はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

FATFのトラベル・ルール導入、日本を含む仮想通貨送金がどう変わるのか

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨送金の新たなルール

金融活動作業部会(FATF)が昨年6月に発表した、仮想通貨事業に対する新しい基準、いわゆる「トラベル・ルール」への対応状況が審査される期日が、1カ月後に迫ってきた。

FATFトラベル・ルールとは、マネー・ロンダリング防止のための国内および国際電信送金に関するルールで、「仮想資産サービス・プロバイダー(VASP)」には、仮想通貨取引の際、送金者と受取人の情報を収集し、交換することが求められる。さらにその情報の正確性も保証しなくてはならない。

銀行などの伝統的な金融機関に課せられている電信送金の際の顧客確認基準が、仮想通貨関連企業にも適応されることになる。

VASPは、仮想通貨の交換、移転、保管、および発行や引受を行う事業者で、仮想通貨取引所やデジタルウォレットのプロバイダーなどが含まれる。

金融活動作業部会(FATF)の影響力

FATFは、資金洗浄対策やテロ資金対策などにおける国際的な協調指導、協力推進などを行う政府間機関。G7を含む36の国と地域、および2つの国際機関が参加している。

FATFが示すガイドラインや勧告自体には法的拘束力はないが、加盟国に対し相互審査を行い、資金洗浄やテロ資金供与対策におけるハイリスク・非協力国リストを公開するため、世界の金融ネットワークに対し、多大な影響力を持っている。

日本の場合、2018年2月、金融庁は独自のガイドラインを策定し、金融機関等の特定事業者に強い対応を求めた上で、昨年10月末から3週間にわたって行われた第4次対日相互審査に臨むなど、FATFへの対応は万全を期している。FATFの評価は、日本金融界の国際的な信用に関わることになるためだ。

トラベル・ルールで必要とされる情報

トラベル・ルールに準拠するため、1000ドル以上の取引を行う際に、VASPには、次のような情報を提出することが課される。

1.オリジネーター(仕向)の氏名
2.受取人(被仕向)の氏名
3.送金時のオリジネーターの口座番号(ウォレット等)
4.送金受け入れ時の受取人の口座番号(ウォレット等)
5.オリジネーターの国民識別番号、顧客識別番号、もしくはその他の固有のID番号
6.オリジネーターの生年月日と出生地

このような情報の提供は、VASPにとって、技術面はもとより、個人の金融プライバシーと自律性を重視する仮想通貨の理念にまで及ぶ大きな課題となっている。

技術面では、送金先のアドレスがVASPなのかプライベートウォレットなのかを判別することの難しさや、信頼できる顧客情報移転の方法などが指摘された。またトラベル・ルールに対応するインフラの開発運用には多大な費用がかかることが予想されることから、資金力の限られたスタートアップの存続を危ぶむ声も聞かれた。

なお、このルールはVASPに対するもので、個人間の取引には適用されない。

業界ワーキンググループの興隆

FATFの「仮想通貨監督ガイダンス」の発表を受け、昨年6月末には、仮想通貨関連事業者(VASP)が主体となり、FATF関係者も参加する「V20仮想通貨(暗号資産)サミット」が開催され、対応策を話し合う場が設けられた。

数多くの解決すべき課題が業界から指摘される一方で、1年後にはガイダンスへの対応状況の審査が行われるという限られた時間に対するFATF側からの譲歩はなく、仮想通貨業界は、準拠のための課題解決に向けて取り組むしかない状況となった。

そのため、仮想通貨業界ではFATF対応のための数々のワーキンググループが誕生することとなり、VASPの識別手段や顧客データ伝送ソリューションなどに取り組んでいる。

主なものには、Bitcoin Suisse の「OpenVASP」やCipherTrace の「 TRISA」があげられる。Sygna BridgeやNetki、Shyft Networkなどの企業も開発を行っている。 また、EllipticやCoinfirm、Chainalysisといった仮想通貨調査分析企業も同様な取り組みを行っているという。

仮想通貨取引所最大手のバイナンスは、昨年10月AML対策としてCoinfirmと提携し、さらに今年2月には、Shyft Networkの、トラベル・ルール対応の分散型インフラであるエンドツーエンドのデータ共有システムの導入を発表した。

直近では、VASP間の情報共有のための通信規格「IVMS101」が新たにリリースされている。 開発は、デジタル商工会議所(CDC)、グローバル・デジタル・ファイナンス(GDF)、国際デジタル資産交換業協会(IDAXA)などが参加する「VASP間メッセージング規格のためのジョイントワーキンググループ(IVMS)」が行った。 この規格を採用することで、トランザクションに合わせた安全なメッセージのやり取りが可能になり、コスト削減につながるという。

