
仮想通貨企業への投資
チェコ国立銀行(CNB、中央銀行)が2025年第2四半期に、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースの株式51,732株を取得していたことが、米証券取引委員会(SEC)への四半期報告書(Form 13F)から明らかになった。
これは、CNBにとって初めての仮想通貨企業への投資となる。投資額はSECへの報告書提出時点で1,800万ドル(約26.5億円)だったが、執筆時現在、CNBが保有するコインベース株の評価額は2,000万ドル(約29.5億円)を超えている。
コインベースは今年5月、仮想通貨企業として初めて米主要株指数S&P500指数に採用された。CNBによるコインベース株取得は、仮想通貨への直接的な投資ではなく、S&P500銘柄を保有するインデックス投資戦略の一環と考えられると、市場アナリストは分析している。
Form 13Fによると、CNBはコインベース株取得と同時に、データ分析・AIソフトウェア企業のPalantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)の株式を49,135株追加購入し、保有株数は合計519,950株となった。パランティアは2024年9月にS&P500指数に採用された。
パランティア(PLTR)は、AI関連の成長企業として投資家の注目を集めており、その株価は2025年上半期に80%上昇している。
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チェコの仮想通貨政策
CNBは今年1月末、準備金を多様化するために新たな資産への投資を検討すると発表していた。
CNBのアレシュ・ミフル総裁は、早くからビットコイン(BTC)の保有に関心を示しており、1月末には準備金1,400億ユーロ(約24兆円)の5%(約1.2兆円)ビットコインで保有することを検討する案を理事会に提出した経緯がある。
CNBによるビットコイン購入は実現していないが、今回のコインベース株の購入によって、間接的に急速に発展する仮想通貨産業へのエクスポージャーを得ることとなった。
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チェコは税制の面でも仮想通貨を優遇する政策を採用している。昨年12月に、個人が長期的に保有している仮想通貨に対するキャピタルゲインへの課税を廃止する法案を可決し、今年2月にペトル・パヴェル大統領がこの法案に署名した。
非課税の対象となるのは、3年以上保有していた仮想通貨の売却から生じる利益で、さらに1年につき10万チェココルナ(約69万円)までの取引は税務申告の義務がない。
法案の作成に協力したチェコ仮想通貨協会(CKMA)は、仮想通貨は税収や雇用創出という面で、同国の経済の未来にとって重要であると強調。チェコがEUにおけるイノベーションの中心地となることも可能だとコメントした。
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世界の動向
米トランプ大統領が3月に「戦略的ビットコイン準備金」と「デジタル資産備蓄」の大統領令に署名したことをきっかけに、米国の各州をはじめ世界各国でビットコイン準備金採用に関する議論が高まっている。
すでにエルサルバドルとブータンでは、国家主導のビットコイン保有戦略が開始されている。
スイスでは、スイス国立銀行が、ビットコインを金と並ぶ準備資産として検討している。ブラジルでは下院の経済開発委員会が今年6月に、ビットコイン準備金法案(外貨準備の最大5%をビットコインで保有)を可決。上院での審議に進んでいる。
ロシアや台湾でも議員の間から、ビットコイン準備金の創設を提唱する声が上がっている。
日本では、参政党の神谷宗幣代表が6月5日の国会質疑で、米国におけるビットコイン準備金創設などの政策を紹介し、日本でも仮想通貨を活用した金融政策を行っていくべきだと提案した。
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