対バイナンス訴訟で新たな申し立て
米証券取引委員会(SEC)は14日、暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスに対する訴訟で新たに裁判書類を提出した。バイナンスが証拠開示に非協力的であることを指摘している。
さらに、これまで非公開だった申し立ての一部を公開した。この申し立ては、グローバル版バイナンスが、同社と関連するとされるカストディサービス「Ceffu」を通して、米国版バイナンスの顧客資産を管理できるような状況にある可能性を指摘するものだ。
証拠開示を要求
まずSECは、バイナンスUSの運営会社であるBAMトレーディングが、その顧客資産がグローバル版バイナンス(Binance Holdings)や、そのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOの意のままにはならないことを証明する上で、極めて限られた情報しか提供していないことを批判している。
その上でSECは、裁判所に対して、BAMに該当する文書の提供を命じることや、BAMによる保護命令の申し立てを却下することなどを求める格好だ。
バイナンス側は11日付けで、証拠開示の範囲を限定するための保護命令を発することを裁判所に要請していた。SECによるバイナンス従業員の証言録取を4件のみに制限することなどを求めている。
SECは、より広く証拠を収集し顧客資産が適切な方法で管理されていたかどうかを判断するためにも、こうした保護命令を却下することが必要だとした。
顧客資産管理について
SECは、カストディ企業「Ceffu」との関係に関しても懸念を表明した。この申し立ては、これまで封印(Sealed)扱いされていたが、このたび一部を公開した形だ。
SECは、バイナンスUSの運営会社であるBAMが、すべての顧客資産を米国内に保持し、BAMの管理下に置いておくとする同意命令に違反したと述べている。
Ceffuは機関向けに仮想通貨カストディサービスを提供している企業だ。SEC当局者は以前、この会社はバイナンスのCZ氏に特定の権利や利益を与えていると主張している。
SECは、Ceffuが、BAMの顧客資産に関連するウォレットやキーシャード、およびウォレットカストディソフトウェアをホストし、BAMやその顧客資産のキーを保管するAWS環境の管理を行っていると指摘した。
グローバル版バイナンスに関連するCeffuが、バイナンスUSにおける米国人の資産を管理しているようだと申し立てる形である。
SECは、BAMの仮想通貨ウォレットの構造やシステムを検査できるようにすること、または最低限、まずウォレットのインフラ、システム、ソフトウェア、プロトコル、管理、アクセスなどに関する情報を提出することを求めた。
なお、Ceffuの広報担当者は今回の件を受けて、同社は「つねに独立した別個のウォレットソリューションとして運営」されており、バイナンスからは完全に独立したサードパーティ企業であるとコメントした。
カストディとは
投資家の代わりに資産を保有・管理することを指す。仮想通貨以外の資産にも広く使われる用語。資産の保管や売買に係る決済、また元利金・配当金の受領や議決権行使など、幅広い業務を代行するサービスを指す。カストディを行う企業を「カストディアン」と呼ぶ。
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前CEOらが退社
バイナンスUSからは12日にブライアン・シュローダー前CEOが退社した。同社はSECによる訴訟の影響を受けて、従業員の3分の1を解雇することも発表している。
SECのインターネット執行部門長として働いていた経歴のあるジョン・リード・スターク氏は、SECや米司法省が、シュローダー氏はじめバイナンスUSを去った従業員に接触して協力を募る可能性もあると意見した。
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