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国難時に備えるビットコイン保有戦略 サムソン・モウの提唱するバックアッププラン

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ビットコインテクノロジー企業の創業者が語る

今日において最も保守的な行動は、ビットコインを保有することだ。ビットコインを持たないことこそ、本当のリスクである。

4月25日、ビットコインテクノロジー企業JAN3(ジャンスリー)創業者兼CEO(最高経営責任者)のサムソン・モウ氏(Samson Mow)は、Tokyo Bitcoin Baseの内覧会に出席した際、CoinPostの独占インタビューに応じた。

Tokyo Bitcoin Baseは、2024年4月25日に東京・四谷に誕生したビットコイン特化型施設だ。コワーキングスペース、イベントスペース、教育プログラムなど、多様な機能を備え、国内外のビットコインコミュニティ交流の拠点を目指している。

一方、JAN3はビットコイン国家導入支援およびインフラ整備を使命とする企業であり、2022年にサムソン・モウ氏によって設立された。各国政府との連携を通じて、ビットコイン普及を加速させることを目指している。

サムソン・モウ氏は、世界有数のビットコイン提唱者として知られ、ビットコインの未来における不可欠性を力強く訴え続けている。今回のインタビューでも、具体的な理由と将来展望について深く語った。

リスクとは何か

いま、世界各国は複数のリスクに直面している。サムソン・モウ氏はそのリスクを列挙した。

「多くの(米ドルなどの)法定通貨は崩壊寸前にあるようだ。社会経済構造は大きなストレスにさらされている。人々はもはや生活必需品すら手に入れにくくなっている。また、中央銀行が存在していても、もはや法定通貨をコントロールできない状況にある。」

モウ氏が問題視するのは、伝統的な金融システムが明確なアンカーを失い、通貨の過剰発行と債務膨張を招き、インフレなどの社会問題を引き起こしている点だ。

「米国の負債総額は36兆ドルもの規模に達している。その債務利払いだけで年間1兆ドルが必要だ。」サムソン・モウ氏は米国の事例を挙げ、政府のジレンマを分析した。

「米国政府はさまざまな手段を試してみたが、効果はわずかしかなかった。しかし、こうした問題は米国だけに限らず、他の国々も苦しんでいる。」

唯一の解決策は、サムソン・モウ氏にとって、ハードアセット(ゴールドなどの実物資産)への転換だ。「そのハードアセットは、ビットコインだ」とモウ氏は断言する。

なぜビットコインなのか

インタビューの中で、サムソン・モウ氏はビットコインの持つ本質的な優位性について、具体的に語った。

「ビットコインは、単なるデジタル資産ではない。作業証明(プルーフ・オブ・ワーク、PoW)によってエネルギーをビットコインに変換し、それを所有することは、金属貨幣──つまりゴールドを超える新たなハードアセットを所有することを意味する」とモウ氏は語る。

さらに、ビットコインは単なる価値の保存手段に留まらない。その本質は、誰にも支配されず、かつ誰でも自由に参加できる、普遍的な経済ネットワークにある。

「ビットコインは中央管理者を持たず、数学とコードによって検証可能な資産だ。政府や銀行のような信頼の仲介を必要としない。これは従来の中央集権型通貨とは決定的に異なる。」

モウ氏はまた、ビットコインの誕生そのものに独自性がある点も強調した。

「ビットコインは自然発生的に誕生した唯一の暗号資産だ。ヴァージンバース(純粋誕生)を再現することはできない。コードを模倣することはできても、ビットコインが生まれた環境、信頼のない世界的な自然採用(organic adoption)は再現できない。」

こうした特性を踏まえ、モウ氏は「従来の信用に依存する通貨システムはすでに限界を迎えつつあり、それに代わるバックアッププランとして、ビットコインは存在している」と語る。

法定通貨の無制限発行、中央管理、地政学的リスク、そして信用の脆弱性──それらすべての問題に対し、ビットコインは分散型でオープンな、新しい経済のインフラを提供し得ると、モウ氏は確信している。

