- 2018年のSECの動向
- SECの動向は、仮想通貨市場において非常に大きな影響力を持つ。2018年は、その中でも、特に証券問題等についての規制やビットコインETFの承認の是非といったテーマが注目された。本記事では、それらの2018年のSECの動きを総括していく。
重要なファンダメンタルとなるSECの動向
米国証券取引委員会(SEC)は、1929年に設立された、「投資家保護、公正かつ効率的な証券市場の維持、そして資本形成の促進」を担う連邦初の証券市場における規制機関だ。
証券取引の監督・監視を行うSECであるが、その動向は仮想通貨市場にも多大な影響力を持ち、仮想通貨の価格に大きく反映されるといったことも起きる。
例えば、「トークンが有価証券として規制対象になるのか」や「ビットコインETFの承認の可否」といった事柄に関する動向は、2018年の仮想通貨市場に多大な影響を与えてきており、投資家の最大の関心の一つでもある。
また、健全な市場の形成や市場へのさらなる資金流入、そしてマネーロンダリングなどの犯罪対策において適切な規制は不可欠であるとの見方が強い一方で、その舵の取り方次第ではイノベーションの妨げになる可能性もあることから非常に慎重な判断が必要とされる議題だ。
未だに、有価証券問題や仮想通貨ETFといった議題への結論としては不明確な点が多いものの、2018年において盛んに議論されたこともあり前進をしていることは確かだろう。
そのように非常に重要なファンダメンタルとなるSECの動向であるが、本記事では、それらを含めた2018年のSECの動向でも特に注目に値するであろうものを以下で時系列で総括していく。
4月 ビットコインは有価証券に該当しない
米下院歳出委員会前の4月の公聴会で、SEC委員長Jay Clayton氏はビットコインに関するSECの見解を明確にした。
以下がその内容である。
非常に複雑な領域だ。なぜなら、そこには様々なタイプの暗号資産が存在するからである。それらを二つの種類に分類すると、一つは純粋な交換の手段としてのものであるが、ビットコインはそれに該当するだろう。多くの人がそれは証券ではないとの見解を示している。 そして、もう一つが、金融プロジェクトに用いられるものだ。それらについては、私の知る限りでは証券に該当しないものをほとんど知らない。そのようなものについては我々は規制を実施する必要がある。また、我々の規制は開示に基づくものであり、対象者は必要に応じて我々に情報を提供する必要がある。
つまり、SECの見解としては、ビットコインは有価証券(セキュリティ)とは認識されていないことが伺えるだろう。
6月 イーサリアムの有価証券問題に関する見解
時価総額2位の仮想通貨であったイーサリアムも、有価証券には該当しないとの見解がSECにより示された。
コーポレートファイナンス部門ディレクターのWilliam Hinman氏は、「イーサーはイーサリアムプラットフォーム上での機能を目的とされたものであり、株式や債券と同様の規制下にはおかれない」と公式に発言した。
なぜ、その発言が重要視されるかというと、もしもイーサーが有価証券として扱われる場合、それは証券法に則った形で扱われなければならないからである。
そうなると、認可を受けていない既存の仮想通貨取引所では取り扱いが出来なくなってしまう。
しかし、そのような見解が示されたものの、9月にはSEC委員長Clayton氏が、「職員の出した声明は、彼らの個人的見解を示したものであり、それ自体に法的な拘束力はなく、強制力や義務が発生するものではない」との主張をSECのウェブサイトを通じ示しており、イーサリアムの「有価証券非該当」の見解に撤回の可能性が浮上した。
7月 ウィンクルボス兄弟申請のETFの否決
7月23日、SECは、ウィンクルボス兄弟による2度目のビットコインETFの申請を否決した。
SECは、ウィンクルボス兄弟の「ビットコイン市場は操作に対し十分な耐性を持っている」との主張を、「正確ではない」との理由等から退けた。
その結果は仮想通貨市場に影響を与え、ビットコイン価格は3時間の間に400ドル以上の下落、そしてアルトコイン価格もそれに追従する形で大きな下落を記録した。
8月 VanEck版CboeビットコインETFの審査結果延期
8月8日、SECは、VanEck・SolidXによるCboe BZX取引所への上場にむけたビットコインETFの承認の判断を見送ることを公表した。
また、SECは同時期に、ProShares、Direxion、そしてGraniteSharesからの合計9つのビットコインETFの申請を退けている。
