
米国向けの新ステーブルコインを検討
テザー社のパオロ・アルドイノCEOは、米国議会の動きを背景に、新たに米国ベースの機関投資家向けステーブルコインを発行することを検討中だと話した。The Blockが7日に報じた。
アルドイノ氏は、新たなステーブルコインの設計について、次のように述べている。
アフリカなどの新興市場や金融包摂を支援するために開発したステーブルコインとは異なるものとなる。それらの国とはインフラ要件が大きく異なる米国において、規制された大手機関のニーズを満たすように調整されるだろう。
USDTはじめテザー社がすでに提供しているステーブルコインは、特に現地通貨の変動が激しい新興市場においては、貯蓄や日常使用のためのデジタルドルとして広く採用されている。
一方で、米国向けの新たなステーブルコインは、銀行間のより迅速な決済を求める機関向けに調整されたものとして構想されているところだ。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
ステーブルコイン法案の影響
テザー社の構想は、米国でステーブルコイン法案の審議が進められていることが背景だ。下院では「より良い分散型台帳経済のためのステーブルコイン透明性と説明責任法(STABLE)」が、上院では「米国ステーブルコインのための国家イノベーションの支援と確立法(GENIUS)」が議論されている。
トランプ大統領は8月までに法案を可決するよう促しているところだ。
これらのステーブルコイン法案は両方とも、外国のステーブルコイン発行者に、銀行秘密法に基づく厳格なマネーロンダリング防止要件や、準備金の厳格な監査を求めている。
テザー社は、米国外であるエルサルバドルに本社を置いているため、法案成立で不利になるのではとの意見も上がっている。
また、下院のステーブルコイン法案では、法が発効してから2年後に、コインベースのような仲介業者が、米国の法規制に従わないトークンの取引を禁止する内容を盛り込むものだ。
ステーブルコイン法案の内容はまだ審議中だが、米国での登録・承認や準備資産の開示などが義務付けられる可能性がある。テザー社は、こうした法案の成立も見越して、米国で規制準拠したステーブルコインの立ち上げを構想しているとみられる。
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各国がステーブルコイン規制を整えようとする中、テザー社の事業も一部の市場で影響を受けている。バイナンスは先週、欧州でUSDTなどのステーブルコインの上場を廃止した。
これは、欧州の包括的な仮想通貨規制「MiCA」の動きを受けたものだ。MiCAでは、ステーブルコイン発行者は少なくとも1つのEU加盟国で電子マネーライセンスを取得し、裏付け資産に関する厳格なルールに従う必要がある。
アルドイノ氏は、テザー社が、MiCAに準拠したドル建ておよびユーロ建てステーブルコインを発行する複数の欧州企業に投資しているとも話した。
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