とNFTを組み合わせる新たな機会を探っていきたいと考えています。

NFTとは

「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能で固有の価値を持つデジタルトークンのこと。ブロックチェーンゲームの「デジタルアイテム」交換などに用いられるのみならず、高額アート作品の所有権証明や、中古販売では実現の難しかった「二次流通市場」における権利者(クリエイター)への画期的な還元手段としても注目を集める。

▶️仮想通貨用語集

関連:大企業の関心集める「NFT」の魅力とは|主な特徴と将来性を解説

クリプト業界とダイバーシティ

クリプト業界において女性の創設者(ファウンダー)は非常に珍しいです。中国や海外でも、多数のパネルやカンファレンスに参加してきましたが、女性が私一人というケースが大半です。

しかし、この業界において女性がファウンダーになる事に対する抵抗感を感じた事がありません。実際、多数のイベントやポッドキャストなどで仮想通貨業界における女性としての視点から私自身の体験について語る機会も多くありました。

非常にインクルーシブ(包括的)で前進的、かつ急速に発展を遂げている仮想通貨業界の中で、素晴らしいチームを率いることができるのは大きな祝福だと感じております。

しかし、この業界において女性メンバーがコミュニティーから見過ごされがちな部分があるのも事実です。グローバルな仮想通貨コミュニティーにおいて、私は多数の女性デベロッパーやベンチャーキャピタリスト、トレーダーなどを知っています。

にも関わらず、多くの人は仮想通貨・DeFi業界にいるメンバー全員が男性だと勘違いしているようにも思えます。ユーザーが男性主導であると決め込んで男性をターゲットとしたプロダクトやマーケティングを行うプロジェクトも少なくありません。

このコミュニティーが本当に包括的でダイバースになるためには様々なグループの人々が必要です。私自身、可能な限り多くのインタビューやパネル、カンファレンスに出演して、DODOの文化や私の意見を述べるだけでなく、クリプトに関心を持つ女性も存在して、日々増えていることも知ってもらえたらと思っています。

DEX初心者はどこからスタートするべき?

DeFiは全般的に非常に複雑でリスクが伴うため、初心者の方は大きな投資をする際には用心するべきです。

DEXなどについてより深く学びたい方には、DEXの主要機能の一つであるイールドファーミングから始めてみるべきだと伝えています。また、その際にはステーブルコインなどのようなローリスクな資産を活用するのが良いでしょう。

また、異なるDEXでトークンスワップ機能も試せば、(従来の)中央集権的な取引所より多くのトークン銘柄へのアクセスが可能となります。

もちろん、これは投資助言や投資の売買の推奨、勧誘ではありません。投資判断を行う際はどうかご自身で必ず調査を行って下さい。

DeFiは複雑ですが、その分新しい事を学習する報酬もあります。興味心を忘れず、様々なドキュメントや記事を読んで学びのプロセスを楽しんで下さい。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/02 水曜日
18:40
BITPOINT、カルダノ(ADA)保有者向けNIGHTエアドロップを検討開始 
ビットポイントジャパンがMidnight財団と国内初連携。カルダノ(ADA)保有者やステーキング参加者に「NIGHT」トークンのエアドロップ参加機会を提供。2025年7月開始予定の「Glacier Drop」メカニズムの詳細と参加条件を解説。
13:45
トランプ大統領、イーロン・マスクに対する批判を再び展開、 『大きく美しい法案』巡る対立が再燃
「大きく美しい法案」をめぐり、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の対立が再燃している。マスク氏の痛烈な法案批判に対し、トランプ氏は、マスク氏が率いる企業の政府補助金受給について政府効率化局(DOGE)で調査すべきと発言し、かつて盟友だった両氏の関係は緊迫感を増している。
13:20
アリゾナ州知事、押収仮想通貨の準備基金法案『HB2324』を拒否権行使
アリゾナのホブズ知事が犯罪捜査で押収した仮想通貨管理法案を拒否。地方自治体の協力阻害を懸念と声明。
11:45
パクソス、ステーブルコインUSDGを欧州全域でローンチ サークルとの競争激化
パクソスが米ドル建てステーブルコインUSDGをEU全域で発行開始した。MiCA規制に準拠している。合計30か国に展開しており、ステーブルコイン時価総額ランキングでは15位だ。
11:10
ナスダック上場DeFi Development Corp、1億ドル転換社債発行 ソラナ蓄積戦略を拡大
米初のソラナ準備金戦略企業DeFi Development Corpが1億ドル転換社債の私募発行を発表。調達資金でSOL購入継続、バリデータ運営による複利成長を目指す。
10:50
上場企業のビットコイン購入量24万BTC超えも、価格には反映されず その理由は?
2025年上半期に世界の上場企業が仮想通貨ビットコインを24万5510BTC購入しETF保有数の2倍超。前年同期比約5倍増でマイクロストラテジー戦略が拡散、企業準備金としての位置づけが確立された。
10:30
米SEC、仮想通貨ETFの上場基準を策定か 審査迅速化に期待
米証券取引委員会が、ビットコインなど仮想通貨ETF向けの汎用上場基準策定を検討していると伝えられる。19b-4様式省略により審査迅速化が期待される。
10:20
ETH1万ドル到達は『義務』と表明、イーサリアムに新組織誕生
仮想通貨イーサリアムに、イーサリアムコミュニティ財団という新たな組織が誕生。公式サイトで、イーサリアムの価格に特化した組織であると説明している。
07:55
NYSE上場DDCが760億円調達完了、ビットコイン準備金戦略を本格始動
アジア食品ブランド運営のDDC EnterpriseがNYSE上場企業として最大規模の仮想通貨専用資金調達を実施。Anson Fundsらから総額5億2800万ドルでビットコイン準備金構築へ。
07:25
XRP戦略推進へ、ナスダック上場のWebusが1億ドル調達合意
ナスダック上場のWebusがリップル・ストラテジー・ホールディングスと1億ドルの資金調達契約を締結。仮想通貨XRPを活用した事業戦略推進により株価が日中130%上昇も最終的には8%反落。
07:15
「ビットコインが25年に20万ドルへ到達するとの予測は維持」Bitwise
仮想通貨運用企業Bitwiseは、2025年の10の予測に対する中間評価を公開。ビットコインが20万ドルに到達するとの予測は維持することなどを記載した。
06:50
ストラテジーのビットコイン循環戦略、NAV超プレミアムを正当化か=TD Cowen分析
ストラテジーの株価は純資産価値(NAV)を大きく上回って推移。継続的な株式発行が1株あたりのBTC保有を押し上げる構造が、投資家の注目を集めている。アナリストはその持続性とリスクに着目している。
06:12
ビットコイン利確が加速 第3四半期は過去最弱の季節性=アナリスト分析
仮想通貨ビットコインの利確が進む一方、市場は方向感に欠ける展開。第3四半期は過去最弱の季節性もあり、アナリストは地政学リスクや米金融政策の不透明感に警戒を示している。
05:50
トランプ大統領の「大きく美しい法案」上院可決も、仮想通貨少額免税案は見送り
トランプ政権が推進する大型予算法案に、仮想通貨の少額免税や報酬課税見直しの修正案は含まれず。ルミス上院議員は今後の再提出を示唆し、業界団体もロビー活動を継続する構え。
05:37
米SEC、ビットコインやXRPに投資するグレースケールの仮想通貨ファンドETF化を承認
米証券取引委員会(SEC)は、グレースケールのバスケット型ファンドのETF転換を加速承認。構成資産の約8割をビットコインが占めており、今後の仮想通貨ETF全体に追い風となる可能性も。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