仮想通貨市況
10日の日経平均株価は、新型コロナウイルスの感染拡大や大幅原油安に伴う投資家心理の悪化を背景にパニック売りが継続。一時700円超下落し、19,000円を割り込んだ。
米国市場では、寄り付きからダウ平均株価に売り注文が殺到。過去最大の前日比-2,000ドルを記録、米国大型株の動向を表す株価指数「S&P500」の下落が前日比-7%に達したことで日本時間22時35分にサーキット・ブレイカーが発動、売買停止措置が執行された。2013年の導入以降、米株式市場でのサーキット・ブレイカー発動は初。
同制度は、株式市場や先物取引において相場が急変動を起こした際、強制的に取引を止めることで、投資家のパニックを抑制するための措置を採るもの。国内では、米国同時多発テロ発生時のほか、リーマン・ショック、東日本大震災などの影響で、先物市場にてサーキットブレイカーが発動したことがある。
投資家の恐怖感情を示すVIX指数も、08-09年のリーマン・ショックに次ぐ2番目の歴史的水準に達したことが見て取れる。
The $VIX reaching levels not seen since the 2008 financial crisis. pic.twitter.com/t3dRViDAD9
— Crypto Rand (@crypto_rand) March 9, 2020
しかしその後、米トランプ政権による「給与税引き下げ」などの措置協議が伝わると、NYダウなど主要株価指数が急反発に転じた。売り過熱の反動もあり、ビットコイン(BTC)など仮想通貨市場を含め、相場の巻き戻しが起こっている。
このまま指数の大幅下落が続いた場合、日銀が大量保有する上場投資信託(ETF)や、巨額の運用資金を有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の評価損も危惧される。時価が簿価を平均で4割弱下回ると、日銀は債務超過に陥るとの指摘もあるからだ。
日銀は9日、金融市場の動揺を抑えるため、過去最大規模の1000億円余り買い入れたことを発表。金融政策決定会合で決定した追加緩和政策をさらに増額している。
安倍首相は、参議院予算委員会で「消費税率引き上げに伴う、個人消費の反動減」に言及したほか、新型コロナウイルスの感染拡大については、「足元では海外からの観光客減少に加え、工場の製造ラインを維持できるのかといった不安も拡大している。景気への影響に対し、26兆円規模の経済対策を着実に実行するとともに、世界経済の動向も十分に注視しながら、インパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」と述べている。
日銀の黒田東彦総裁は9日、参院予算委員会で、「投資家のセンチメントが非常に悪化している」と言及。「国内外の金融市場を注視し、適切に躊躇なく対応」することを明言している。
ビットコイン(BTC)市況
10日の仮想通貨ビットコイン(BTC)は、前日比0.83%安の81.9万円に。
金融市場の混乱を背景に、日足レベルの三尊ネックライン下抜けから落勢止まずの状況に陥っていたが、7700ドルの下値支持線で買い戻しも入ったことから、急激な下げは一服した。
不安定な国際金融市場の情勢から、依然として予断を許さぬ状況にあるなか、海外の著名トレーダーのTraderX0は、ビットコインの週足移動平均線について分析。
過去チャートからも、21週平均線(EMA)を下回った場合は弱気相場を鮮明にすると言及。200週平均線は絶好の買いの機会だとした。
なお、今回の相場急落には、株式市場暴落でリスク資産が投げ売られたことの連れ下げのほか、過去最大規模の被害をもたらした仮想通貨ポンジスキーム、PlusToken(プラストークン)が再び悪影響を及ぼしたとの見方もある。
エルゴ・リサーチは6日、PlusTokenが保有する仮想通貨のうち、13,000BTCがミキシングサービスへ動かされたことが発覚したことを報告した。
~13k in new PlusToken mixer deposits in last 24 hrs.
— Ergo ∴TxIDs Or It Didn't Happen∴ (@ErgoBTC) March 6, 2020
Almost all previous mixer deposit change has entered mixing, confirming my theory.
Distributions still on/off. Much slower than September and November.
New report and full sit rep imminent. pic.twitter.com/vwrBuVk272
売却されたかどうかは定かではないものの、市場警戒要因にはなり得る。不正流出した仮想通貨はマーキングされ、取引所に受け入れ拒否されるため、ミキシングサービスは、資金洗浄手段の一環として用いられることがある。
PlusTokenは、18年半ばに開始された高収益を謳った中国のウォレットサービスで、会員は紹介者数に応じて報酬を受け取ることができる、いわゆるネズミ講(出口詐欺)の仕組みになっていた。被害は、20万BTCを含む計29億ドルと報告されるなど、過去最大規模の仮想通貨詐欺被害と指摘される。
昨年8月にも、ビットコイン価格急落(前日比約6%安)の一因として、PlusTokenの首謀者がBTCを大量売却した疑いが持たれている。
採掘難易度上昇
なお、ビットコインのディフィカルティー(採掘難易度)は、約7%上昇した。
採掘難易度とは、ブロック生成の難易度の度合いを表すものだ。ビットコインは10分に1回ブロックが生成されるよう設計されており、マイナーの競争激化により生成速度が速まれば、難易度が上昇するように調整が行われる。
ハッシュレート(採掘速度)も1.2億TH/sと高水準を維持。ハッシュレート上昇は、採算が取れるマイニング参加者増加を示唆するものだ。ハッシュレートの低い小規模PoWチェーンは、悪意のある攻撃に対して脆弱であるものの、セキュリティ及びネットワークの堅牢性向上が見込めることから、ポジティブなサインとして捉えられる。
その一方、ビットコイン(BTC)半減期で、過去に起きたような価格上昇が見られなかった場合、大半のマイナーはマイニングオペレーションを停止し、採掘に使用するASICマシンの売上低下、堅牢性が重視される”BTCネットワーク”のセキュリティ低下など大きな影響を及ぼしかねない。
CoinPostに寄稿された、CoinGecko共同創業者による「ビットコイン半減期展望など 2020年10の予測」の見解にもあるように、マイナーには、ビットコイン価格を維持させるモチベーションがある。