税制改正
来年度の税制改正をめぐり、自民党は16日、令和5年度「与党税制改正大綱」を発表した。
株式や投資信託の売買益にかかる約20%の税金が免除される「NISA(少額投資非課税制度)」を大幅拡充・恒久化を行ほか、国内スタートアップ企業支援に向けた具体的な方策が盛り込まれた。
一方、地政学リスク悪化に備え、防衛費増額の財源確保のための増税も行う。27年度に法人税、所得税、たばこ税で1兆円強の確保を目指す。
スタートアップ支援
スタートアップ支援については、保有株式の譲渡益を元手に創業した場合や、個人投資家がエンジェル投資でシード期のスタートアップに再投資した際、株式譲渡益に課税しない制度を創設。非課税上限額は、米国を上回る20億円とする。
また、人材の海外流出を招くとしてこれまで問題視されてきた「期末時価評価課税」の改正について盛り込んだ。これまでの税制だと、国内法人がトークンを自社発行した場合、これを売却せず保有しているだけで期末に時価評価して課税される税制だった。
この点について、国内大手取引所bitFlyer創業者の加納裕三氏は、
「今まで100億円分の暗号資産(仮想通貨)を発行すると、保有分を売却しなくても発行するだけで30億円の納税が発生する税制であったため、事実上発行は不可能だった。今後、国内でもIEO(Initial Exchange Offering)による資金調達の促進につながる。」と指摘した。
例えば、今までは100億円分のクリプトを発行すると、クリプトを売却しなくても発行するだけで30億円の納税が発生しました。
— 加納裕三@bitFlyer (@YuzoKano) December 16, 2022
それによって日本では新規暗号資産(クリプト)の発行は事実上不可能でした。
それが今後は売却した分だけの納税になります。
これはIEOを促進させると思います。
NISA
NISAは24年1月から恒久化するほか、非課税の保有期間も無制限にする。
年間の投資額上限については、現行の「最大120万円」から3倍水準となる「最大360万円」に拡大。これに伴い、生涯分の非課税限度額も現行の「800万円」から「1800万円」まで拡大される。
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金融庁の金融審議会である市場ワーキング・グループによる試算結果を元に反響を呼んだ「老後2000万円問題」などが念頭にあるものとみられ、欧米諸国を中心とするインフレ(物価高)局面の長期化を見据えた金融政策として評価されるだろう。
今年11月に岸田政権が打ち出した「資産所得倍増プラン」では、今後5年間でNISAの口座数を3400万口座、利用者の投資額を56兆円にまで倍増させる方針を示した。これまで海外市場に奪われがちだった投資額が日本市場に回るようになれば、国内上場企業の株価や時価総額の下支えになり、資金調達などにも寄与しやすくなる。
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