チェーンリンクを解説
ブロックチェーンの開発が進み、最近では暗号資産(仮想通貨)という金融領域以外でも技術が広く応用されるようになりました。
データの改ざんが事実上不可能で、透明性の高い仕組みは今後も広く普及していくとの見方が多く、中央集権的な仲介者が不要な点から、コスト削減や効率性向上につながるとして、ブロックチェーンという技術に対する注目度はますます高まってきています。
しかし一方で、ブロックチェーンにはまだ課題もあります。ブロックチェーンの種類によっては処理速度遅かったり、それによって手数料が高騰したりする点などです。
また種類に限らず、ブロックチェーン全体の特徴として「ネットワークの外のデータにアクセスできない」という課題があります。例えば、ブロックチェーンは単独で、「今その仮想通貨の価格はいくらか」というデータを入手することができません。
この「ネットワークの外のデータにアクセスできない」という課題の解決に取り組んでいるプロジェクトが「Chainlink」です。本記事では、Chainlinkの仕組みや特徴、ユースケースについてご紹介していきます。
通貨名(通貨単位) | ChainLink(LINK) |
---|---|
最大供給量 | 1,000,000,000 LINK |
現在の供給量(記事作成時) | 350,000,000 LINK |
公開日 | 2017年6月27日 |
公式サイト | ChainLink公式サイト |
ソースコード | ChainLinkソースコード |
CoinMarketCap(チャート) | ChainLinkチャート |
ホワイトペーパー | ChainLink White paper |
Chainlinkはブロックチェーンの外部にあるデータをブロックチェーン内部に提供する、Smart Oracleなどの技術を使用したシステム開発を行うSmartContract社が、コーネル大学やUCバークレーなどの教員が主導しているブロックチェーン専門の研究機関であるIC3と協力して開発しています。
プロジェクト内容
上記の通りコーネル大学のブロックチェーン研究専門機関が開発しているTownCrierというウェブサイトのデータを検索し、そのデータをブロックチェーンのスマートコントラクト(執行条件と契約内容を事前に決めておくことで、その条件に合致した場合に自動的に契約が履行される仕組み)に提供するシステムをChainlinkと組み合わせています。
ChainlinkはWebアプリケーション、Paypal、API、銀行口座などの決済や市場データ、金融システムを、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、HyperLedgerのスマートコントラクトと安全に監視可能に繋げる最初のミドルウェア(最低限に必要な基本的機能を提供するオペレーションシステム=OSとOSではできない機能を提供するアプリケーションの中間に入りデータ処理などを行うソフトウェア)です。
というのも、スマートコントラクトはオフチェーン(外部)のデータやAPIといった主要な外部リソースに接続できない外部接続性に欠如があるからです。
この状態をChainlinkが中間に入ることで、スマートコントラクトとオフチェーン(外部)にあるデータなどを繋げることができるようになります。
Chainlinkは、分散型のオラクルであることが大きな特徴です。特定の企業や組織が運営していたり、情報源が限定されていたりすると仕組みはシンプルですが、そこが単一障害点になったりするリスクがあり、また仲介者に対する信用を担保する必要もあります。
複数の情報源からをデータを収集し、複数のノードによって運営されているChainlinkは、トレストレスで単一障害点がなく、より安全なオラクルだとされています。
RippleのILP(インターレジャープロトコル)と競合するのではないかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、ILPは銀行の国際送金や取引の主体となる資産のやりとりを仲介する機能ですが、Chainlinkのようにビットコインやイーサリアムのスマートコントラクトを外部データ、API、内部システム、既存の銀行決済システムに安全で瞬時かつ監査可能な形で接続することを可能にするものではなく、銀行間を繋げること、ドル、元、円などの価値を瞬時に安全に送金することが目的です。