現在、申請の可否の結果は、延長上限である240日後の2019年2月27日まで延期されることが公表されている。
9月 プロジェクトを実行しないICOに対し本質的な取り締まりを行う方針
SECのStephanie Avakian氏は、9月20日、ICOの今後の規制について触れ、SECは今後ICOを通じた非行や詐欺行為などに対し、より本質的な措置をとっていく方針を示した。
ICOがハイリスクである原因としては、明らかに詐欺のものや不備のあるビジネスモデルを有している傾向、実際にプロダクトの無い状態でプレセールが実施されること、などを挙げている。
一方で、Avarkian氏によれば、SECは詐欺でないICOの扱い方を決めようと尽力しているとし、法的に投資家保護を徹底しながら、ICOという新たな資金調達方法を促進していきたいとしている。
10月 SECが仮想通貨も対象としたフィンテック窓口部門を設立
SECは10月19日、ICOプロジェクト等のフィンテック企業がプロダクトにおける法的意味をより簡易にさせることを可能にするため、『イノベーションと金融技術の戦略中枢(FinHub)』を開設すると発表した。
Finhubは、「SECに関わるDLT技術(デジタルアセット含み)や自動投資アドバイス、デジタル市場金融業務やAI等のフィンテック関連案件への窓口となる」とされている。
このFinHubの窓口により、フィンテック企業はSECのスタッフと直接コミュニケーションが取れるという。
例えば、SECのスタッフに明確な規制に関して問い合わせすることができたり、またはSECが米国内外の規制局と連携するといった特徴が見受けられる。
11月 SECが2つの仮想通貨を未登録有価証券と判断
11月17日、SECは、2つのICOプロジェクト(AirfoxとParagon)に対する告訴にて、それらのトークンを未登録証券とみなし、民事調停(和解)を行ったことをプレスリリースにて明らかにした。
その案件について、SEC監視課課長Stephanie Avakian氏は以下のように述べている。
我々SECは、ICOを通して証券を発行する企業は既存の証券登録ルールと関連法律を遵守しなければならないことを明確にしている。今回の判断は、類似したビジネスを行おうとする企業に、我々が連邦の証券法に違反するデジタル・アセットに対する取り締まりを継続させる事例となる。
また、SECは同月9日には、未登録証券取引所を運営した疑いで、分散型仮想通貨取引所EtherDeltaの創立者Zachary Coburn氏を起訴し、総額約4400万円の罰金を課している。
それに加えて、6日には、SECによる正式なICOガイダンスの公開を予定していることを、コーポレートファイナンス部門ディレクターWilliam氏が発言している。
それらの動向からは、SECがICOトークンの有価有価証券問題に対して本腰で取り掛かり始めた様子が伺えるだろう。
12月 SECの仮想通貨専門部門責任者「有価証券の登録免除申請」に関して初言及
12月14日、SECの仮想通貨専門シニア・アドバイザー(仮想通貨専門部門の責任者)を務めるValerie A.Szczepanik氏は、ICOトークンに関して、『ノー・アクション通知』という認定状を得ることにより、SECの証券登録から免除されることは可能と言及した。
ノー・アクション通知とは、Szczepanik氏の説明によると、個人や企業が何を進めたいかに関して具体的に記述した上で、SEC側がそれを受け入れ、「取り締まりの行動を薦めない」という免除を指す。
また、同氏は、米国が規制面で遅れていると指摘に対し、SECの主なミッションは投資家を保護することであり、イノベーションを阻害することではないと述べ、「むしろ、米国の市場が巨大であるため、多くの長期的かつ真っ当なICOは米国市場を対象とする可能性は高い」と、積極的な姿勢を見せた。
結論
SECが、米国のみでなく世界全体の仮想通貨産業において重要な役割を担っていることは明らかだろう。
そして、SECの見解や規制が仮想通貨の価格に影響を与えることもこれまでの事例から明確である。
また、2019年の直近での注目すべき動向としては、2月27日のVanEck版ビットコインETFの承認結果が挙げられ、それにより仮想通貨市場も大きく動く可能性がある。
その他にも規制関連の動向など、今後もそれらに注意を注いでいくべきだろう。
2019年は仮想通貨産業においてどのような年になるのか。
SECの動向は、その方向を決める大きな要素の1つである。
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