香港における債券トークン化
香港金融管理局(HKMA)は24日、DLT(分散型台帳技術)を活用した資産のトークン化に関する報告書を公表し、債券市場の効率や透明性を高める可能性があるとの見解を示した。
このレポートは、香港政府下でグリーンボンドを発行するプロジェクト「エバーグリーン」に基づいている。「香港の法的枠組みのもと、このプロジェクトでDLTを実際の資本市場取引に導入する成功例が示された」とHKMAは強調。香港の債券市場でトークン化技術の利用を広めるための次のステップの可能性を概説した。
関連:ゴールドマン・サックス、債券関連取引でJPモルガンの独自ブロックチェーンを活用
プロジェクト・エバーグリーン
レポートによれば、近年、トークン債の発行は急速に増加しており、2023年3月までには総額が39億米ドルに達している。この大半は、過去2年間に集中して行われたものだ。
HKMAは2022年に「プロジェクト・エバーグリーン」を立ち上げ、今年初に8億香港ドル(約150億円)のトークン化されたグリーンボンドを発行した。この債権はDLT(分散型台帳技術)を使用して、債券のライフサイクル全体をテストするもの。
デジタル・プラットフォームとして、Cantonブロックチェーン上に実装されたスマート・コントラクトと、Hyperledger Besuのピアツーピア・ネットワーキングと発注コンセンサスが使用された。どちらも、プライベート・ブロックチェーンであり、利用者やノード管理者が制限される。
償還期間は365日、利回りは4.05%で、中国銀行(香港)、クレディ・アグリコルCIB、HSBCと連携して提供されている。
政府のグリーンボンドプログラムの下で募集された資金は、環境を向上させ、香港の持続可能な発展を支援するためのプロジェクトや再融資に使用されている。
DLT実装のメリット、可能性
報告書で明らかにされたDLT実装のメリットには、ペーパーレス化、透明性の向上、債券ライフサイクルにおけるDLTのエンド・ツー・エンド導入などが挙げられる。DLTプラットフォームを使用することで、異なる関係者間でのリアルタイムのコラボレーションが可能となり、取引の効率が大幅に向上するだろうとも述べられている。
レポートでは、今後の可能性と課題が示された。エバーグリーンの債券は、従来の債券と同様、伝統的なOTC取引で流通市場で取引されたが。理想的には、セキュリティトークンの取引機能をDLTプラットフォームに組み込むことで、市場の流動性や透明性を向上させることが可能とレポートは述べた。さらに、DLTプラットフォーム間でのクロスチェーンブリッジの確立により一層強化される。
ただし、取引機能の追加は技術的・法的要件が伴い、インフラのセットアップやテスト、参加者の教育などのコストや時間がかかるとされる。
通貨の多様性も大きな焦点となっている。プロジェクト・エバーグリーンでは、CMU(HKMA傘下のユニット)がデジタルプラットフォームで香港ドルのキャッシュトークンを発行したが、今後は商業銀行によるキャッシュトークン、ステーブルコイン、あるいはオフチェーン決済を活用した紙幣の発行も検討されている。
結論として、香港金融管理局はDLT技術が金融市場の革新に貢献するとの見解を示す。プロジェクト・エバーグリーンでの成功を基に、政府と共にこの技術の更なる普及と発展を推進する方針だ。
現在、次の段階のトークン発行について主要市場関係者との間で協議が進められており、「我々が提案するソリューションが整備されれば、資本市場におけるDLT技術のより幅広い導入が実現可能となり、その結果として取引効率の向上や投資家の参入範囲の拡大を達成できる」と香港金融管理局はコメントしている。
関連:イスラエル財務省、ブロックチェーン基盤の債券取引をテストへ