- マネックス:コインチェックとの連携強化
- マネックス証券の新社長に就任した清明祐子氏は、「第二の創業」の新機軸として、「クリプトアセット(暗号資産)事業」を据え、マネックスグループとコインチェックの結びつきを一層強化する方針を示した。その一環とし仮想通貨の販売を検討しているという。
マネックスの巻き返し
今までのやりかたのままでは、差を縮めることはできない。
4月1日付で国内5大インターネット専業証券会社の一つ、マネックス証券の社長に就任した、清明祐子氏(41)は、ブルームバーグ紙とのインタビューで語った。
1999年に創業し、ゲームファンドの開発・販売や貸株サービスなど 日本初のサービスを提供し、一時は業界最大のシェアを誇っていたマネックス証券だが、近年は、後発のSBI証券や楽天証券等の勢いに押され、シェア争いに苦戦している。
さらに、総合証券会社最大手である野村證券を傘下に持つ野村ホールディングスが、メッセンジャーアプリ大手のLINEと共同で「LINE証券」を設立する準備も着々と進んでおり、ネット証券業界の競争はさらに激しくなることも予想される。
ブルームバーグの報道によると、そんな厳しい状況の打開策の一つとして、清明氏は、仮想通貨をマネックス証券の個人向け投資商品に加えることを検討しているようだ。
仮想通貨業界に、マネックスグループの名を知らしめたのは、2018年1月のNEMハッキング事件により580億円に上る損失を出した仮想通貨取引所コインチェックの買収だった。
マネックスグループを率いる松本大氏は、買収にあたり、仮想通貨が証券や債券、コモディティ商品と同様、新しい重要な資産クラスとなると信じていると、その可能性を高く評価する発言を行っていた。
そして、仮想通貨業界をリードしてきたコインチェックの「顧客ベース、ブランド力、規模」 を評価し、全面的に支援することで、今年1月、同取引所は金融庁から「仮想通貨交換業者」として認可登録を完了している。
また、マネックスグループは、「第二の創業」の新機軸として、「クリプトアセット(暗号資産)事業」を据え、松本氏自身は、コインチェックの会長に就任、コインチェック創業メンバーである和田晃一良氏と大塚雄介氏がマネックスグループの執行役員を兼務するという人事が発表されており、マネックスグループとコインチェックの結びつきを一層強化する布石が打たれている。
今後の事業展開
松本氏の後を継ぎ、新社長に就任した清明氏の課題のひとつは、このようなマネックスグループの事業展開構想を実践にうつすことだろう。
コインチェックとの連携により、マネックス証券でビットコインをはじめとする仮想通貨を販売。また、同時にコインチェックの顧客へも、マネックス証券の商品を紹介するなど、相乗効果を狙うという。
コインチェックとマネックス証券の顧客層は、それぞれ20代~30代と40代~50代と異なるため、顧客に新たな選択肢を提示するという戦略により事業の成長を見込み、業界シェアの巻き返しを図るようだ。
しかし、シェア争いの競合相手となるネット証券業界一位のSBI証券を傘下にもつSBIホールディングスは、仮想通貨事業ではすでに優位な地位を築き上げている。
また、業界二位の楽天証券にしても、親会社である楽天グループは、仮想通貨交換業を運営する楽天ウォレット株式会社が4月15日より新規口座開設の申込受付を開始した。
楽天銀行の口座保有者は、簡易に仮想通貨取引口座が開設が可能になるなど、仮想通貨業界におけるそれぞれの競争も一層熾烈になってきているようだ。
このような、ネット証券などの既存の金融機関が仮想通貨投資とのつながりを強化する動きは、仮想通貨市場の成熟を促す意味で、大変歓迎されるものだといえるだろう。今後の展開がますます注目される。