12月19日に、自由民主党・日本維新の会より令和8年度税制改正大綱が公表され、仮想通貨(暗号資産)の税制について、これまでとは異なる方向性が示されました。
これまで多くの投資家から要望のあった分離課税制度についても、一定の方針が示されており、今後の税制に変化が生じる可能性があります。
もっとも、仮想通貨取引による所得のすべてに分離課税制度が適用されるといった単純な内容ではありません。
取引内容や所得区分などについて正しく理解しておかなければ、制度が実施された際に、税務対応や税負担の面で戸惑う可能性も考えられます。
本記事では、令和8年度税制改正大綱の記載内容を踏まえながら、現時点で押さえておくべきポイントを整理し、注意点をわかりやすく解説します。
令和8年度税制改正大綱で押さえておきたいポイント
今回の税制改正大綱では、仮想通貨を「投機的なもの」として一律に扱うのではなく、国民の資産形成に資する金融商品として整理していく方向性が示されています。
その一環として、株式や投資信託と同様に、仮想通貨の所得についても分離課税を適用することが検討されています。
取引の内容によっては、これまで通り総合課税制度が適用されたり、雑所得として申告が必要になる可能性もあり、詳細な制度設計については今後の法令整備を待つ必要があります。
では、今回の税制改正大綱で特に押さえておくべきポイントを紹介していきます。
分離課税と総合課税の対象は同じではない可能性
税制改正大綱では、分離課税の対象として、仮想通貨の「現物取引」「デリバティブ取引」「ETF」が挙げられています。
これにより、これらの取引から生じる所得について、分離課税を適用する方向性が示されています。
一方で、ステーキングやレンディングなど仮想通貨を保有することによって得られる報酬型の取引については、税制改正大綱では具体的な言及はありません。
これらの報酬は、価格変動による売却益とは性質が異なるため、どのような所得区分・課税方式が適用されるのかについては、今後の制度設計を待つ必要があります。
そのため、分離課税が導入された場合でも、すべての仮想通貨取引が同じ課税方式で整理されるとは限らない点には注意が必要です。
分離課税が適用される通貨は限定される可能性がある
分離課税の適用や、仮想通貨取引業者による報告書提出制度などは、大綱の文面では「特定暗号資産の取引」を前提として規定されています。
本文では、「特定暗号資産」とはどの仮想通貨を指すのか、具体的な銘柄や要件までは示されていませんが、制度の前提として想定されているのは、金融商品取引法の枠組みの下で登録を受けた事業者が取り扱う仮想通貨等であることが読み取れます。
したがって、税制改正大綱が想定する「特定暗号資産」は、すべての仮想通貨を対象とするものではなく、一定の制度的整理がなされた範囲に限定される可能性があります。
現時点では、「特定暗号資産」の対象範囲がどこまで広がるのか、あるいは限定されるのかを断定することはできませんが、税制改正大綱の記載から、仮想通貨取引のすべてが一律に新制度の対象となるわけではなく、一定の範囲を画した制度設計が行われる可能性があるという点は、押さえておくべき重要なポイントといえるでしょう。
所得が「譲渡所得」と「雑所得」に区分される可能性
現行制度では、ステーキングなどによって報酬として仮想通貨を受け取った場合、その取得時点で時価評価され、雑所得として課税されます。
さらに、その仮想通貨を後日売却した際には、売却益が別途課税対象となります。
税制改正後の具体的な取り扱いについてはこれからの制度設計次第ですが、現行制度ではこのように取得時と売却時で課税関係が分かれている点は、理解しておく必要があります。
改正後にどのような整理が行われるのかについては、今後の法令や通達を確認することが重要です。
NFTは引き続き総合課税となる可能性が高い
今回の税制改正大綱では、仮想通貨に関しては一定の整理が行われていますが、NFT(非代替性トークン)への明確な言及はありません。
そのため、NFTの売買等による所得については、引き続き雑所得として総合課税の対象になる可能性があります。
仮想通貨とNFTは、技術的には近い存在であっても、税務上は異なる整理がなされる可能性がある点には引き続き注意が必要です。
特定仮想通貨の投資信託が実現した場合の税金は?
税制改正大綱では、仮想通貨そのものだけでなく、仮想通貨を対象とした投資信託やETFといった金融商品も視野に入れた整理が進められています。
将来的には、現物を直接保有しなくても、仮想通貨に投資できる選択肢が広がる可能性が考えられます。
通常の投資信託など金融商品で得た利益は、所得税法上「分離課税」として扱われますが、仮想通貨の場合も同様の扱いになるかどうかは明確になっていないため、今後も引き続き注意が必要です。
損益通算と繰越控除について
まず、仮想通貨取引に関する損失について、3年間の繰越控除が認められることが今回の税制改正大綱では記されています。
これはFXや株式と同様の扱いで、ある年に損失が出た場合、その年に使い切れなかった損失を翌年以降3年間にわたって、同じ種類の所得から控除できる仕組みです。
これまでは繰越控除ができなかったため、利益が出た年は含み損を確定させて損益を圧縮するという方法が節税方法のひとつとして在りましたが、繰越控除ができるようになったことで税務上の調整をしやすくなるでしょう。
では、「FXや株式等と同じような扱いになったから、それらの損益と仮想通貨取引で生じた損益と通算できるのではないか?」と考えるかもしれませんが、現時点ではその可能性は低いと考えるのが安全です。
現在の税制では、分離課税であっても、所得の種類ごとに損益通算の範囲が厳密に区切られています。
たとえば、株式取引で生じた損益は、FX(先物取引)や不動産による所得などとは通算できません。
たとえ分離課税になったとしても、「仮想通貨は仮想通貨、株式は株式」という形で別の区分として扱われる可能性が高いと考えられます。
交換業者の報告書提出による影響
分離課税や繰越控除といった制度は、いずれも申告を前提として、所得や損失を正確に把握できることが制度の前提となります。
そのため、取引内容等一定の情報が把握できる仕組みが必要になり、令和8年度の税制改正大綱においても交換業者が報告書を税務署へ提出する制度が明記されています。
分離課税制度実現に向けて、今後はより適正な税務申告が求められる状況が考えられるため、Gtaxのように正確な損益計算ができるツールの必要性も高まってくるでしょう。
現物取引とデリバティブ取引の間でも通算できない?
