- マイニング最大手ビットメイン社の動向
- プレIPOラウンドでソフトバンク等が出資、フェイスブックを超える史上最大の株式市場上場を見込むビットメイン(推定時価総額1.6兆円)の資料にて、今年3月までに5万BTC近くを売却、BCH保有割合の増加も明らかに。
- ビットコインキャッシュとは
2017年8月1日にビットコインから分裂した通貨。
ビットコインのスケーラビリティ問題を受け、ブロックサイズを1MB→最大8MBに引き上げるハードフォークを行なった。
マイニング最大手ビットメイン社の動向
マイニングハードウェア製造大手であり、世界最大のマイニング会社、ビットメイン社が、プレIPOラウンドのために用意したプレゼンテーション資料で、同社がビットコイン(BTC)の大半を売却し、ビットコインキャッシュ(BCH)を大量購入していたことが判明しました。
今年第4四半期もしくは、2019年第1四半期に、香港証券取引所への上場を予定しているビットメイン社は、つい先日ソフトバンクグループやTencent社が参加したプレIPOラウンドで、約10億ドル(約1100億円)を調達しています。
7月23日時点におけるビットメイン社の企業評価額は150億ドル(約1兆6500万円)で、上場に伴う資金調達の目標額は約180億ドル(約1兆9800億円)と報じられています。
もし、この目標額が達成された場合、フェイスブック社のIPOを凌ぐ歴史上最大のIPOとなると言われているため、今回明らかになった、BTCからBCH保有へと舵をきったビットメイン社の動きが、仮想通貨市場でどのような意味を持つことになるのか、注目を集めています。
上図は、カナダに本拠を置く、ブロックチェーン技術開発企業のBlockstream社、CTO(最高セキュリティ責任者)のSamson Mow氏が、ツイッター上に投稿したもので、すでに140を超えるコメントが寄せられ、仮想通貨市場の関心度の高さが伺えます。
上図では、左から順に、通貨の保有量、購入時の平均価格、総額(米ドル建)を表していますが、BTCで見ると、2016年に71,560BTCから、2018年3月には、22,082BTCへと5万BTC近くも保有量が減っており、代わりにBCHの保有用が同3月には100万BCHを超えているとされています。
CoinMarketCap社のデータによりますと、世界のBCH流通総量は、17,288,638BCHであり、ビットメイン社の保有量は、実にその5%を占める割合になります。
ビットメインとBCH
ビットメイン社とBCHの関係は大変深く、BCHがBTCからフォークして誕生した背景にも、同社CEOのJihan Wu氏が大きな影響を及ぼしており、BCH誕生後も、Wu氏の発言がBCHの価格に大きな影響を与えてきました。
また、ビットメイン社の子会社で、世界のマイニングシェアの約14%を占めるAntPool社が、今年4月に、マイニングで獲得したBCH手数料の12%をバーン(焼却)しているというニュースに、市場は反応し、BCH価格は約50%上昇する結果となりました。
直近では、BCHブロックチェーンネットワーク上で構築される、デジタル広告プラットフォームのTribeOSに、ビットメイン社が300万ドル(約3億3千万円)を出資したことが報道されています。
ビットメイン社がBCHを支援している姿勢は、これらの事実からも明らかです。
前出のSamson Mow氏のツイッター上では、そのようなビットメイン社のBCH寄りの姿勢が、BCH批判へとも繋がり、ひいては同社のIPO自体を危ぶむ投稿さえもあります。
また、BTCのマイニングで既に大きな影響力を持つビットメイン社が、そのパワーを市場規模の小さいBCHへ振り向けることで、独占的な存在感を増す可能性に対して憂慮する声も聞かれます。
一方で、歴史的規模のIPOへの布石として、ビットメイン社は、同社のマイニング事業市場における独占的な立場への多くの批判に答えるかのように、7月下旬に、事業の透明性を高めるポリシーを公表しています。
仮想通貨コミュニティとの対話を高めようとする姿勢を見せ、仮想通貨エコシステム全体を益するために、中立性、公平性を大切にする旨が、公式ブログ上で表明されています。
ビットメイン社は、仮想通貨業界では、マイニング事業を通して、短期間に巨大な影響力を持つに至っていますが、同社がこの業界の枠を超えて、人工知能分野をはじめとする新事業へも触手を伸ばして始めてい事実を考慮に入れると、仮想通貨スペースでのBTCとBCHの保有配分は、同社にとっては、徐々にマイナーな問題になって行く可能性も十分考えられます。
ビットメイン社CEOのWu氏の頭の中には、IPO成功の先に、同社がこれまでに培ってきたASIC技術を中国の国家戦略の柱の一つである、人工知能(AI)の開発へと結びつける未来図が、すでに描かれているのかもしれません。