マージ詐欺の増加
暗号資産(仮想通貨)市場全体に影響力を及ぼすような大型イベントは詐欺師にとっても魅力的なようだ。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが2日に公開したレポートによると、イーサリアム(ETH)が9月15日に迎えた「The Merge(マージ)」に乗じて、複数の詐欺サイトが合計で約1.76億円(120万ドル)を稼いだという。
言わば「マージ詐欺」の主なものは、以下の図のように特定のアドレスに1ETHを送ると、見返りとして2ETHを受け取れるとしてユーザーを勧誘したり、イーサリアムのアップグレードに対応するために特定のアドレスに資金を送金する必要があるとして騙した。
マージ詐欺に使用されたウォレットアドレスの集計値によると、9月15日のマージ当日だけで1.33億円(905,000ドル)相当のETHを集めた。同日、イーサリアム上の詐欺サイトの受託総額TOP10のうち8つがマージ詐欺で、トップ5を独占した。
複雑なDeFi脆弱性攻撃やブリッジへのハッキングなど新たな手口が連日報じられているが、このデータは古典的な投資信託詐欺が未だに横行していることを示している。
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ユーザーの理解不足に漬け込む
チェイナリシスによれば、マージのような業界の変革期は詐欺師にとって混乱や知識不足につけ込む絶好の機会となる。以下のデータは1日に100ドル以上を稼いだ詐欺サイトをまとめており、マージ詐欺が非マージ詐欺よりも成功率が高いことを示している。
マージ当日の9月15日に83%の成功率を記録し、マージ前後の数日間では100%となった。チェイナリシスは以下のように述べている。
全体として、このデータは詐欺師がマージに関する理解の不足を利用し、疑うことを知らないユーザーを騙し、搾取したことを示唆している。
さらに、トランザクションの発生地域の分析により、マージ詐欺はよりGDPが比較的高い国々にターゲットを絞ってアレンジされたことが分かっている。
被害が大きい主な国々には、フィンランド、ポーランド、チリ、パナマ、ベトナムがあるが、特に3つのマージ詐欺サイトがフィンランドのみをターゲットとした。
チェイナリシスは、「裕福な国の方がより投資しやすいという前提でターゲットにしていた可能性が高い」と指摘した。
The Mergeとは
イーサリアム・ブロックチェーンのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「PoS」へ移行する大型アップグレード。現在のメインネットとコンセンサス形成を担う新しいチェーンを統合(マージ)することで、役割の異なる二つのレイヤーがそれぞれ形を残して連携しながら、一つのイーサリアムを構成する。
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