モウ氏にとって、コインこそが従来の金融問題を克服できる通貨であり、各国が真剣に考え、採用すべき対象だとする。

「過度に保守的でいると、重要な機会を逃してしまい、かえってリスクになる」とモウ氏は指摘。

米国と日本の政策動向

最近、トランプ政権の暗号資産に対する開放的な態度が注目されている。サムソン・モウ氏もこれを肯定している。

「米国政府は押収したビットコインの売却を停止し、備蓄資産として扱い始めた。また、ビットコインは暗号資産とは別に区分され、今後はルミス上院議員が提出したビットコイン法(Bitcoin Act)の成立によって正式に購入できるようになるだろう」とモウ氏は展望を示した。

ビットコイン法(BITCOIN Act)は、2025年3月11日に米国上院議員のシンシア・ルミス氏によって提出された法案である。

この法案は、米国政府が5年間で上限100万BTCを購入・保有することを目指し、国家の経済安全保障と金融主権を維持・強化するために、相当な規模戦略的ビットコイン備蓄(Strategic Bitcoin Reserve)の設立を提案している。

特筆すべきは、サムソン・モウ氏が今回の来日時に、参議院議員の浜田聡氏や法務副大臣の神田潤一氏ら政府関係者と会談を行ったことだ。

会談では、日本政府が抱える財政課題や、世界的なビットコイン採用の流れを踏まえた国家戦略の必要性について意見交換が行われた。

「我々が感じたのは、前進するためには大衆のさらなる支持が必要だということだ。」サムソン・モウ氏によると、今回の目標の一つは、大衆の支持を政策立案者に見せることだという。

一方で、「多くのアジア諸国は非常に保守的であり、それが慣性の原因になっていると思う」とモウ氏は述べた。

政策立案者も「もっと多くの人々がビットコインに関心を寄せる姿を見たい」と考えており、それによってさらに前進できると指摘した。

これを実現するために、モウ氏は専任のタスクフォース設立を提案。今後、大きな影響力を持つメンバーも参加し、会合やイベントなどさまざまな活動を通じて、大衆的支持を可視化し、政策形成への後押しを目指す方針だ。

またモウ氏は、日本における暗号資産ユーザー数の多さを評価し、「十分な規模の支持基盤が存在する」と述べた。

JAN3とモウ氏の展望

サムソン・モウ氏は、過去にエルサルバドル政府に対し、ビットコインを法定通貨として採用し、さらにデジタル証券を規制する法律を制定するよう助言した経験を持つ。その過程で、「政府が何かを実行するのは簡単ではない、それが最大の教訓だ」と痛感したという。

「国ごとに政府の事情は異なり、政治環境もそれぞれ違う。」それでも、サムソン・モウ氏率いるJAN3は、今後も各国政府との連携を強化し、ビットコインの国家備蓄を推進する方針だ。

モウ氏は「我々は引き続き各国政府と協力していく。通常、新政権が誕生してから政策を実行できるのは2年程度のウィンドウしかない」と語り、タイミングを見極めながら粘り強く働きかけを続ける考えを示した。

また、自社開発のウォレット製品「AQUA Wallet」についても、各国のニーズに応じた柔軟なカスタマイズが可能であり、将来的に国家プロジェクトにも応用できることを強調した。

さらにモウ氏は、ビットコイン価格の将来展望についても言及した。

「我々の保守的なモデルでは2031年にビットコインが100万ドルに到達すると予測しているが、実際にはこれから12カ月以内に到達する可能性がある」と語り、現在のマクロ経済環境を踏まえれば、これまで以上に急速な価格上昇もあり得るとの見方を示した。

モウ氏は、ビットコイン価格が急速に上昇する可能性を指摘したうえで、国家が行動を起こせるタイミングには限りがあり、早期の備えが不可欠であると警鐘を鳴らした。

関連:企業のビットコイン非保有は「無責任」、億万長者投資家ティム・ドレイパー

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