はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

ステーブルコイン、米国政府の重要な「戦略的資産」となる可能性=米ARK

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

米国政府へ財政的メリットをもたらす

米ヘッジファンド大手のARK Investmentは5日に公開したレポートで、ステーブルコインが米国政府の財政戦略や米ドル覇権の維持において、重要な役割を果たす可能性を詳細に分析した。ステーブルコインが今後5年から10年で、米国政府にとっても最も重要な戦略的資産となる可能性があると主張している。

「ステーブルコインは米国政府の最も回復力のある金融同盟の一つとなり得る」と題したこのレポートでは、まずステーブルコインの急成長について言及。年初からその供給量は20%以上増加して2,470億ドル(約35.8兆円)となり、米国のM2マネーサプライ(現金や預金などの流動性資金)の1%を超えた。

ステーブルコイン市場を牽引するのは、テザー(Tether)社のUSDT(時価総額1,500億ドル=21.7兆円)とサークル(Circle)社のUSDC(610億ドル=8.8兆円)で、両社合わせてステーブルコインの85%以上の市場シェアを占めている。

ステーブルコインの発行企業は、準備金として米国の短期国債や現金同等物を保有し、価値の安定性の担保としている。そのため、ステーブルコインの急成長は、発行企業による米国債の大量保有を促し、米国政府にとって重要な財政的メリットをもたらすことにつながる。

関連:ステーブルコイン最大手テザー、サークル時価総額の5倍以上の可能性

新たな米国債の買い手

レポートは、近年、外国政府による米国債保有比率が大幅に減少していると指摘。最大の米国債保有国である中国と日本、カナダの保有割合の合計は、2011年の23%から2024年にはわずか6.14%にまで急落した。

また、連邦準備制度理事会(FRB)は量的引き締めにより資産を縮小する傾向にあり、2025年に新規に国債購入を再開する可能性は低いとARKは見ている。

そこで、この需要のギャップを埋める米国債の新たな大量購入者として浮上したのが、テザー社やサークル社をはじめとするステーブルコイン発行企業だ。

2025年3月に発表されたテザー社のレポートによると、同社は現在980億ドル相当(約14.2兆円)の米国債を保有している。一方、サークル社は1月下旬時点で220億ドル(約3.2兆円)以上の米国債を保有していた。両社の米国債保有額の合計(1,200億ドル=17.4兆円)は、世界18位で韓国に次ぐ規模であり、ドイツを上回っている。

テザー社は米国債の買い手として、2024年には英国とシンガポールに次ぐ7位となっており、現在の発行ペースが継続すると、年末までにさらに4~5カ国を追い抜く勢いにあるとARKは見ている。

またARKは、2030年までにステーブルコイン市場が1.4兆ドル(203兆円)規模に成長すると予測。テザー社とサークル社が両社が現在の市場シェアを維持した場合、約6,600億ドル(95.7兆円)以上の米国債を所有することになる。これは、現在の中国の保有量(7,720億ドル)に迫り、中国と日本に次ぐ規模となる。

ステーブルコインは、今後数年間で米国債の最大の需要源の一つとなる可能性があり、その場合、ステーブルコイン業界が米国の長期金利低下に貢献する可能性があるとARKはまとめた。

脱ドル化の影響を克服

また、ARKはステーブルコインが「トロイの木馬」のような役割を果たしていると主張する。

ステーブルコインは米ドルに連動しているため、世界中で利用されることで米ドルの需要を高め、グローバルな金融システムにおける米ドルの覇権強化につながる。そして、それは米国債への需要を生み出すことにもなる。

ステーブルコインは、従来の銀行システムが対応できなかった地域や人口層にも浸透している。

BRICS+経済圏など、米国の伝統的な金融システムからの離脱を目指す地域においても、ステーブルコインのユーザーが拡大することで、脱ドル化の圧力を相殺し、米ドル基盤の金融システムが強化されることになる。

米国外で暗号資産(仮想通貨)を購入する場合、流動性の高い取引所のほとんどで、米ドル建てのステーブルコインが利用されている。特にUSDTはバイナンスやOKX、Upbit、Bybit、Bithumbといったアジアの主要取引所において主要な取引ペアとなっており、米ドル建てでの仮想通貨取引の需要が、ステーブルコインへの大きな需要を生み出している。

関連:世界のステーブルコイン保有者1.6億人突破=コインベースレポート

ステーブルコインの台頭と米国政府

ARKはテザー社による世界のUSDT保有アドレス数の報告に基づき、世界でステーブルコインを保有するアドレスの総数を約5億7,000万と推定。(重複する保有者を含む)一方、米ドルの保有者は、紙幣とデジタルドルによる保有を合わせて、総計約10億人と推定した。

わずか5年余りで、ステーブルコインの利用者は世界で約2億人に達し、非米居住者の米ドル保有者総数の15%~20%を占めるようになった。これは、米ドルの流通期間の長さを考慮すると、「驚異的な成果」だとレポートは指摘した。

