
関税の大幅な上昇
7月31日に確定した米トランプ政権による新たな相互関税が本日発動し、マイニング機器の大半を東南アジア諸国からの輸入に頼る米マイニング業界にとって、大きな痛手となると専門家は警告している。
今年4月の「解放記念日」貿易改革の際に発表された90日間の関税停止措置の失効を受け、トランプ大統領は7月31日、相互関税の新たな税率を各国に課す大統領令に署名した。マイニング機器の主要製造拠点であるインドネシア、マレーシア、タイからのビットコインマイニング機器(ASIC)輸入には19%の相互課税が課され、合計税率は21.6%となる。
新税率は当初提案された25%~36%を下回るものの、第二次トランプ政権発足前の標準輸入関税率2.6%と比較すると大幅な引き上げとなっている。
中国に関しては、8月12日まで10%の基本関税に加え、中国固有のプレミアム20%が課されるため、中国からのマイニング機器輸入の関税率は現在合計57.6%となっている。
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マイニング業界への影響
ビットコインマイニング・インフラ企業ルクソール・テクノロジーのイーサン・ベラ最高執行責任者は、新たな関税によって、すでに米国拠点のマイナーからの需要は減少していると指摘した。
21.6%の関税を課す米国は、現在、マシンの輸入において最も競争力の低い管轄区域の一つとなっており、マイナーはカナダやその他の市場に事業拡大の道筋を見出そうとしている。
ベラ氏は、米国のマイニング産業の成長は鈍化し、マイニング機器は、より有利な関税措置が設定された海外市場へ向かうことになると予測している。
同氏は5月に、ロシアが低コストでASICを調達できるため主要な受益国になるとの見解を示していた。中国資本はロシアへ流入し、米国や欧州資本はカナダ、北欧、エチオピア、ブラジル、アルゼンチン、チリ、パラグアイなどへ投資をシフトする可能性があると指摘した。
国内生産の動きと課題
ルクソール社は米国におけるマイニング機器製造を支援することで、マイニング産業の国外流出を食い止める努力をしている。その一環として、中国の大手マイニング機器メーカーMicroBTとの国内生産契約や国内製造パートナーシップを結び、米国の顧客がマシンを確保できるよう取り組んでいる。
しかし、同社は長期的にはマイニング機器が米国で製造される見通しに期待を寄せている一方で、完全に国内で機器の製造を行うには数年かかる可能性があると警告している。
ベラ氏は、現在でも多くのメーカーが米国でマシンの最終組み立てを行うことは可能であり、実際に行われていると考えている。しかし、問題となるのは、原材料と部品の大部分がアジアから輸入されていることであり、米国内で組み立てられたマシンのコスト上昇に繋がっている。
米国産の部品を使用したマシンが大量生産されるようになるまでには、少なくとも数年かかると同氏は予想している。
トランプ大統領は「米国をマイニングの世界的リーダーにする」という目標を掲げているが、新たな関税措置は逆にコスト増を招き、業界の競争力を下げる結果となりつつある。
ルクソール社は、米国のビットコインマイナーの公正な扱いを求める複数の団体と連携し、コンピュータやサーバーに適用される関税免除(HTSUS 8471)をASICにも適用するよう、引き続きトランプ政権に働きかけていくという。
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エネルギーコストによる競争力の維持
一方、シンガポールに拠点を置くマイニング・サービス企業BitFuFuは、マイニングにかかるエネルギーコストを抑えることで、米国のマイニング業者は競争力を維持できると考えている。
同社の創設者兼CEOのレオ・ルー氏は、米国拠点のマイナーは、マイニング機器への初期投資コストが上昇したとしても、比較的低コストで再生可能エネルギーの利用が進む同国のエネルギー源を活用することで、競争力のある営業利益率を維持できると主張している。
BitFuFuは今年2月、オクラホマ州にある51メガワットのビットコインマイニング施設を買収した。この施設は電力供給の信頼性が高く、平均電気料金は1キロワット時あたりわずか3セントであり、高いハッシュレート効率を実現しているという。同社はテキサス州、コロラド州などの地域と提携し、事業を最適化する体制を整えている。
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