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米大統領経済諮問委員会の報告書「暗号資産はベネフィットを何一つもたらしていない」

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大統領経済諮問委員会の年次報告

米国の大統領経済諮問委員会が21日に発行した『2023年版年次経済報告』で、暗号資産(仮想通貨)やWeb3(分散型ウェブ)技術について否定的な見解が示された。

政策について大統領に助言するホワイトハウスの諮問委員会は、レポートの中で「米国は自国のデジタル金融インフラに注力すべき」とも提言している。

仮想通貨に関する章は約43ページに及び、年次経済報告の15%が割かれた。ビットコインを中心とする仮想通貨の技術的仕様や暗号技術も説明しているが、そのほとんどが仮想通貨の批判に終始した。

22年に起きた仮想通貨取引所FTXやテラ(旧LUNA)エコシステムの破綻をはじめ、それ以前に起きたニッチな詐欺事件まで網羅的に記述。加えて、「ステーブルコインの取り付け騒ぎのリスク」、「(主にビットコイン採掘の)過剰な電力消費」、「テザー(USDT)準備金の不透明性」といった市場の問題点を強調した。

その上で大統領経済諮問委員会は、「大半が投資対象にすぎない」、「(ビットコインは)ストアオブバリューとして機能していない」、「消費者や投資家にとって有害」といった否定的な見方を示している。

暗号資産は、支払いシステムの改善、金融包摂の増加、提供者と利用者の両方から価値を搾取する仲介者を迂回する知的財産と金融価値の分配のためのメカニズム、などの利点を提供する可能性があると主張されてきた。しかし、…これまでのところ、暗号資産はこれらのベネフィットを何一つもたらしていない。

大統領経済諮問委員会はまた、Web3(分散型ウェブ)についても批判。暗号化メッセージアプリSignalの創業者である Moxie Marlinspike氏の主張を引用して、中央集権型インターネットの利点を説明した。

インターネットは一元化されていることが多いが、それは物事を簡単にするため。中央集権的なサーバーのホスティングは、大企業がより安く、より確実に行うことができ、規模の経済の恩恵を受けることができる。

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市場関係者の反論

大統領経済諮問委員会の主張について、業界関係者からは多くの異議が出ている。『ビジネスブロックチェーン(The Business Blockchain)』の著者William Mougayar氏は、「ブロックチェーンに関する、非常に選択的で不完全なサンプル、暗号資産について非常に偏った見方だ」と指摘した。

経済学者で著名な仮想通貨アナリストのAlex Krüger氏もまた、ホワイトハウスの仮想通貨市場分析に関して辛口の意見をツイートしている。

ホワイトハウスの報告書はニュアンスに欠け、この新興技術に関連する潜在的な利益を見落とし、読者に誤解を与える可能性のある一方的な見解を示している。

FedNowを推奨

なお、大統領経済諮問委員会のレポートは、バイデン政権の政策的立場を示しているとの見方もある。過去にニューヨーク金融サービス局(NYDFC)で副監督を務めたMatthew Homer氏は米仮想通貨メディアCoinDeskに対して以下のように述べた。

デジタル資産への関心のボリュームは、過去数週間にはるかに問題視されてきた米銀行サービスなど比べても相当なもの。一緒くたな評価と、断定的な口調は象徴的だ。

特にレポートは、連邦準備制度(FRB)が開発中のリアルタイム決済サービスFedNowを高く評価している。

FedNowのような即時決済システムが、デジタルマネー(CBDCを指す)を流通させる必要性を下げるとの見解もある。FedNowのローンチ後にデジタルマネーを流通させるメリットは、ほとんどないだろう。

23年半ばのサービス開始が予定されるFedNowは、企業や個人が銀行などを通して24時間365日決済が可能で、取引時間も数秒に短縮される見込み。サービスへのアクセスは、1万を超える金融機関に接続しているFRBのネットワークを通じて行われることになる。

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なお、米国では、22年3月にバイデン大統領が「デジタル資産の責任ある発展を保証するための大統領令」に署名し、Web3.0時代においてもデジタル経済圏のイノベーションをリードし続ける決意と覚悟を示し、国家戦略のとりまとめを命じていた。

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Web3とは

現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。

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