執行措置などに関する予算増額要請
米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長は19日、取り締まりやテクノロジー導入のための追加資金を上院議員らに要請した。資金には、暗号資産(仮想通貨)市場を監督するための分も含まれている。
ゲンスラー委員長は、SECの来年度予算の追加分として約100億円(7,200万ドル)を求めた形だ。
ゲンスラー委員長は、投資環境における新たなリスク全般について話した後、仮想通貨セクターについても次のように述べた。
仮想通貨市場では、コンプライアンス違反が蔓延し、投資家が投機性の高さにより資産を危険にさらす「ワイルド・ウェスト(無法地帯)」の状態が目撃された。
資本市場における、成長と急速な変化は、不正行為の可能性が高まることをも意味している。現場を取り締まる機関として、私たちは不正な行為者と戦うことができなければならない。
資本市場の拡大や複雑さの増大に対応するために、SECの予算を増やすことは理にかなっているとも続けた。
また、金融市場における急速な技術革新は、「特に仮想通貨分野をはじめとする新興分野」などで不正行為を引き起こしていると指摘。これに対処するためには、新しいツール、専門知識、リソースが必要だとしている。
ゲンスラー委員長は、法的執行部門およびテクノロジー関連の費用の増額も要求した。これには、データ分析やサイバーセキュリティにかかるコストも含まれる。
SECとは
「Securities and Exchange Commission」の略で、株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。公正な取引の確保と投資家保護等を目的としている。
▶️仮想通貨用語集
執行措置が増加
ゲンスラー委員長によると、SECは2022年の連邦会計年度(22年10月~23年9月)に、規制対象となる市場全体で750以上の執行措置を発動した。
これは前年同期に比べて9%増加。これらの措置により約8,940億円(64億ドル)の罰金と不正利益の償還が発生している。
「恣意的な取り締まり」との批判も
仮想通貨セクターに対する法的措置の最近の事例としては、仮想通貨取引所BeaxyやBittrex、コインベース、バイナンスに対する提訴が知られている。
SECは真に詐欺的なプロジェクトも取り締まっているが、仮想通貨業界に対しては、明確なガイドラインを示すことなく、恣意的にあるトークンなどを「未登録有価証券」だとみなす姿勢について批判されてきた。
例えば、米国の仮想通貨業界団体ブロックチェーン協会は6月、SECのゲンスラー委員長は、ビットコイン(BTC)以外のすべての仮想通貨が証券であるというような強固な姿勢を取っており、これにより連邦法による公正な決定ができていないと述べた。
また、仮想通貨XRPをめぐるリップル社対SECの裁判で地裁は、機関投資家への販売のみ証券性を認めたが、個人投資家へのセカンダリー販売などについては証券取引ではないと判断したところだ。
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