トランプ政権および連邦議会でも、ステーブルコインは、米国債への持続的な需要を生み出し、米ドルの優位性を強化する役割を果たす戦略的資産として、重要視されている。議会ではステーブル規制法案の議論が進展している。

以上を踏まえて、ARKはステーブルコイン業界は、米国政府にとって最も信頼性が高く回復力のある金融の同盟の一つとして発展する可能性が高いと総括した。

関連:トランプ支持のステーブルコイン規制法案、米上院が11日に採決へ

関連:ステーブルコイン「USDC」の買い方、DeFi運用・使い方を徹底解説

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/28 月曜日
09:39
推定5000億円のイーサリアムが喪失の可能性、コインベース・ディレクターが分析
米仮想通貨取引所コインベースがユーザーミスなどにより5,070億円相当のイーサリアムが永久に失われていると分析した。流通供給量の0.76%に相当する量だ。
07/27 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、ETHの上値目標やSOL上のポケモンカード市場の急成長など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
クジラの大量送金で1700万円台へ下落、米政策レポート30日公開に注目|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコイン相場は1750万円台から1700万円台へ下落。14年以上塩漬けされた3962BTC(約675億円)のクジラ送金が売り圧力懸念を招く。30日の米暗号資産政策レポート公開とFOMC結果に市場の注目が集まる。bitbankアナリスト長谷川氏による詳細分析。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|サトシ・ナカモトのBTC資産推定額に高い関心
今週は、サトシ・ナカモトのものとされるビットコイン保有資産、日本ブロックチェーン協会のアンケート結果公表、トランプ政権の仮想通貨政策報告書公表計画に関するニュースが最も関心を集めた。
06:00
ビットコイン取引が快適なのは?手数料・板の厚み・ツールの充実度で主要取引所を徹底比較
暗号資産(仮想通貨)ビットコインの売買や送金におすすめの国内取引所について、メリットとデメリットを徹底比較。手数料・スプレッド・送金速度、セキュリティ、積立・レンディング機能などを調査しました
05:54
ビットコインの買い方、取引所選びの完全ガイド
ビットコインの買い方(始め方)を徹底解説。SBI VCトレード・bitbank・Coincheckなど主要取引所を比較し、安全な購入方法や投資メリットを初心者向けに解説します。最適な取引所選びで失敗しないコツも紹介
07/26 土曜日
14:45
ビットコイントレジャリー企業メタプラネット、米国に持株会社を設立
メタプラネットが米フロリダ州に持株会社を新設する。ビットコイントレジャリー企業としての国際展開を支える動きだ。デリバティブ事業の新子会社も計画している。
14:15
キヨサキ氏、ビットコインをETFで持つことに注意促す
金持ち父さん著書のロバート・キヨサキ氏が仮想通貨ビットコインETFの注意点を指摘した。現物保有とETFの違いを認識することが大切だと意見している。
13:25
「インターネット金融市場の中枢に」ソラナ創設者が新たな構築計画を発表
仮想通貨ソラナ創設者らが24日、インターネット金融市場ロードマップを発表。アプリケーション制御実行技術ACEで取引順序制御を可能にし、従来型取引所に匹敵する性能実現を目指す。
11:05
シティ、ビットコイン13.5万ドル予測 その根拠は?
シティグループがビットコイン年末目標価格13万5000ドルを発表。ETF資金流入とネットワーク価値分析に基づく評価モデルで、仮想通貨市場の成長を予測。
10:02
仮想通貨市場に夏枯れ相場到来か Matrixport最新予想
仮想通貨サービス企業Matrixportが夏の市場停滞を予測している。ビットコイン、イーサリアムなど主要アルトコインは米クリプトウィーク後に脆弱性が上昇すると述べた。
09:10
「ETHが最大6カ月間はBTCのパフォーマンスを上回る可能性」ノボグラッツ
ギャラクシーのノボグラッツCEOは、仮想通貨イーサリアムは今後3カ月から6カ月の間ビットコインをアウトパフォームする可能性があるとの見方を示した。イーサリアムの強気要因を説明している。
08:25
「4年周期は終焉」ビットワイズCIOが示す仮想通貨市場の変化とは
ビットワイズのマット・ホーガンCIOが25日、仮想通貨の4年周期が終わったと分析。ETF成長や機関投資家の参入、規制進展などの長期要因が従来の周期を圧倒し、2026年も好調な相場が続くと予想している。
07:00
ギャラクシー・デジタル、1.3兆円相当のビットコイン売却を完了 サトシ時代投資家の利益確定
デジタル資産大手ギャラクシー・デジタルが25日、サトシ時代投資家の代理で8万BTC超(90億ドル相当)を売却したと発表。仮想通貨史上最大規模の取引の1つで、投資家の資産戦略の一環として実行された。
06:25
M2拡大でETH価格も上昇か? 8000ドル予測にエリック・トランプも賛同
仮想通貨アナリストのテッドピローズ氏が25日、イーサリアムがグローバル流動性に追随しM2マネー成長と比較して8000ドル超で取引されるべきと分析。エリック・トランプ氏も同意を示し、別のアナリストは1万ドル到達を予想している。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