新たな取引チャンスも、「イーサリアム基盤・DiFi使用のトレード戦略分析」バイナンス・リサーチ調査

バイナンスの研究部門がDiFiでのトレード戦略を分析
バイナンスの研究部門は、分散金融(DiFi)市場での裁定取引およびキャリートレード戦略の分析レポートを公開した。DiFi内で完結する戦略と既存の金融機関を利用する手法の両方で分析が行われた。

バイナンス・リサーチがトレード戦略分析を公開

大手仮想通貨取引所バイナンスの調査研究部門、バイナンス・リサーチが、分散化金融におけるアービトラージ(裁定取引)やキャリートレードの取引戦略に関する新たなレポートを公開した。

同レポートでは、DiFi領域内で完結する取引と、中央集権型金融(CeFi)間での取引の両方のケースにおけるリスクと制限について、具体的な例を挙げながら説明している。

市場価格の非効率性に基づいて行われるアービトラージは、一般的に成熟度の低い市場に対してより多くのチャンスが存在するが、レポートで分析対象となったのは次のようなプラットフォーム間での取引戦略だ。

1.Defiプラットフォーム

2.カストディプラットフォーム (CeFi)

3.非ブロックチェーン金融機関(銀行、融資会社等、CeFi)

DeFiとCeFi間の取引の事例分析

1. 銀行(CeFiプラットフォーム)とDefiプラットフォーム間

商業銀行(CeFi)から無担保で借り入れた資金(米ドル)をステーブルコインUSDCに両替し、DefiプラットフォームCompoundまたはdYdXに預け入れる。

このケースで年間利息が得られるのは、次の条件を満たす場合:

USDC 貸出金利(複利)% > USD 預金金利%

なお、レポートでは、収益を最大化するためには、銀行からの借入ではなく普通預金口座からCompoundまたはdYdXに預け入れることが、より現実的な方法だと述べている。

CeFi-DeFiアービトラージのポジションを構築する際の注意事項として、次のような点をあげている。

(1)変動レートのボラティリティ

DeFiプラットフォームでは、金利はプロトコルの需要と供給のメカニズムに基づいて変動するため、貸出金利に関連するボラティリティリスクが生じる。DeFiの規模が小さいことも関係している

(2)CeFiローンの早期返済に対するペナルティ

(3)イーサリアムブロックチェーンの手数料ガス

次にDefiプラットフォーム独自のリスクとして、資金の引き出しリスク、中央管理者が金利設定モデルを変更するリスク(透明性は維持)、スマートコントラクトに関するリスクをあげた。なお、スマートコントラクトのリスクに関しては保険も充実してきているという。

2. カストディプラットフォームとDefiプラットフォーム間 

事例:BlockFiとdYdX間の取引

BlockFiの貸出金利がdYdXの借入金利よりも高いため、両者間の金利差は裁定可能だと判断される。 dYdXにおいて、DAI またはUSDCを担保とし、初期レート0.99%でETHを借り入れ、 BlockFiで3.3%のレートでETHを貸し出す。

このアービトラージ事例におけるリスクと考慮すべき点として、次のような点をあげた。

(1)BlockFiのようなCeFiが、借入金利と貸付金利を手動で設定する点

(2)価格変動リスク:ETHの価格が上昇した場合、dY​​dXのポジションが清算される 可能性があり、監視が必要

(3)スマートコントラクトのリスク

(4)ローン承認の不確実性:BlockFiローンのマッチングプロセスに時間を要すると、   収益損失に繋がる可能性がある

3. dYdX とBinance Lending間の事例

dYdXにおいて、DAIまたはUSDCを担保とし、初期レート0.99%でETHを借り入れ、 Binance Lendingで6.0%のレートでETHを貸し出す。BinanceのETH貸出金利が、dYdXの借入金利よりも高いため、利益が出ることになる。なおdYdXに預けられた担保にも貸出金利が適用され、担保として使用されるすべてのDaiにも貸出金利が適用される。

このポジションを取る際のリスクとしては、価格変動、スマートコントラクトのリスク、DeFiレートのボラティリティリスクが考えられる。

さらに、この事例では、次のような要素も考慮に入れる必要がある。

(1)Binance Lendingはサブスクリプションに基づくため、満期日前の資金の引き換え ができない。

(2)サブスクリプションの人気が高いため、サブスクリプションごとの上限や ユーザーの使用上限が設けられている。

(3)Binanceの引き出し手数料

(4)イーサリアムブロックチェーンの手数料ガス

DeF間で完結するアービトラージとキャリートレード

1.USDCとDAIの金利差

どちらも米ドルに連動されているが、DAIはUSDCよりも高い貸出金利が設定されている。 リスクは、それぞれの通貨が米ドルとの価格連動からずれてしまうことだが、DAIの価格がUSDCに対して上昇する場合は、さらなる利益が見込める可能性が観測されている。 

また、ETH保有者の他の選択肢として、レポートでは次のようなキャリートレードの例を示している。

CompoundでETHを預け入れ、USDCを借り入れる> 借入たUSDCをKyberまたはUniswapで売り、DAIを購入>CompoundでDAIを貸し出す。 

2. Maker とCompound 間のアービトラージ (過去の事例)

2018年後半、CompoundにおけるDaiのの貸出金利が、MakerDaoエコシステムの安定化手数料よりも高くなった結果、MakerでETHによって担保されたCDPを開設し、CompoundにDaiを預け入れることで、ETHの貸出金利よりも高い年利を得ることができた。 

この方法で利益を得るためには、

Dai の貸出金利(複利)% > 安定化手数料 %

という図式が成り立たなくてはならない。

さらに、CompoundやdYdXとは異なり、CDPに預けられたETHは利息がつかないことに留意する必要がある。

この事例におけるリスクは、MakerDAOにおける担保要件が150%と高いことと利息を生み出さないこと、ガス手数料、ETHの価格下落に伴う清算リスク、複合償還リスク、プラットフォーム固有のリスク(価格予測のミスマッチ)などが挙げられている。

結論

レポートでは、Defiスペースの成熟度の欠如、プロトコルにおける過剰担保の重要性、およびプロトコルの供給/需要要因を反映した金利設定メカニズムといった理由から、アービトラージの機会は、DeFi内で完結する取引よりもCeFiとDeFi間における取引の方が、持続性があると結論づけている。

また、DAIとUSDCの間では、それぞれのリスクが異なるため、金利の差が生じているとした。

また、取引の上での重要な側面として、長期的な資産配分と金利エクスポージャーの多様化を挙げた上で、次のようなアービトラージに便利な新たな機能が、Defiプロトコルのセカンドレイヤーとして導入されていることに触れている。

· プラットフォームブリッジ

MakerとCompoundの間で自動的にローンを移動する(InstaDappなど)

·自動的に最適なプラットフォームに割り当てる機能を備えたプロトコルやコントラクト

MetaMoneyMarket やRobo-Advisor for Yieldなど

·プロトコル間の金利の相互化

異なるDeFiプロトコルから統合された金利を提供するプラットフォーム

同レポートでは、DiFiには、Uniswapのような新たな分散型プラットフォームの登場という新たな側面もあり、今後、金利スワップや金利方向性のヘッジなどから「新たな取引チャンス」も生まれてくると、結んでいる。

参考:DeFi Series #2 – Arbitrage and Carry Trade Strategies

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