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DAO議論が念頭に置くべきことと、ソラナMetaDAOの貢献|寄稿:大木悠

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

寄稿記事

Superteam Japanの大木です。DAOとかNetwork Stateとか大きな概念の定義や説明に関する文献は多く見られますが、そもそもどんな問題を解決しようとしているのでしょうか。

集団全体のために行動することが求められる際、人間ほど信頼できないものはないという、厳しい言い方のようですが、私はこれが大きな命題だと思っています。そして、これが国や会社が直面する問題の根本だと考えます。

「人間は、所属する組織全体の利益のために行動できるのか?」

「人間をそのままほったらかしにしていたらできない」というのが答えであり、「できるようにするために制度の設計を考えたい」というのがそもそものDAOやNetwork Stateの議論の根本部分だと考えます。

人間と集団行動の課題

「人間は、所属する組織の利益のために行動できるのか?」の問いに対する答えがNoである背景には、人間の以下のような特性があげられます。

* 強欲

* グループ全体より自分の利益を優先

* 周りの目を気にする順応主義

* 限定的な情報収集・処理能力

繰り返しますが、上記の残念な特性は、少数の人だけが持つものではありません。人間社会と同じくらい古い問題であり普遍的な問題なのです。「自分は違う・・・」という話ではなく、今は隠れているかもしれないが将来的に突然発現する可能性があるものと考えた方が良いでしょう。残念ながら、人間は信頼できないという性悪説こそ立脚地であるべきなのです。

例えば、あなたは会社の中間管理職です。明らかに会社の利益のために良いプロジェクトであっても、失敗したら自分のキャリアを傷つける可能性があるから、そのプロジェクトを推進しないことを選びました。産業や会社全体の成長より、自分のキャリアの保身を考えるサラリーマンの姿がここにはありますね。また、あなたは政治家です。国の経済の成長はどうでもよく、次の選挙で勝つために投票率の高い高齢者層にバラマキを行いました。日本の政治を象徴するような例ですよね。

もしくは、こんな例もあります。あなたはベンチャーキャピタリストです。高いリターンを狙うというより、「他に誰が資金を入れているのか」が投資の行動指針になってしまいました。

これらの例は、日常でありふれている例です。

このような「弱い」人間を過剰に信頼して、彼らの多数決で物事の方針を決めようとしていることが、いかに無謀なことであるかをまず認識した方が良いと言った方が話が早いかもしれません。「民主主義は悪いうちでもましな方」(the lesser of the two evils)というイギリスのチャーチル元首相の言葉が響きます。

翻ってみると、今の日本のDAO議論に関する違和感は、この受け止めの欠如にあるように思われます。DAOの議論は、上記の例のような組織における人間の醜いところをしっかりと受け止め、向き合うところから始まるような気がします。「自由」「自立」「多様性」といったキラキラした世界の話が先行してはいないでしょうか?単なるブランディングのツールとして考えていないでしょうか?人間のボランティア精神に期待して失敗したプロジェクトは多くないでしょうか?

集団の意思決定に関わるダメな人間をどうやって救えば良いのでしょうか?過去数百年間、この問題にずっと向き合ってきたのが、政治の思想史であり、政治哲学という学問です。ダメな人間をどうやって救おうか、いろいろなアイデアが出ました。

a)文化・宗教によって人間に一定の価値観を育ませて行動指針を決めてもらう。

b)賢くて自他的なリーダーチームに為政を依頼する(プラトンのPhilosopher -King)

c) 選挙や株主総会に代表されるように投票で代表を選んで説明責任を持ってもらう。

a) 文化および宗教な慣習は、コミュニティの結束力を高めて個人の行動と集団の幸福が一致する利他的な行動を促す効果があります。例えば、「黄金律」のような原則や、集団の幸福と徳の追求を最高善とする教えは、行動規範として個人の行動をうまく律しました。

