FRB提供の次世代決済システム
米連邦準備制度理事会(FRB)は29日、即時決済システムFedNowについて2023年半ばにサービス開始する予定だと発表した。来年5月から7月にかけてサービスの本格展開を目指すとしている。
FedNowは、連邦準備銀行が開発する即時決済サービスだ。企業や個人は銀行などを通して24時間365日決済が可能で、取引時間も数秒に短縮される見込みだ。サービスへのアクセスは、1万を超える金融機関に接続しているFRBのネットワークを通じて行われることになる。
FRBのジェローム・パウエル議長は6月、「ほとんどの主要経済国が年中無休で取引できる即時決済を開発済または開発中」だと指摘し、ドルの国際的な役割を維持するためにも、米国も決済システムの向上が必要だという見解を示した。
FedNowは、FRBがこうした状況への取り組みの一つとしても開発しているシステムだ。
FedNowは現在パイロット・プログラム(試験プログラム)を行う段階だが、すでに120以上の機関が参加している。最近新たに参加した機関には、US Bank、Exchange Bank、Alacriti Paymentsなどが挙げられる。
ボストン連銀の第一副総裁であり、FedNowサービス・プログラムの責任者も務めるケン・モンゴメリー氏は、次のようにコメントした。
即時決済のメリットは、消費者や企業にとってますます重要になっており、金融機関が競争力を維持する上でこのサービスは非常に重要になる。
2023年より、金融機関はFedNowサービスを土台として、その顧客に革新的なソリューションを提供できるようになるだろう。
デジタルドルも検討中
FRBのミシェル・W・ボウマン理事は17日、米アーカンソー州で開催されたフィンテック関連のカンファレンスで講演し、FedNowについても言及した。
FedNowは「多種多様な即時決済をサポートする柔軟で中立的なプラットフォーム」になることを目指しており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が改善するとされる課題についても、対処できることを期待していると説明した。
FRBは1月に、CBDCについての協議書を発表していた。米国がデジタルドルを発行する場合の恩恵とリスク・課題について論じるものだ。またパウエル議長はCBDCは「非常に重要な金融技術イノベーション」であり、FRBは今後ある時点で、CBDCの導入方法について議会に推奨事項を提示すると話している。
一方で、仮にCBDCの発行が決定されても、その本格導入には時間がかかる可能性がある。FRBのラエル・ブレイナード副議長は5月、米下院金融委員会の公聴会で「もし米国議会が中央銀行デジタル通貨の発行を決定した場合も、必要なセキュリティやシステム設計などを構築するのに5年ほどかかる可能性もある」と発言していた。
ブレイナード副議長は、CBDCに関しては現在存在している課題へ対処するものとしてより、金融システムの将来を見据えたシステムとして議論していくことが適当との姿勢を示した。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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