
量的緩和への期待高まるか
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は20日のFOMC会合後の会見で、トランプ政権が進める関税政策によるインフレ影響について「一過性」との見方を示した。
この発言を受け、著名な仮想通貨投資家アーサー・ヘイズ氏は「量的引き締め(QT)は基本的に4月1日で終了する。次に本当に強気になるためには、補完的レバレッジ比率(SLR)免除か量的緩和(QE)の再開が必要だ」とのコメントを発表。ヘイズ氏は「ビットコインは77,000ドルで底を打った可能性がある」としつつも、「株式市場はパウエル議長がトランプ大統領と完全に同調する前にさらに下落する可能性があるため、投資家は柔軟性と十分な現金ポジションを維持すべき」と警告している。
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ヘイズ氏は2月末の相場下落時に、ビットコインが最悪な場合7万ドルまで下落する可能性があると予測した。一方、長期的目線として今年末には250,000ドルまで上昇する可能性があるとも見ている。
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QCPキャピタルの見解
一方、QCPキャピタルによる分析では、「昨日のFOMC会合は市場が待ち望んでいた上昇触媒を提供し、ビットコインを85,000ドル超へと急騰させた」と指摘。その主な要因は「4月からの量的引き締めプログラム縮小というFRBの決定」であり、「市場はこれを間接的な利下げと解釈し、FRBが6月からの金融緩和を開始するとの期待を強化した」と分析している。現時点では2025年の6月、9月、12月に計3回の利下げが市場に織り込まれている状況だという。
しかしQCPは「この即時的な興奮の背後で、FRBのトーンは著しく慎重だった」と警鐘を鳴らす。FRBは経済成長予測を1.7%へと0.4%下方修正する一方、インフレ予測を2.8%へと引き上げ、スタグフレーションリスクの高まりを示唆した。加えて、FRBのドットプロット(金利見通し)は12月時点より引き締め方向へシフトし、2025年の利下げゼロを予想する当局者は増加している。
パウエル議長は20日の会見で「米金融当局が何もせずにインフレが急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」と発言。これを「基本ケース」としながらも、「実際のところ分からない」と慎重な姿勢も示した。米国内では、関税措置に起因するインフレ圧力により、景気悪化時の利下げが妨げられるのではないかとの懸念が存在していたが、当局者の経済予測が年内2回の利下げを示したことで、こうした不安は一部緩和された。
また、企業や消費者のセンチメント低下に関する質問に対し、パウエル議長は「信頼できるデータは経済が依然堅調であることを示している」と回答。また、ミシガン大学の調査で示された予想インフレ率の上昇についても、「長期的なインフレ期待は引き続き十分に安定している」と自信を示した。
しかし、「一過性」という表現にはリスクも伴う。新型コロナパンデミック時の物価上昇についても同様の表現が使用されたが、その後インフレが持続的であることが判明し、FRBは急速な利上げを強いられた経緯がある。
オプション市場では、先週初めにプット(売り)に偏っていたスキュー(リスク指標)がコール(買い)へと正常化しており、市場センチメントの改善を示していると、QCPは指摘する。しかし「現在の重要なテストは米国市場の再開時に訪れる。この上昇が持続するのか、それとも投資家はリスクが依然として明確に存在するという現実に目覚めるのか」と警告している。ヘイズ氏の指摘通り、量的引き締めの縮小は市場流動性の改善を意味するが、トランプ政権の貿易政策がインフレに与える影響や株式市場の動向など、不確実性は依然として高く、投資家には柔軟な対応が求められている。
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