ステーブルコインの厳格な規制設定を呼びかけ
11日金曜日、欧州連合(EU)の会合が開かれ、暗号資産(仮想通貨)ステーブルコインはEU内で厳格に規制されるべきだとの共同声明が発表された。
ベルリンで開催された経済・金融分野を話し合う非公式の会合でドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ5か国の財務大臣が、欧州委員会に対し、ステーブルコインを規制する厳格なルールを設定するよう呼びかけている。
ロイター通信によると、共同声明は明確な規制が行われるまでは、ステーブルコインは欧州連合(EU)で運用すべきではないとした。
具体的には、ステーブルコインがEU圏内で運用される場合は、ユーロまたは他のEU諸国が発行する法定通貨に1対1の比率で固定することを求めている。また、そのステーブルコインの裏付けとなる資産を、EUが承認した金融機関に預ける必要があると要請した。
こうした規則は「金融市場の安定を保ち、消費者を保護し、EUの金融主権を守るため」に導入することが必要だという。
フランスのブルーノ・ル・メール財務相は、マネーロンダリングなどの違法行為に仮想通貨が悪用されるのを避けるため、EUは「非常に強力で明確な」ルールの作成を見据えているとも付け加えた。
仮想通貨全般についての規制草案を準備か
メール財務相の言葉にも示唆されているが、EUは数週間以内に、仮想通貨全般についての重要な規制草案を発表すると報道されている。
EUの政策に特化した独立メディア「EURACTV」がリークした情報によると、欧州委員会はすでに167ページに及ぶ草案文を用意しているという。
この文書によると、法的確実性の提供、イノベーション促進、消費者と投資家の保護、金融安定性と市場の誠実性を確保することが新しい規則の目的だ。
なお、中央銀行が開発するデジタル通貨については、この規制の対象とはならないとする。
また金融システムへのリスクに応じて、求める要件も異なってくるようだ。
リスクが低いと考えられる仮想通貨に対しての要件は比較的少なくなるものの、「電子マネーやトークン」については、義務、監督、制裁体制の点で規制が厳しくなるという。
こうして、リスクのレベルに合わせて法律を調整することで、デジタル資産の潜在的な課題に対処しつつ、約3500億ドルの価値があるデジタル通貨の市場を育成する意向だ。
さらに手続きの面では、仮想通貨の開発者は、発行者、トークン、取引プラットフォームに関するすべての関連情報を記載した「ホワイトペーパー」を作成し、運営開始前に規制当局の承認を受ける必要があるという。
また、リブラ協会や「その他の電子トークン」の発行者に対しては、ユーザーがいつでもトークンを現金やクレジットに引き換えられることを義務付け、資産の所有者に利子を付与することを禁止するとしている。
以上のように、リークされた文書によると規制を強め健全な仮想通貨市場を育成していくことが趣旨だといえそうだが、これまでのように様々な団体が自由に独自トークンを作成し売り出すことは、EU圏で難しくなるかもしれない。
どの仮想通貨に対して、どの程度厳しい要件が課されるのかは、現在まだ具体的に明らかになっていない。
フェイスブック主導の「リブラ」を名指し
声明でル・メール財務相は特にフェイスブック主導のステーブルコイン「リブラ」の名前を挙げた。
中央銀行、つまり欧州中央銀行(ECB)だけが通貨の発行を許されている。この権限は、いわゆる「リブラ」プロジェクトを含め、どのような種類のプロジェクトによっても脅かされたり弱められたりするものではない。
リブラは、各国政府機関が「金融主権を脅かす可能性がある」と懸念を表明したことで今年4月にプロジェクト計画を大幅に変更した。
複数通貨を裏付けとする「バスケット型リブラ」は棚上げし、個別の法定通貨とリンクする「単一型リブラ」のモデルに変更、米ドルと結び付く「リブラUSD」、ユーロに対応する「リブラEUR」、イギリスポンドに対応する「リブラGBP」、シンガポールドルに対応する「リブラSGD」のような形になるという。
また様々な規制当局のルールに適合させるため、より透明性の高いコンプライアンス重視の設計を行うとしている。
「リブラEUR」のようなユーロと結び付くステーブルコインであれば、今回報道された「ユーロと一対一で結び付く必要」という要件についてはクリアできる可能性があるものの、新たな規制が導入されれば「リブラ」をユーロ圏で発行するための難易度は上がりそうだ。
いずれにしても、世界の主要通貨の一つであるユーロ圏を統一する規制案は、その他の地域の金融当局も参照すると考えられ、内容が注目されるところだ。