さらに注意が必要なのが、仮想通貨の中でも取引形態によって所得区分が分かれる可能性です。
税制改正大綱の流れを見る限り、「現物取引による売却益」と「デリバティブ取引(先物・証拠金取引など)による損益」は同じ分離課税であっても、別の所得区分として整理される可能性があります。
仮に次のような整理がされた場合を考えてみましょう。
現物取引の利益は「譲渡所得(分離課税)」、デリバティブ取引の損益は「先物取引に係る雑所得等(分離課税)」と区分された場合、所得区分が異なるため、原則として損益通算はできません。
たとえば、現物取引で50万円の利益が出て、同じ年にデリバティブ取引で50万円の損失が出たとしても、税務上は相殺されず、現物取引の50万円に対して課税される可能性があります。
「分離課税だから全部通算できる」と考えるのではなく、損益がどの所得に該当するのかをきちんと理解しておく必要があると思われます。
出国税の対象になる可能性も考えられる
仮想通貨は現在、国外転出時課税(出国税)の対象とはされていませんが、今後、暗号資産が金融商品取引法の下で金融商品として整理され、あわせて税法上の位置付けが見直される場合には、国外転出時に含み益が課税対象となる制度が検討される可能性も理論上は考えられます。
株式を例にすると、一定額以上の株式等を保有したまま国外転出する場合、その株式は出国時に「譲渡したもの」とみなされ、実際には売却していなくても、含み益に対して課税が行われます。
これは、株式が金融商品取引法および税法上の「金融商品」として明確に位置付けられているためです。
仮想通貨について出国税の適用が議論されるかどうかは、金融商品としての法的位置付けと、それに対応する税法改正が行われるかに大きく左右されることになるため、特に注意が必要な点であると考えられます。
今後のために今からすべき準備
令和8年度税制改正大綱は、仮想通貨の税制が大きく変わる可能性を示していますが、実際の制度がどのような形で施行されるかは未だ不明のままです。
しかし、「制度が確定してから動く」のではなく、制度が変わっても慌てずに対応できるように今のうちから準備を進めておきましょう。
具体的にはまず、取引履歴をできるだけ整理・保存しておくことが挙げられます。
売買による取引と、報酬として仮想通貨を受け取る取引が混在している場合には、後から区別できるよう管理しておくことが望ましいでしょう。
また、将来的に仮想通貨にも特定口座のような仕組みが導入される可能性を見据え、一般的な投資信託や株式の特定口座制度について理解を深めておくことも有効です。
源泉徴収や年間取引報告書がどのような役割を果たしているのかを知っておけば、仮想通貨に類似の制度が導入された際にも、制度の全体像をスムーズに把握できます。
さらに、取引環境の整備や規制の見直しが進む過程で、海外取引所のサービス内容が変更される可能性も否定できません。
税務上、過去の取引履歴を提示できないことは大きなリスクとなるため、現在利用している海外取引所やDeFiの取引履歴は、今のうちに保存しておくことが重要です。
令和8年度税制改正大綱では、仮想通貨を資産形成に資する金融商品として位置付け、その一部について分離課税と繰越控除を認める方向性が示された一方、具体的な適用範囲や申告実務については、まだ確定していない部分も多く残されています。
法令や通達の動きを注視しながら、今できる準備はできる限り進めていくことをおすすめします。
【PR】Gtaxでは年末までのキャンペーン実施中!
現在Gtaxでは2025年最後のキャンペーンとして、「駆け込み節税応援キャンペーン」を12月31日まで実施しています。
下記クーポンコードを有料プランご契約時に入力すると、5%の割引が適用となります。
クーポンコード: YEAR25END
個人の確定申告は12月31日までに生じた所得が対象となるため、利益がある状況からあえて含み損を確定させて損益を圧縮するといった税金対策もまだ活用できます。
また、ふるさと納税など節税に役立つものも年末までが期限となりますので、今のうちに一度正確な損益を計算し、対策を進めていきましょう!
企業名: 株式会社Gtax
設立: 2025年10月1日
代表者名:岡田 佳祐
運営サービス:Gtax、Guardian
事業概要:暗号資産の損益計算サービス『Gtax』の開発、暗号資産にまつわる確定申告サポート『Guardian』の運営など
確定申告特集
【確定申告特集1】知っておきたい仮想通貨にかかる税金を税理士が解説
【確定申告特集2】課税の対象となる利益はいつ発生する?損益発生のタイミングについて
【確定申告特集3】仮想通貨の損益計算 移動平均法・総平均法について解説



はじめての仮想通貨
TOP
新着一覧
チャート
学習
WebX





















































