リブラが変えるデジタル化の未来
新たに大幅な計画の変更で、異なるトークンモデルの発行を目指す仮想通貨リブラは、日経新聞も「デジタル通貨リブラが告げる夢の終わり」とのタイトルで記事(FT)を公開するなど、金融包摂を目指した世界通貨の構想は実現しなかったとの報道が相次いだ。
事業計画が変更された新生リブラは、単一の法定通貨に基づくステーブルコイン型に変更される。これも、より厳格に規制に準拠する点での変更となった。
一方で前向きな見方も出て来た。仮想通貨取引所バイナンスのリサーチ部門は、新生リブラに関するレポートで、「リブラは決済分野でのSpaceXのような存在になりえる」とコメント、信頼できる協会が発行するデジタル通貨の計画が動き始めたことに期待感を示した。
SpaceXは電気自動車テスラモーターズを立ち上げた著名起業家イーロン・マスクが設立した民間でロケットの開発、打ち上げを行っている企業のこと。
アメリカ政府が宇宙関連事業にかかるコストの多さから民間企業を利用する動きに乗り、それまで国が行う事業であることが常識だったロケット事業において、民間で成功を収めている数少ない革新的な企業だ。
リブラが決済分野でSpaceXが宇宙産業で成し遂げたことを為すとは、つまり、政府・国家が大半を占める分野(決済分野)に民間企業であるリブラが切り込むということを意味する。
決済システムは経済活動にとって欠かせないもので高いレベルが求められ、そのほとんどを各国の中央銀行を中心に作り上げてきた。その為、野望や革新といった言葉とはあまり縁がない分野となっている。
高い参入障壁で既に確立されたシステムの土台を揺るがすことがSpaceXが成し遂げたことであり、リブラもそれを実現する可能性があると見ている。
決済領域で、より自由度があるデジタル上の資産が信頼できる企業群から誕生することで、これまでの当たり前が変わる日も近いかもしれない。
仮想通貨業界の恩恵も大きい。USDTが中心のマーケット構造を覆す可能性があるからだ。複数通貨をペッグしたリブラ2.0が誕生すれば、リブラを中心としたシステム開発も多く出てくる可能性もある。
コロナで電子化への注目度が急速に高まる中で、リブラがどのようにシェアを獲得するか。これからの動向に注目したい。
参考:Binance