国際通貨研究所が「仮想通貨取引のマネロン対策」の現状レポートを公開|国際的な議論主導に期待

国際通貨研究所:マネロンレポート
「国際通貨研究所」経済調査部主任研究員の志波和幸氏が、仮想通貨取引のマネーロンダリング対策の現状に関するレポートを公開した。

国際通貨研究所:マネロンレポート

公益財団法人「国際通貨研究所」経済調査部主任研究員の志波和幸氏が、仮想通貨取引のマネーロンダリング対策の現状に関するレポートを公開した。

「国際通貨研究所」は、国際金融の諸問題につき研究、調査を行う他、年1回程度の頻度で国際シンポジウムを開催しているシンクタンクだ。

仮想通貨市場の現状について

まず、志波氏はレポート冒頭で、仮想通貨市場の現状について、「2018年初のバブル崩壊を経て急速に冷え込んだ。しかし、未だ一定の規模を有しているうえ、その匿名性から仮想通貨がマネーロンダリングに活用される事象が目立ってきた。」と述べ、国内外のマネーロンダリング対策の変遷について、見解を述べている。

また、2017年に発生した仮想通貨バブル(価格高騰)の理由としては、以下のように分析。2018年の価格急落要因についても考察している。

世界的な金融緩和の継続に加え、国際的にブロックチェーン技術の可能性が注目されたことや、個人が投機目的で購入する事例が増加したことが(高騰要因として)挙げられる。

特にわが国では、2017年4月1日に施行された「改正資金決済に関する法律(通称「仮想通貨法」)」にて世界で初めて仮想通貨が法的に定義され、メディアがこぞってその特集を組んだこともあり、一時世界全体のビットコインの1日当りの取引額の70%が日本円で決済されるなど、仮想通貨取引ブームが到来した。

誕生当初、一部ギーク層(仮想通貨オタク)の間で細々と取引されるに過ぎなかったビットコインが浸透した理由としては、

国際金融市場における、キプロス危機やギリシャ危機での預金封鎖の対抗手段として国民が逃避先にビットコインを使用したことや、資本規制がある中国で人民元を他の法定通貨に交換する際、ビットコインを介すると無制限にできたことから、その存在が少しずつ市井に広まった。

と指摘。

発展途上国が、通貨不安などの経済危機などに陥った際に、避難通貨として需要が高まると言及している。

デジタル・ゴールドと呼称されることもあるビットコインであるが、インフレ通貨である法定通貨とは異なり、発行上限からデフレ通貨との見方もある。過去の国際金融市場では、リーマン・ショックの時期に「金(ゴールド)」価格の暴騰が起こったこともある。

現在、政情不安が燻っている英EU離脱問題を受けた「ハードブレグジット(合意なき離脱)」が発生した場合、自国通貨の避難先として、「資産の移転」という観点からも関心が集まる可能性は考えられる。

国内外のマネーロンダリング対策の変遷

同氏は、マネーロンダリングの定義について

麻薬の違法取引や犯罪にからんで得た不正資金の出所や流れを偽装する目的で、金融機関口座に送金を繰り返すなどして、資金を「洗浄」することである。

と説明。

仮想通貨を使用した犯罪規模について、米データセキュリティ会社Ciphertraceが2018年10月に発表したレポートによると、2009年1月から2018年9月にかけてビットコインを介した犯罪関連の送金額は判明分だけで380,155BTC(現在の時価で約1,500億円相当)に。コインチェックハッキング事件など、仮想通貨の流出事件における2018年の被害総額は10億ドル(約1,100億円)を超えるという。

なお、警察庁の「平成29年度犯罪収益移転防止に関する年次報告書」では、2017年4~12月に仮想通貨交換業者が国に届け出て受理された「疑わしい取引」が669件あったと報告されている。

この点について、国際通貨研究所の志波氏は、

かねてより組織犯罪が国際社会の脅威となっており、その犯罪収益はさらなる組織犯罪のために利用されうることから、組織犯罪防止のため各国がマネーロンダリング対策を取っている。

と指摘。

今秋に対日審査を控える「FATF」について、

その国際協力・協調推進のための政府間機関として、1989年に「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)」が設立された。

設立当初は麻薬犯罪に関する資金洗浄防止を目的とした金融制度の構築を主な目的としていたが、2001年9月の米国同時多発テロ事件発生以降は、テロ組織への資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも取り組んでいる。

と解説している。

2019年10月-11月頃を予定は、2008年以来となる「FATFの対日審査」を控えており、銀行や証券業界のほか仮想通貨業者も大きな焦点になり、各国で対応が急務とされる。日本の金融業界が、2008年同様の低評価を受けると、国際取引にも影響を及ぼすリスクもあることから、関係者は戦々恐々としているとされる。

FATFとは、金融活動作業部会のことで、マネー・ロンダリング対策における国際協調を推進するため設立された政府間機関。仮想通貨も監視対象に含まれる。

前回の調査では、銀行を含む金融機関全体のAML/CFTで、49項目中25項目で要改善(不備10項目、一部履行15項目)という厳しい評価を受けるなど、惨憺たる結果(27ヵ国中18位)に終わっている。

FATF及びG20は、世界各国で仮想通貨の大規模ハッキングによる不正流出が相次いだことで、マネロン後に犯罪資金に使用されるおそれが出てきたことを受け、仮想通貨取引の規制強化に向けた取り組みを次々と発表した。

仮想通貨がマネロンに利用される理由

なお、仮想通貨がマネロンに悪用される理由として、仮想通貨特有の匿名性の高さと利便性があると指摘。以下のように解説している。

ブロックチェーン上に「送信元アドレス(銀行における「預金口座」に相当するもの)から送信先アドレスにいくら移動したのか」といった取引データが記録されるため、第三者が資金の流れを把握することは可能だが、アドレスの所有者が誰なのかに関する情報は、ブロックチェーン上に記録されていない。

現金と比較して、仮想通貨は国境を超えた移動が電子的に短時間で可能であるという利便性がある。

レポートの結びでは、「2019年は日本がG20議長国であることで、より模範的な立場となる」と指摘。「世界で初めて仮想通貨に関する法律を制定した国として、日本の当局と業界団体が二人三脚で規制強化に取り組み、国際的な議論を主導することに期待がかかる。」とした。

FATFの対日審査を無事通過する事が出来れば、健全な市場に向けて大きく前進することになり、国際的な日本市場の存在感を示すことになるだろう。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

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