またChainlinkのLINKトークンはChainLinkのネットワークで使用され、スマートコントラクトが金融システム、Paypal、Web、と繋がり、これらが持つそれぞれの決済がLINKトークンによってそれぞれのChainLink Node Operatorと決済することが可能となりLINKトークンはスマートコントラクトに直接提供されます。
関連:なぜ、仮想通貨XRP(リップル)に関心が集まるのか|今後の将来性と重要プロジェクト
SWIFTとの関係
SWIFTが例年主催し、2016年のSibos(世界各国の金融機関の幹部や関係者が出席する国際会議)をきっかけにSWIFTと契約を結び、SmartContract社とSWIFTがChainlinkを使ってブロックチェーンの実証実験を成功させています。
そのSibosが2017年10月16日にカナダのトロントで開催され、同日に同じトロントで、Rippleと銀行とのブロックチェーンについての国際会議が開催されました。
SWIFT(国際銀行間金融通信協会)は世界各国の金融機関に金融メッセージ・クラウドサービスを提供し、あらゆる国際決済がSWIFTを通して行われています。
また、ブロックチェーン技術の可能性にも目をつけ、この技術が決済システムに組み込まれることでプロセスの効率を上げ、経済の活性化にも繋がることが期待されていました。
プロジェクトチーム
CEOであるSergey Nazarov氏はネットワーク上で売買の注文を完了できるサービスSecure Asset Exchangeやブロックチェーンベースの分散型電子メールサービスCryptamailなどのブロックチェーン分野の会社を起業してきた豊富な経験を持ちます。
技術顧問にはIC3の共同ディレクターのAri Juels氏、イーサリアムコミュニティメンバーのハドソン・ジェイムソン氏、ZcashとTezosのアドバイザーのAndrew Miller氏、Facebookのエンジニアリング・ディレクターやGoogle、Nvidia、インテルなどの大手起業で採用されているLLVMの開発をし、名誉あるACM Software Systems Awardを受賞しているEvan Cheng氏で編成されていました。
ICO
2017年9月19日から行われたICOは、ハードキャップである約36億円に到達し終了しました。
企業の分析データを提供する「Crunchbase」によれば、Chainlinkは2017年、2回のICO(イニシャル・コイン・オファリング)と「シードラウンド」で、合計3,200万ドル(約35億円)の資金を調達しています。
ユースケース
上述したSWIFT以外にも、Chainlinkには多くのユースケースがあります。
2019年にはGoogle Cloudと提携。その後2021年8月に、チェーンリンクのネットワークで、Google Cloudが提供する天気データが利用可能になりました。天気をもとにした予測市場や、農業向けの保険などをDeFi(分散型金融)で提供出来るようになる見込みがあるとして、注目を集めています。
これ以外にも、日本発のパブリックブロックチェーンを開発する「ステイクテクノロジーズ」が技術的な連携を行なったり、中国の国家ブロックチェーン・プラットフォームである「BSN(ブロックチェーン・サービス・ネットワーク)」がChainlinkのオラクルを導入するなど、ユースケースは現在でも増加しています。
投資におけるユースケース
投資対象の資産としては、米最大手仮想通貨投資企業「グレースケール」が2021年4月に、同社が提供する「Digital Large Cap Fund」にLINKトークンを組み入れたことが明らかになりました。
Digital Large Cap Fundは、時価総額上位の銘柄で組成される投資信託です。当時、ビットコインとイーサリアム、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)が以前から含まれていて、そこにLINKトークンが加えられています。
グレースケールの投資信託は、市場からの注目度が非常に高く、LINKトークンの追加も大きな話題になりました。
国内の上場先
LINKトークンは2021年9月16日、東証1部上場企業「SBIホールディングス」傘下の仮想通貨取引所「SBI VCトレード」が取り扱いを開始しました。
同社の取引所(VCTRADE Pro)と販売所(VCTRADE)で取り扱っており、日本では初の上場事例です。
関連:SBI VCトレードの銘柄新規上場、チェーンリンク(LINK)とポルカドット(DOT)