規制当局から「難題」を突きつけられた状況下で、「必要は発明の母」を体現している仮想通貨業界の対応には、勇気づけられる思いだ。

参考:Comply Advantage

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
09/17 水曜日
18:00
日本でステーブルコイン普及のハードルと可能性は?|WebX2025トークセッション
WebX2025で日本円建てステーブルコインの普及をめぐるパネルセッションが開催された。専門家がステーブルコインの課題やユースケース創出をめぐって徹底議論した。
17:43
メタプラネット、「Bitcoin.jp」ドメインを取得 「ビットコインジャパン」も設立
メタプラネットは「Bitcoin.jp」を戦略的に取得し、新会社を設立。国内ビットコイン事業の拡大と収益基盤強化を目指す。
15:15
ビットコイン・スタンダード著者、アルゼンチン・ミレイ政権の経済政策を「ポンジスキーム」と指摘
ビットコイン・スタンダード著者のサファディーン・アモス氏が、アルゼンチンのミレイ政権の経済政策を「国家規模のポンジスキーム」と痛烈に批判。キャリートレードによる金融システムの崩壊リスクと、自由主義政策の矛盾を解説した。
13:30
11年間休眠のビットコインクジラが1000BTC移動、170億円相当
11年以上休眠していたビットコインクジラが17日朝、1000BTCを4つの新しいアドレスに移動したことがオンチェーンデータで判明した。
11:40
コインベース、銀行の「預金流出」懸念を否定 ステーブルコイン規制めぐり反論
米仮想通貨取引所大手コインベースが銀行業界のステーブルコイン規制変更要求に対し、預金流出は根拠のない神話だとする反論文書を発表した。
10:45
米ビットコイン法案承認に向けた円卓会議、セイラー会長らが出席
米連邦議会でビットコイン法案の円卓会議が開催され、ストラテジーのマイケル・セイラー氏らが出席。この法案では米政府が合計で仮想通貨ビットコインを100万BTC購入することなどが提案されている。
10:02
米国と英国、仮想通貨市場などで連携強化を協議=報道
ベッセント米財務長官、リーブス英財務相が仮想通貨分野での連携強化を協議した。リップル社なども出席した会合で、英米テックブリッジ関連で話し合いが行われた。
09:40
バイナンス、米司法省との監視官解除交渉が進行中=報道 
世界最大の仮想通貨取引所バイナンスが43億ドルの和解合意で課された外部監視官の要件が解除される可能性について米司法省と協議していることが報じられた。BNBが上昇。
08:40
サークル、ハイパーリキッド上でUSDC展開へ HYPE投資も実施
大手ステーブルコイン発行企業のサークルがデリバティブ取引DEX最大手のハイパーリキッドでUSDCのネイティブサポートを開始すると発表した。
08:10
米SECの仮想通貨ETFの新たな上場基準、10月にも適用開始か
Bitwiseの最高投資責任者は、米SECの仮想通貨ETF上場の汎用的なルールが10月にも適用される可能性があると分析。それによって多くの仮想通貨ETFが誕生する可能性があると述べた。
07:55
イーサリアム、DAT企業からの恩恵で優位性維持か スタンダードチャータード分析
スタンダードチャータード銀行のジェフリー・ケンドリック氏が、デジタル資産トレジャリー企業の台頭においてイーサリアムがビットコインやソラナより有利になると分析した背景と、mNAV低下による業界への影響について解説。
07:00
NYSE上場のクリーンコア、1億ドージコインを追加取得し総保有量6億DOGEを突破
NYSE American上場企業のクリーンコアソリューションズが16日に1億枚のドージコインを追加取得し、公式ドージコイン・トレジャリーの総保有量が6億枚を超えたと発表した。
06:25
米国でXRPとドージコインETFが今週上場予定か、専門家の見解は
米国でXRPとドージコインのETFが今週木曜日に上場予定と報じられた。1940年投資会社法を活用した新しい仕組みで、ケイマン諸島子会社を通じた投資構造を採用。
05:55
トム・リー予測、FRB利下げでビットコインとイーサリアムが3ヶ月以内に大幅上昇か
ETHトレジャリー企業ビットマインの会長でもあるトム・リー氏がCNBCで、FRBの利下げによりビットコインとイーサリアムが今後3ヶ月で大幅な上昇を見せる可能性があると予測した背景と根拠を詳しく解説。
05:30
グーグル、AI決済でステーブルコイン対応
グーグルが16日に発表した新しいAI決済プロトコルは、ステーブルコイン対応を含む機能でAIエージェント間の自動決済を可能にする。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