- ビットコインETFの重要性と専門家の意見
- ウィンクルボス兄弟が申請したETFは2度目の非承認となったが、現在の状況を専門家はどの様に見ているのか? また機関投資家だけでなく、一般投資家への影響はどうなるか?
- ETFとは
- Exchange Traded Fund (上場投資信託)の略でインデックスファンドの一種。 日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等に連動する運用成果を目指し、東証などの金融商品取引所に上場している。株と投資信託、両方の特性を兼ね揃えた金融商品のこと。
7月24日、米国証券取引委員会(SEC)は、Direxion Investments投資会社から提出された5つのETF申請について、「もうしばらく検討する時間が必要だ」とし、可否判断の延期を発表しました。
また、7月27日には、SECがウィンクルボス兄弟の「ビットコインETF」申請を取り下げ、ビットコイン価格の急落を招きました。ビットコインETFに関するニュースは、最近のビットコイン相場と密に連動しており、ETF上場に対して市場の関心が高まっています。
そこで、「ビットコインETFの上場が、なぜ重要とされているのか。」を考察します。
「ビットコインETF」は、なぜ重要なのか
株式市場では、日銀による巨額のETF買い入れ(年6兆円ペース)が、安倍政権によるアベノミクス(金融緩和政策)の一環として行われています。通常のETFは、複数の銘柄を組み合わせることで、日経平均株価やS&Pなどの指数に連動する運用成績を目指します。
従って、投資家は少額の元手からでもETFを通じて、低コストで世界中の企業に分散投資することができます。特定の銘柄ではなく、市場そのものに投資していると考えて差し支えありません。
一方、ビットコインETFに含まれるのはビットコインだけで、アルトコインが含まれているわけではありません。
それでも、ビットコインETFが上場することのメリットは数多くあります。
機関投資家が参入するために
2017年末から2018年初頭にかけて、多くの個人投資家が参入した結果、仮想通貨市場が大幅に高騰しましたが、次に高騰が起こるとすれば、機関投資家の参入によるものになるという見方が濃厚です。
ただし、莫大な資本力を有する機関投資家が仮想通貨市場に参入するためには、現時点でさまざまな参入障壁があり、国際的な規制の整備や、ビットコインを含む資産クラスの定義の曖昧さや、保有リスクなどが考えられます。
現時点では、米国内でのビットコインの明確な定義がなく、ビットコイン取引に関する法規制も厳密ではありません。
そのため、金融市場に絶大な影響力を持つ機関投資家は、市場参入前に、ビットコインに対する規制の動向を慎重に見極める必要があります。
一方、ビットコインがETFとして認められた場合、ビットコインETFは「証券」に分類され、指数連動の証券に投資が行うことができ、保有リスクも解消されます。
したがって、ビットコインETFが上場することで、機関投資家はすでに市場に存在する「金や原油のETF」と同様の枠組みで、ビットコインを扱うことができるようになり、参入障壁は大幅に下がると言えます。
「金ETF」上場で金価格が急騰した歴史も
過去には、金(ゴールド)のETF上場から、金価格が急騰した歴史があります。
2003年の金ETF開始以降、金価格は長期間にわたって上昇し、2011年にはETFから+478%の高騰を記録しました。この背景には、機関投資家の参入があります。
金価格は株価との相関が低く(逆相関するケースが多い)、分散投資を行う機関投資家にとって魅力的な資産クラスでしたが、年金基金などの保守的な機関投資家は、金を投機的な「商品」とみなし、投資を敬遠していました。
しかし、ETFの上場によって金が金ETFという「証券」となったことで、機関投資家が多額の資金を投資することになりました。
このような金ETFの歴史を踏まえると、「デジタルゴールド」であるビットコインのETF上場によってビットコイン価格が高騰する可能性は十分に考えられます。
仮想通貨情報サイトTotalCryptoからは、ビットコインETFが上場した場合500%以上の価格上昇の可能性を示唆するレポートも発表されています。
個人投資家にとっての様々なメリット
個人投資家が直接ビットコインに投資をする場合、ビットコインの価格変動リスクだけではなく、大きな管理リスクも抱えることになります。
