仮想通貨がもたらす脅威を強調
ロシアの中央銀行は19日、暗号資産(仮想通貨)に関する報告書で、「仮想通貨がもたらす脅威」を縮小するため、法改正を通じて同国内での仮想通貨使用及びマイニングを禁止することを提案した。
ロシア銀行は、仮想通貨の普及がロシア国民の福利や金融システムの安定性に重大な脅威をもたらし、犯罪行為を助長するものである主張した。具体的には以下のような可能性を指摘している。
- 仮想通貨の大きな価格変動や不正行為が国民の投資資金に損失をもたらす
- インフレ抑制など金融政策の主権が制限される=金利の上昇=民間への信用供与が減少する
- 従来の金融セクターから資金が流出=実体経済への資金供給能力や経済成長力の低下=雇用や所得増加の可能性を低下させる
- マネーロンダリング、麻薬取引、テロ資金供与などの違法行為に利用されている
特にロシアなどの新興国市場では、代替通貨となる傾向が強いことや「不十分な金融リテラシーのレベル」により、仮想通貨に関連した金融安定性リスクが高まると、同行は主張している。
法改正の提案内容
ロシア銀行は次の三点において、仮想通貨に関する法改正を行うよう提案した。
(1)ロシア連邦の居住者(法人及び個人)が、法的に禁止されているのに反して、仮想通貨を決済手段として利用した場合の責任を規定する
(2)ロシア連邦において、仮想通貨の発行及び(あるいは)流通機関(仮想通貨取引所、P2Pプラットフォームを含む)を禁止し、違反した際の責任を規定する。
(3)金融機関が仮想通貨および関連金融商品に投資すること、またロシアの金融仲介業者と金融インフラを使用することを禁止し、違反した場合の責任を規定する。
ロシアでは現在、商品やサービスに対して仮想通貨を支払い手段として利用することは禁止されているものの、仮想通貨の保有や売買自体は禁止されていない。2020年7月、「デジタル金融資産関連法」が制定され、仮想通貨取引は合法となった。
一方、ロシア銀行は一貫して仮想通貨に対して懐疑的な態度を変えていない。先月も関係筋の話として、ロシア中銀が国内での仮想通貨投資を禁止する可能性が浮上していた。
マイニングも禁止
ロシア銀行は仮想通貨だけではなく、マイニング活動についても、仮想通貨市場に対する国民及び国家経済の関与を高めるものであるとして、その普及に懸念を抱いているようだ。
現在、ロシアは米国、カザフスタンに次ぐ世界3位のマイニング大国となっている。
報告書では、マイニングによる「非生産的な」電力消費は、エネルギー面の安全保障や環境問題に影響を与えると指摘。また、仮想通貨取引インフラの需要を生み出すため、「仮想通貨が普及するという弊害」を増大させ、規制回避のインセンティブを生み出すものだと同行は主張。ロシア国内での仮想通貨のマイニングを禁止することが「最善の解決策」であるとした。
CBDC
報告書によると、ロシア銀行を含む多くの中央銀行は近年、即時決済が可能な決済システムを積極的に導入しているという。さらに、同行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を開発中であることに言及。CBDCは国民や企業にとって、最低限の手数料で即時取引が可能になる新たな決済インフラとなると説明した。
そのため、高速で利便性があり、かつ安価であるという仮想通貨の利点は、政府が現在構築している決済システムと、将来的にはCBDCで実現可能だと強調した。