
共通規格で発行へ
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが、円建てステーブルコインを共同で発行することがわかった。日本経済新聞が報じた。
メガバンク3行は同じ規格で相互に乗り換え可能な仕組みを構築し、新興フィンテックのプログマのシステムを使って今年度内の実用化を目指す。将来的にはドル建てのステーブルコインも発行する計画だ。
第一弾として三菱商事が社内の資金決済にステーブルコインを導入する。
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円建てステーブルコインの機運高まる
日本では今年8月、日本円建てステーブルコイン「JPYC」を発行するフィンテック企業のJPYCが、金融庁から資金移動業の登録を受けた。
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メガバンク3行が採用を想定する“信託型”のステーブルコイン発行は、日本の改正資金決済法に基づく「3号電子決済手段」として位置づけられる。この仕組みでは、発行者の資産と裏付け資産を信託財産として分離管理することで、高い安全性を実現する。
信託型の最大の特徴は、資金移動業などのライセンス取得が不要な点だ。
これにより発行までの手続きが簡素化され、3メガバンクは迅速にプロジェクトを推進できる。また、裏付け資産となる預金や国債が発行者の倒産から完全に隔離されるため、利用者の資産保護が強化される。
日本独自の法制度により、テザー(USDT)やUSDCなどのグローバルで普及する主要ステーブルコインに対抗できる信頼性を提供する。
ブロックチェーン上で発行されるため、24時間即時決済が可能となり、クロスボーダー送金の効率化とコスト削減を実現する。三菱商事のような国際取引が多い企業にとって、配当、取引、買収出資などの日常的な送金の手数料や手間を大幅に低減できるだろう。
また、三菱UFJ信託銀行との連携により、3メガ以外の金融機関も容易に参画可能で、共通基盤として業界全体の運用コストを抑え、グローバル展開を加速させる効果が期待される。
一方、2025年8月に金融庁から資金移動業の登録を受けたJPYCは、「1号電子決済手段」として位置づけられる。
資金移動業のライセンス取得が必要で、送金上限額などの規制を受けるが、個人向けの少額決済や海外送金に適している。国内で先行するJPYCはフィリピンと米国間の送金を70秒で実行し、1回の送金コストを1円以下に抑えるなどの実績を持つ。
メガバンク3行の信託型は高額の企業間送金に強みを持ち、JPYCは個人や少額決済に特化するという棲み分けにより、日本国内でのステーブルコイン市場の活性化が期待される。