Web3開発の遅れを懸念
香港の立法評議会調査室はWeb3.0の関連技術開発について、日本を含む数カ国のアプローチに関する研究結果を発表した。
香港政府はWeb3.0の発展を支援する政策を掲げているが、Web3.0で大規模な取り組みを行う世界の他の地域と比較すると、香港がその開発において遅れをとっているとの懸念もあるという。
また、昨年来の暗号資産(仮想通貨)市場の混乱を考慮すると、香港が金融サービスや仮想通貨以外のWeb3.0技術領域におけるイノベーション促進に取り組むことが重要だとしている。
この研究では、研究対象地域として、日本、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)と韓国に焦点を当て、それぞれの戦略アプローチや開発について具体例を挙げて説明している。
Web3.0
Web3.0は、現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
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日本が環境整備でリード
調査室は、日本政府が「Web3.0開発に関してハイレベルな政策の舵取りを行い、政府全体でWeb3.0の政策調整を行う専門部署を設置」したことを高く評価している。
日本政府は2022年6月、Web3.0の環境整備を盛り込むことを閣議決定し、NFTやDAO(自律分散型組織)利用等のWeb3.0推進に向けた、環境整備の検討を進める方針を明言した。
22年9月にはデジタル庁が各省庁の環境整備を統括し、法改正を含む環境整備を検討する「Web3.0研究会」を設立。民間企業、経済学者、研究機関を背景に持つ様々な経歴の有識者が参画している。
金融庁は今年3月、各種トークンやNFT(非代替性トークン)の暗号資産該当性についての新たな見解を公表。規制の対象外となるNFTの範囲が具体的に明示された。さらに税制の面でも、Web3.0ビジネスの推進を見据えた税制改正の取り組みが進行中だ。
また、アジア最大級の国際Web3.0カンファレンス「WebX」が来月25日、26日の両日にわたり、東京国際フォーラムにて開催され、岸田文雄首相の登壇も予定されている。
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特定領域の開発に専念
Web3.0の全体的な開発環境整備を行う日本に対し、他の地域では、自国の強みと政策目標に基づき、特定領域の技術開発に専念していると、調査室は指摘した。
- シンガポール:金融分野におけるDLT/ブロックチェーン技術の応用を模索
- UAE:政府の効率化、産業創出、Web 3.0空間における国際的リーダーシップの強化のためのブロックチェーン戦略に焦点
- 韓国:公共サービス、文化、観光などの幅広い分野でイノベーションを促進するメタバース戦略の展開
香港のWeb3政策
香港政府は、Web3開発推進のための「絶好の機会」を掴むため、2023-2024年の予算で約9億円(5,000万香港ドル)をエコシステム発展促進のために確保。この予算は、香港政府が全額出資するテクノロジー関連企業向けの起業支援事業「サイバーポート(Cyberport)」に割り当てられた。
サイバーポート事業では、最先端の動向を周知させるための大規模な国際会議の開催、セクターを超えたビジネスの連携促進、若年層に向けたワークショップの開催拡大などに取り組むことで、香港におけるWeb3エコシステムの発展促進を行う。昨年11月末の時点で、約80社のブロックチェーン・仮想通貨企業がサイバーポートに拠点を構えているという。
今年1月には、地元のイノベーター支援や、海外のWeb3企業を呼び込むことを目的とするWeb3ハブが設立された。
また、香港政府は仮想通貨をWeb 3.0エコシステムの重要な構成要素と認識しており、ポール・チャン財務長官をリーダーとするタスクフォースを結成。関連する政策局や規制当局、業界関係者をメンバーとするタスクフォースは、仮想通貨開発に関する提言を行う。
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