個人がビットコインを保管する場合、秘密鍵のパスワードを紛失するなどしてビットコインが取り出せなくなるケース(セルフGoX)が多く見られる上、ウォレットのハッキングリスクなども同時に抱えることになります。
その点、ビットコインETFでは、信用力の高い取引所にビットコインの管理を委ねることで、上記で述べた通り、多額の資産を扱う機関投資家だけでなく、一般投資家も個人の管理リスクを軽減することができ、分散投資の観点からも、より安定した運用を行うことができます。
さらに「CBOEによるETF」は、一口25BTC(約2250万円)と高額で、機関投資家やヘッジファンド、ファミリー・オフィス、証券会社、大口投資家などの富裕層をターゲットにしており、保険会社によって1.25億ドル(約140億円)の保険が適用される設計になっているとされています。
さらに、ビットコイン投資に対する課税の条件が変化する可能性もあります。
ここではわかりやすい様に、日本国居住者に関して例をあげようと思います。
現状では、ビットコイン投資で得た利益は「雑所得」として計上され、利益に対して最大で約55%もの税金を納めなければなりません。
一方、ビットコインETFは「上場投資信託」である点から証券として定義される可能性が高く、一律で約20%の課税が適用されることになります。
このような利点から、ビットコインETFに対する個人投資家の期待は、急速に高まる可能性があり、米SECのウェブサイト上で実施しているETFに関する世論調査でも、97%のコメントが賛成するものになっています。
ビットコインETFは必要か?専門家の意見は分かれる
一方で、ビットコインETFの必要性については、専門家の間でも意見が分かれています。
Netcoins創業者|ETFは「興味深いアイディア」、BTC価格は短期的に上昇か
Netcoinsの創業者であるMichael Vogel氏(以下、Vogel氏)は、ビットコインETFがビットコインの長期的な成功に影響を与えるものではないと考えています。
一方で、Vogel氏は、ビットコインETFの可能性を「興味深いアイディア」だと語っています。
同氏は、ビットコインETFがビットコイン価格に与える影響を次のように説明しています。
ETF上場がビットコイン価格に影響を及ぼすのは、取引ボリュームが拡大するからという理由だけではない。
一部のビットコインがETF企業によって半永久的に保有されることで、市場流通量が減少するという理由も含まれるからだ。
Trezor創業者|ETFは全く必要ないもの、BTC価格は短期的に上昇か
Trezor創業者のAlena Vranova氏(以下、Vranova氏)はビットコインにとってETFは全く必要ないものだと考えています。
一方で、ビットコインETFの上場は、新規投資家が参入するための良い機会になるとも言います。
従ってVranova氏は、Vogel氏と同様に、短期的にはビットコイン価格が上昇するだろうと考えているようです。
CryptoCrestパートナー|ビットコインETF承認自体が難しい
CryptoCrestのパートナーであるDana Coe氏(以下、Coe氏)は、ビットコインETFの必要性以前に、ETFとして認可されることが困難であると指摘しています。
Coe氏は、既存のETFはSECなどの機関に規制された資産クラスを扱っているのに対して、仮想通貨は規制がなされていないと言います。
まとめ
ビットコインETFの上場が承認されれば、ビットコイン市場の透明性及び信頼性が向上し、新たな資金が流れ込むことは、ほぼ確実と言えるでしょう。
ビットコインETFは、機関投資家と個人投資家双方にとって一定のメリットがありますが、どこの資産運用会社がスポンサードしているか、どのような商品設計になっているかが重要であり、「ビットコインの成功自体には関係のないもの」、「ビットコインETFの認可は困難」と考える専門家も存在しています。
今後、本命視されているCBOEの申請に対するSECの回答が控えており、市場はSECの決定に注目しています。
可否の判断については、「最短で8月上旬」という見解もありますが、サーベイランス(調査監視)の整備や、G20による国際規制策定との兼ね合いが前提条件にあり、SEC側が万全を期した場合、ビットコインETFの実現が2019年以降にずれ込む可能性も十分考えられます。
過度な期待は”失望売り”につながることから、短絡的な考えはマーケットも望んでいません。CBOEのビットコインETFの商品設計が過去最高に優れているのは間違いないですが、長い目で見て支援していく必要があると言えるでしょう。