重要な政策課題となった仮想通貨規制
国際通貨基金(IMF)は、機関紙「Finance & Development」(金融と開発)の最新刊で、暗号資産(仮想通貨)規制について論じ、グローバルな規制の枠組みの必要性を強調した。
IMF金融資本市場局のAditya Narain副局長とMarina Moretti局長補佐の共同執筆による記事では、仮想通貨市場に対する規制への取り組みが、重要な政策課題として大きな関心を集めていると指摘。
その理由として、「かつては使い道のないニッチ商品」だった仮想通貨が近年、投資及び米ドルなどの法定通貨に対するヘッジ、また将来的な決済手段として主流になりつつある状況を挙げた。
仮想通貨の時価総額が「不安定ながらも目覚ましい成長を遂げ」、既存の金融システムへ浸透しはじめたことが、規制のきっかけとなったと執筆者は見ている。また仮想通貨関連商品やサービスの拡大、継続的な革新技術の進展、度重なる仮想通貨プロジェクトやヘッジファンドの失敗、そして今年の仮想通貨価格の大幅な下落なども、規制の動きに弾みをつけたという。
一方、仮想通貨の規制は、既存の枠組みの適用であれ、新たな枠組みの開発であれ、困難を伴うと執筆者は主張する。それは仮想通貨業界の急速な進化に規制当局がついていくことの難しさであるとともに、仮想通貨市場とその参加者の監視が容易でないことが背景にあるという。
国際通貨基金(IMF)
国際通貨基金(IMF)は、国際通貨制度の安定を確保するため、1944年に設立された国際機関。190の加盟国の政策や世界経済及び金融の動向をモニタリングし、政策に関する助言や推奨を行う。 また、国際収支の問題を抱える加盟国に対し、融資を提供する。
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国ごとに異なる規制アプローチ
仮想通貨の取引に「インターネット上で誰もがアクセスできる」一方で、各国の規制当局は、全体としては仮想通貨の規制政策に関して、国ごとに大きく異なるアプローチをとっていることを、記事では問題視している。
仮想通貨を全面的に禁止する国がある一方、仮想通貨企業の誘致に優遇策を講じ、市場開発を奨励する国もある。各国の対応にばらつきがあるため、仮想通貨企業が最も規制のゆるい法域に移転することも多い。その結果、仮想通貨業界には「公平な競争の場も、底辺への競争の防止策も保証されない状況」が生まれたと指摘した。
そのような状況の中で、旧フェイスブック(メタ社)によるグローバルステーブルコイン・プロジェクト「リブラ」が発表され、一気に世界の規制当局が仮想通貨に注目することとなった。記事では、各国当局をはじめ、国際的な規制コミュニティが規制の重要性を突きつけられ、その取り組みを加速したのは、リブラによるところが大きいとみている。
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具体的には、金融活動作業部会(FATF)が、仮想通貨サービスプロバイダーのためにグローバルな枠組みを提供し、証券監督者国際機構(IOSCO)は、仮想通貨取引に関する規制ガイダンスを発表。金融安定理事会(FSB)は、仮想通貨市場の監視を開始し、グローバルステーブルコインの規制上の取り扱いの指針となる一連の原則を公表した。
グローバルな対応が必要
現在の世界の規制状況について、IMFの執筆者は「規制の基礎構造は構築されつつある」としながらも、この取り組みが長引いてしまうことを危惧している。国際的な規制の枠組みづくりに時間がかかればかかるほど、国ごとで異なる規制の策定が進行し、その枠組みの中に「閉じ込められてしまう恐れがある」と指摘した。
そのため、IMFは次のような特徴を持つグローバルな対応を求めている。
- 調整(coordinated):本質的に部門や国境をまたぐ発行から生じる規制上のギャップを埋めて、公平な競争の場を保証できるよう調整されている
- 一貫性(consistent):一貫性があり、活動・リスクの範囲全般において主流な規制アプローチを取っている
- 包括的(comprehensive):包括的であり、暗号資産エコシステムのすべての参加者 およびすべての局面を対象とする
執筆者は「適切なルールで安全にイノベーションを実現することが可能だ」と主張。グローバルな規制の枠組みの重要性を以下のように総括した。
グローバルな規制の枠組みは、市場に秩序と消費者の信頼をもたらし、許される行為の範囲を明確にすることで、有益な革新の継続を可能にする安全な場を提供するだろう。