
民間企業による通貨発行に懸念示す
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が15日、関係者の話として報じたところによると、中国政府は複数のテクノロジー大手企業による香港でのステーブルコイン発行計画を遅らせるべく介入したという。
今年の夏、アリババ傘下のアント・グループ(Ant Group)やEコマース大手のJD.comなどの企業は、香港のステーブルコイン試験プログラムに参加する、またはトークン化された債券などの暗号資産(仮想通貨)担保型商品を発行すると表明していた。
しかし、この動きは現在、政府から問題視されている。関係者によると、中国人民銀行の当局者らは、テック企業や証券会社による通貨発行を認めることへの懸念から、ステーブルコイン事業への参加を控えるよう助言したという。民間運営のステーブルコイン発行が人民銀のデジタル通貨プロジェクト「デジタル人民元」への挑戦と見なされているようだ。
中国人民銀行の周小川元総裁は8月の中国金融40人フォーラムで、ステーブルコインの過剰発行やレバレッジ増幅のリスクを強調。「資産投機への過度な使用に警戒が必要だ。方向性を誤れば詐欺や金融システムの不安定化を招く」と指摘した。
香港は今年5月21日にステーブルコイン規制法を立法会で可決し、5月30日に正式施行された。これにより香港は世界初の法定通貨担保型ステーブルコインに対する包括的な規制枠組みを確立した司法管轄区となった。
8月、ロイター通信も中国政府が人民元連動ステーブルコイン発行を検討していると報じた。今回の転換により、今後の中国におけるステーブルコイン政策の方向性が注目される。
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