SECが仮想通貨投資信託を調査
米大手資産運用企業グレースケールは16日、規制当局への提出書類で3つの暗号資産(仮想通貨)投資信託について米証券取引委員会(SEC)から質問を受けていると報告した。該当トークンが証券である可能性についての調査であるとしている。
具体的には、同社が提供するジーキャッシュ(ZEC)、ステラ(XLM)、ホライズン(ZEN)の投資信託が対象となっていた。
グレースケールはSECの企業金融部門と執行部門のスタッフが、これらの資産を証券法の下で検討するにあたって同社に連絡してきたと説明。現在、その質問への回答を準備している最中であるとしている。
グレースケールは、これら3つの投資信託に関するリスク開示情報で、ZEC、XLM、ZENがSECにより証券とみなされた場合のリスクについても掲載した。次のように、投資信託を終了する可能性についても説明している。
もしSECなどの当局が、これらの仮想通貨を州証券法上の「証券」であると判断した場合には、当該投資信託も「投資会社法」などの下で追加規制の対象となり、グレースケールが投資顧問として登録する必要が生じる可能性がある。
当社は、こうした追加的な規制や登録要件の遵守が難しいと判断した場合、当該投資信託を終了させる。
グレースケールは、SECの姿勢についても言及した。「SECは、一部のデジタル資産が連邦証券法上の証券とみなされる可能性があると表明」しているが「証券であるかどうかを判断するためのテストは複雑で適用が難しく、その結果を予測することは困難」であるとする格好だ。
グレースケールとは
正式名称はグレースケール・インベストメント。同社はビットコインの価格と連動した「Grayscale Bitcoin Investment Trust(GBTC)」やイーサリアムの価格と連動した「Ethereum Trust(ETHE)」など多数の投資信託を運営している。
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全米で未登録証券を調査か
SECは最近、仮想通貨取引所が未登録証券を提供しているかどうかについての調査に注力している模様だ。4日には、SECが米国で40以上の取引所を調査している可能性があると伝えられたところだ。
一例として、米仮想通貨取引所コインベースは9日、第2四半期(4~6月)の決算報告書に伴う書類で、ステーキングサービスなどに関してSECから調査を受けていることを報告している。
また別途SECは、コインベースの元従業員らがインサイダー取引で逮捕された件について、被告が取引していた資産の中には証券とみなされるものがあるため、不正行為には「証券詐欺罪」も加えられるとした。
一方でコインベースは、SECが証券とみなしたAMP、RLYなどは「証券ではない」と反論している。コインベースは上場前に証券に当てはまるかどうかについても厳密に分析を行っており、「そのプロセスはSEC自身も監督している」と主張する形だ。
また、SECは「包括的で透明性のある規制を構築するかわりに、単発の強制措置を行って」取り締まろうとしていると批判した。
関連:米SEC、コインベースのステーキングサービスなどを調査
前SEC委員長の意見
2020年までSEC委員長を務めていたジェイ・クレイトン氏は25日、ウォールストリートジャーナルに意見書を寄稿。
国際的に「金融インフラの近代化競争」が行われている中、米国も行動を起こすべきであると論じており、ステーブルコインのルール作りなどについて次のように述べている。
まず資産のトークン化により、決済や資産の保管といったよく知られたサービスをデジタル化することで得られる効率性を享受する必要がある。米財務省を中心としたワーキンググループは、ステーブルコインを証券や商品よりも、むしろ決済手段とする特徴を明らかにして、ステーブルコインのルール作りを進めるべきだ。
また「SECは、トークン化された資産の保管に関する要件を構築すべき」とも続けた。