- GeminiがGUSDを発行開始
- 9月10日にウィンクルボス兄弟によって創業された仮想通貨取引所Gemniが、米ドルに裏付けられたペッグ通貨”Gemni Dollar(GUSD)”を発行することを発表した。
- 実際に使用される通貨となるか
- 仮想通貨はそのボラティリティから決済手段よりも、投資を目的とした使用が目立っており、既存安定通貨も信頼性の欠如などの問題を抱えていた。ウィンクルボス兄弟は「GUSDこそが世界で最初の認可された安定通貨となるのだ」と主張した。
GemniがGUSDを発行開始
9月10日に、仮想通貨取引プラットフォームGemniは、米ドルに裏付けられたペッグ通貨”Gemni Dollar(GUSD)”を発行することを発表しました。
仮想通貨取引所Gemniは、2014年にウィンクルボス兄弟によって創業され、その後、ビットコインETFの申請やVirtual Commodity Association(VCA)と呼ばれる自主規制団体の設立など、仮想通貨業界において様々な取り組みを行なってきました。
GUSDは、ニューヨーク基盤の信託会社Gemniによって発行され、米ドルと1:1の割合で裏付けられます。
そして、その通貨は、ERC20トークン基準に則ってイーサリアムネットワーク上で構築され、その信用力、価格安定性は、確固たるブロックチェーン技術および、アメリカの公式機関であるニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)によって監督されるとGemni公式サイトにて記述されています。
そのGUSDによって裏付けられている米ドルは、連邦預金保険公社(FDIC)の”パススルー”預金保険に該当するアメリカの銀行State Street Bankによって管理されるとともに、その残高は、独立した認可済みの会計事務所BPM Accounting and Consultingによって毎月適切に1:1の割合で発行されているかが監査され、GUSDトークンにおけるスマートコントラクトも独立したセキュリティ企業によって同様に監査、そして、必要に応じて適切な修正が行われることが明らかになっています。
今回の発表に伴って、キャメロン・ウィンクルボス氏は、以下のように言及しました。
仮想通貨が(Eメールと同様に)365日24時間動いているのに対し、法定通貨は(郵便物のように)”営業時間”の間しか動いていない。これは、大きなミスマッチだ。 よって私達は、次なる一歩として、仮想通貨と同様の技術的クオリティを有する法定通貨を提供し、これら2通貨の繋がりを高めようと試みているのだ。
実際に使用される通貨となるか
現状で人々は、仮想通貨を投資目的として使用することが最も多く、商品やサービスにおける売買の仲介手段としては十分に機能していません。
しかし、CNBCでは、このGUSDが台頭することによって、人々は米ドルをGUSDに交換し、同様に、GUSDが米ドルに交換されることで、世界中の資産を循環させる触媒となることを示唆しました。
ウィンクルボス兄弟も、この仮想通貨のボラティリティが高いことから、商品やサービスの売買に既存の仮想通貨が向いていないことを以下のように言及しています。
もしあなたが、現時点でビットコインやイーサリアムを使用して何かを購入した場合、実質の支払う額が、(そのボラティリティから)過剰に少なかったり、過剰に多かったりすることになる。
このようにボラティリティは仮想通貨の決済手段としての使用に当たって、大きな障害となっているのに加え、ウィンクルボス兄弟は、既存の安定通貨(Stable Coin)は透明性や監視の面でも十分でないため、多くの問題を抱えているとし、以下のようにコメントしました。
既存のどの安定通貨も、信頼性に関する問題を解決できていない。 このGUSDこそが世界で最初の認可された安定通貨となるのだ。
このように、アメリカの公式機関によって法定通貨を裏付けとするペッグ通貨が認可されたことはかなり大きな進展であり、独立した会計事務所、銀行、セキュリティ企業によって継続的に監査、管理される今回のペッグ通貨の台頭による、仮想通貨の実生活での使用が後押しも期待されます。
業界への影響とテザーとの違い
今回NYDFSによってGUSDと同時に、ブロックチェーンスタートアップ企業によって開発されたPaxos Standard(PAX)と呼ばれるペッグ通貨も公開されましたが、すでにペッグ通貨にはテザー(USDT)や、TrueUSD(TUSD)、DAI(DAI)など複数の通貨も存在しています。
このような背景には、ボラティリティが高い、市場の中でより価格の安定するペッグ通貨建取引に移行して入る背景や、USDTを出入金通貨のメインに据える取引所の存在があります。
しかし、その一方でテザー社が発行するUSDTの担保金であるUSDが、同社の口座に存在するかといった疑問が浮上して入る他、USDTが発行、また疑惑が募る取引所Bitfinexに送金され価格操作に使われて入る懸念など、仮想通貨業界の不透明性の大きな問題点の一つとなっていました。
今最も注目されるビットコインETFでも、テザーの名指しこそされていないものの、ビットコイン価格の操作可能は不許可となった理由の一つに据えられており、ビットコイン市場の不穏性を問題視されているほどです。
ビットコインETFでは、この価格操作に対する取引所の対策が求められて入る形ですが、今取引シェアを拡大し続けるテザーから、より透明性の高いペッグ通貨に以降していく流れができた場合、業界に大きな変化を与える可能性があります。
テザー社は、預託銀行の詳細やを明かしていない一方で、Geminiはテザー社は行わない月次監査に加え、預託銀行も明かして管理をしていくことを発表しています。
AbraのBill Barhyd氏も述べたように、業界の透明性はビットコインETFの審査状況に大きな変化をもたらす可能性があり、その動きが米国の企業から動き始めたことは、大きな進展であると言えるでしょう。