しかし、文化および宗教はしばしば硬直化し時代遅れになります。新たな課題に適応するのが遅くなり、個人の利益を追求する者によって悪用される可能性があります。

b) プラトンの「Philosopher King」は、集団行動の解決策として卓越したリーダーシップを提案しました。アレクサンドロス大王やマルクス・アウレリウスといった人物は、この仮説的概念の例とされています。しかし、賢明で利他的な人々がリーダーシップを取ることはごく稀なケースでしょう。また当初は素晴らしいリーダーであったとしても、権力は腐敗するものです。

c) 現代は、民主的なプロセスや企業統治メカニズムを通じて、個人のインセンティブと集団の成果を一致させることを試みています。しかし、情報の非対称性、短期的な志向、不正操作という存在が依然として問題として残っています。

a)、b)、c)それぞれには課題があり、改善の余地があります。ダメな人間を制度設計で救う旅は、まだ道半ばなのです。私は、DAO/Network Stateの議論は、ダメな人間を救うための制度設計という長年続く政治思想の議論に貢献することを目的にすべきだと考えています。

そして、新しい制度設計のアイデアとして最近登場したのが、Solana基盤のガバナンスソリューションであるMeta DAOです。

(参照: https://blog.metadao.fi/from-corporations-to-nations-how-the-meta-dao-is-going-to-change-everything-part-2-8abe5b6814fc )

MetaDAOという政治思想史への貢献

集団の意思決定におけるダメな人間を、マーケットの力を借りて救おうとしたのがSolanaのMetaDAOというプロジェクトであり、フタルキー(Futarchy)という理論です。

フタルキーとは、経済学者のロビン・ハンソンが提唱した理念で、DAOで出された提案を、予測市場= Prediction Marketに出し、マーケットの原理で判断することを指します。提案AとBのうち、それぞれのトークンの価値がどっちが上がるかを考えて取引することになります。

(MetaDAOを利用するDriftの事例 「新たなグラント申請への対応にAIエージェントを使うべきか?」)

MetaDAOは、フタルキーという元々ある理論を実践したプロジェクトです。創業2年ほどですが、Solanaエコステム内でも存在感を高めています。2024年秋のSolanaグローバルハッカソンのDAO/Network State部門は、MetaDAOがスポンサーをしていました。

2024年は予測市場が力を示した年であったとも言えます。一番有名なのがPolymarketで、トランプが勝利した米国大統領選では多くのメディアやインフルエンサー、投資家がPolymarketの照射予測を参考にしました。世論調査ではなく、「有識者」の予想でもなく、冷静沈着なマーケットの力が頼りになる場面があります。

次の旅に向けて

個人の行動と集団の利益をどのように一致させられるのか?MetaDAOとフタルキーは、「マーケット」という一つの答えを提示し、長年の政治思想の議論に貢献しました。しかし、当然これで終わりではありません。例えばフタルキーにも、「取引で勝てなくなった時に無関心や非倫理的な行為をする人が増える」や「良いプロポーザルを書くインセンティブがない」といった課題が指摘されています。

より重要なことは、人間が集団のためにもっと良い意思決定をするために、まだまだ埋もれている制度のアイデアがあると考えることでしょう。文化・宗教、賢明なリーダー、インセンティブの一致、マーケット以外に、何を制度設計のヒントにすれば良いでしょうか?

残念ながら、私は今その答えを持ち合わせてはいません。政治思想の文献から着想を得るのもよし、DAOの失敗例から学ぶのも良いでしょう。Vitalikが、過去に新しいガバナンスの形としていくつかのアイデアを出しており、参考になるかもしれません。今回私は、DAO/Network Stateの部門で、何を念頭に攻めるべきなのかを多少のインスピレーションを交えてお伝えできたら幸いです。

関連:ソラナ『Superteam Japan』大木悠氏インタビュー、設立の経緯やコミュニティGDPを高めるための戦略とは

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