不安定な財務バランス
暗号資産(仮想通貨)融資企業Celsius Network(セルシウスネットワーク)は、一番最近の資金調達の時点で、一般的な米国の銀行の2倍に近い資産対株式比率を有しており、財務リスクが高かったという。米ウォールストリートジャーナルが報じた。
セルシウスは、2021年10月にWestCapが主導する約550億円(4億ドル)の資金調達ラウンドを実施。この時点で約2.6兆円(190億ドル)の資産と約1,370億円(約10億ドル)の株式を有していた。
この割合(約19:1)は、S&Pコンポジット1500指数に組み入れられている北米の銀行全体の資産対株式比率の中央値である9:1よりはるかに高い。
規制当局は通常、この数値をリスク指標として見ている。セルシウスの比率は、中央銀行からの融資を受けることが可能で、通常よりはるかに安定した資産を保有する大手銀行の典型的なものだった。
この比率は、大手銀行のように、キャッシュフローが安定しており、今後もそのキャッシュフローが続くと予想される場合は、高い水準でも許容されることがある。
S&Pコンポジット1500指数とは
米S&P社が提供する米国株価指数。米国を代表する大型株500社(S&P500)、中型株400社(S&P MidCap 400)、小型株600社(S&P SmallCap 600)で構成されている。
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シカゴ大学の経済学者エリック・バディッシュ氏は、こうした財務バランスについて、「リスクの高い仕組み」であり、様々な資産にポートフォリオが分散化されている様子は、2008年に金融危機を起こした住宅ローンの問題を彷彿とさせるとコメントした。
USTディペッグ騒動も背景に
セルシウスは13日、stETHトークンの価格乖離を受け「極端な市況」を理由に顧客資金の引き出し、仮想通貨のスワップや口座間の送付を停止しており、オンチェーン分析からは流動性危機に直面しているとの憶測も広まっていた。
17%の高金利サービスを提供してきたセルシウスは、DeFiを利用して顧客の預かり金でイールドファーミングを行ってきたと見られ、5月のLuna/USTの急落でも、一定の損害を被った可能性が指摘されているところだ。
stETHの価値は通常、イーサリアム(ETH)と1:1でペッグされてきた。ブロックチェーン分析企業Nansenはこの価格乖離について、USTのディペッグとその後のTerraエコシステムの崩壊に起因する可能性が高いとの調査結果を発表している。
2/ Our on-chain investigation revealed that contagion stemming from the de-peg of UST and subsequent collapse of the Terra ecosystem was likely the main factor for stETH deviating away from this historical 1:1 stETH/ ETH ratio. pic.twitter.com/SnIWPpIJdy
— Nansen🧭 (@nansen_ai) June 29, 2022
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同社の弁護士は、セルシウスに破産手続きを推奨しているが、幹部はこの申し出に反対していると伝えられる。また、ゴールドマン・サックスがファンドを通して同社の資産購入を検討している可能性もある。
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出金停止相次ぐ
USTディペッグ騒動や市場停滞により、セルシウス以外にも、出金停止措置を行った仮想通貨企業は相次いでいる。
仮想通貨融資プラットフォームのBabel FinanceやMaple Finance、仮想通貨先物取引所CoinFLEXも出金を停止した。また、仮想通貨ヘッジファンドThree Arrows Capitalは、英国領ヴァージン諸島(BVI)の裁判所から企業の清算を命じられており、事実上の破産とみられる。
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