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インフレを80%削減
暗号資産(仮想通貨)ソラナ(SOL)の改善提案「SIMD-0228」に対するコミュニティ投票まで1週間を切る中、ネットワーク参加者の間では、支持派と懐疑派で意見が割れている。
SIMD-0228は、ソラナのトークン発行の仕組みを改革するもので、SOLトークンの発行モデルを現在の固定型から、市場の需要やステーキング参加率の変化に対応する、より柔軟なモデルへと移行することを提案している。
このモデルでは、ステーキング参加者の減少時には、報酬を引き上げることで参加を奨励し、参加率が高い時には、インフレ率(トークンの発行数)を下げ、市場の売り圧を抑制する。
具体的には、ターゲットとするステーキング率として、50%が提案されている。
ステーキング率が50%を超える場合は、利回りを下げてステーキングを抑制し、トークン発行量を減らす(インフレ率の減少)。一方で、ステーキング率が50%未満の場合は、利回りを上げてステーキングを奨励し、トークン発行量を増加させる(インフレ率の増加)。
SIMD-0228が承認された場合、SOLの年間インフレ率が現在の4.5%から0.87%まで低下する可能性が指摘されており、トークンの過剰な希薄化を防ぐことで、長期的には価値保存の強化が期待される。
ステーキングとは
特定の仮想通貨を保有することで、その通貨のブロックチェーンネットワークを管理することに貢献し、対価として報酬を得る仕組み。厳密には、仮想通貨を保有するだけでなく、ネットワーク上に預け入れておく必要がある。銀行口座に法定通貨を貯金し、一定期間後に利子を受け取る仕組みに類似しているといえる。なお、ステーキングは、PoS(Proof of Stake)のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨で行うことができる。
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提案者と賛成論
SIMD-0228は、大手仮想通貨投資企業マルチコインキャピタルのTushar Jain氏とVishal Kankani氏が Anzaの主任エコノミストMax Resnick氏の支援を受けて作成したものだ。
ソラナ共同創業者Anatoly Yakovenko氏はこの提案について、「地球に隕石が衝突するほどのインパクト」と称賛。無駄なインフレを抑え、長期的な価値保存を強化できると主張している。
ソラナ財団のステーキング責任者であるBen Hawkins氏は、動的なトークン発行によってインフレ抑制につながり、売り圧力が軽減。長期的には、より持続可能な経済モデルの実現に寄与すると述べ、支持を表明している。
提案者の1人であるResnick氏は、経済学的観点から「ステーキングインセンティブの最適化がネットワークの健全性を高める」と主張している。
反対派の懸念
一方で、コミュニティからは、この提案に対する懸念の声も上がっている。
その一つが、新しいモデルの導入は、大規模なバリデータや機関投資家に有利に働き、ネットワークの分散化を脅かす可能性があるというものだ。
ステーキング率が下がると報酬が増えるという仕組みが採用されると、大口のステーカーが意図的にステーキングを解除し、小規模な参加者を不利に追い込む可能性もある。
また、インフレ率が0%に近づくと報酬が激減し、特に小規模なバリデータの運営が困難になり、ネットワークのセキュリティが低下する可能性も指摘されている。
さらに、果たしてこのモデルによって、ステーキング参加を安定させることが可能なのか、という根本的な問いも投げかけられた。
ステーキング率が臨界レベルを下回ると、トークン発行量の増加によって、「インフレスパイラル」の発生リスクを指摘する声もある。供給が増えることで価格が下がるため、ステーキング率がさらに低下し、インフレが悪化してしまうというものだ。
SIMD-0228への投票は、3月6日から始まるエポック753で実施される予定だが、ネットワークの持続性の向上を主張する賛成派と、さまざまなリスクへの懸念を表明する反対派により、コミュニティの意見は大きく分かれている。