アンスロピックの株式売却完了
破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXは、AI(人工知能)スタートアップ企業アンスロピックの株式売却を完了した。FTXの資産管理団体が5月31日に報告している。
今回は、1,500万株を1株あたり約30ドルで売却し、4億5,000万ドル(約700億円)以上を受け取った。FTXは3月にも1株あたり約30ドルでアンスロピック株を売却しており、今回とあわせて13億ドル(約2,040億円)を得ている。
FTXはこれらの株式を5億ドルで取得していたため、まだ判事の承認待ちだが、全体として約8億ドル(約1,260億円)の利益が出た格好だ。
今回のラウンドで最大の買い手となったのは、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドのG Squaredで、450万株を1億3,500万ドル(約210億円)で購入している。他に、ジェミナイ・ベンチャーズ、ファンドFG-BLU、ファンドSCVC-PV-LXVIなど20のVCが参加した。
アンスロピックは生成AIを手がける企業。2024年3月に発表した最新AIモデル「クロード3」は、大学レベルの知識、大学院レベルの推論、基礎数学などの分野におけるテストで、OpenAIの「GPT-4」などを上回った。
Amazonがアンスロピックへ40億ドル(約6,290億円)出資するなど、現在大手企業からも注目されている。なお、競合のOpenAIは5月にテキスト、音声、画像を入出力できる革新的モデル「GPT-4o」を発表したところだ。
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破産手続きの費用高騰で苦情も
今回のアンスロピック株売却に関しては、一部の債権者から苦情も上がった。例えば、Sunil Kavuri氏はもともとこの株式は顧客資金で購入されたものなのだから、FTXの元顧客に100%配分すべきだと意見している。
FTXの破産手続きをめぐっては、訴訟費用が高騰し過ぎているとの批判も債権者から上がっているところだ。
破産プロセスを監督する、FTXのジョン・レイ3世CEOや、弁護士、顧問に対してはこれまでに5億ドル(約785億円)を超える手数料支払いが承認されている。
様々な顧問の中ではFTX財団の特別顧問である法律事務所サリバン・アンド・クロムウェルが最大の受け取り手となっており、同法人には2億5,400万ドル(約400億円)の報酬が支払われる。
また、ジョン・レイ3世CEOは時給1,300ドル(20万4000円)の計算で560万ドル(約8.8億円)を請求しているところだ。その他、無担保債権者公式委員会やその顧問も8,100万ドル(約127億円)を請求している。
弁護士費用、調査費用、管理費用などの訴訟関連費がかさむと、それだけ債権者に分配できる資産額も減ることが懸念される形だ。
FTXは、債権者の98%が請求額の少なくとも118%を現金で受け取れる見通しだと発表した。
非常に稀なケースであるが、破産企業が保有する資産や破産手続き中に回収できた資産総額が全債務を超える場合は、請求額を超えて弁済されることもあり得るという。これが実現すれば、エンロンやその他の企業の破産手続きにおいても卓越した経験を持つ専門家であるジョン・レイ3世など、債務整理チームの功績と言えるだろう。
ただし、顧客資産は2022年11月時点での現金相当価値での返済となる。当時比較で2024年6月現在は多くの仮想通貨の価値が大きく上昇しているため、元顧客からは、現金ではなく仮想通貨での返済を望む声も上がっていた。
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FTXとは
サム・バンクマン=フリード氏が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、破産申請を行なっている。
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