CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨ビットコインFX「レバレッジ2倍」発言の真意は?中島教授に記者が質問

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ビットコインのレバ2倍規制問題

ディーカレット主催のラウンドテーブル「中央銀行のデジタル通貨構想」にて、先月大きな議論を巻き起こした「レバレッジ2倍規制問題」について、中島教授が記者から真意を尋ねられる場面があった。

先月、国内仮想通貨取引所における証拠金取引(最大レバレッジ)規制案をめぐり、金融庁の狙いは「レバレッジ上限2倍」と報じられたことで、利用者や業界関係者らが猛反発するなど、大きな議論を巻き起こしていた。

背景には、翌春の改正金商法の施行を見据え、金融庁認定の自主規制団体「JVCEA(一般社団法人日本仮想通貨交換業協会)」が、仮想通貨のレバレッジ上限を15倍から4倍に引き下げるルールを定め、正会員としてJVCEAに所属する各仮想通貨取引所が適用したことで、出来高や流動性低下など、市場規模の大幅縮小や事業リスクへの強い危機感がある。

中島教授の見解

中島教授は、「仮想通貨市場を潰そうとするような意図は一切ない」と弁明。

海外事例について独自調査した結果、CMEなど最大証拠金倍率2倍を限度とする事例が見られたことから、グローバルな取引が行われる仮想通貨市場において、日本市場だけが4倍に設定する必要性について指摘。金融庁研究会のメンバーから合理的な反論がなかったことも、金融庁の方針がさらなる規制強化に向かった要因にあるとの見解を示した。

国内仮想通貨交換業者における「レバレッジ規制議論」は、金融庁が昨年12月に主催した「第11回 仮想通貨交換業等に関する研究会」で行われたものだ。

仮想通貨デリバティブ取引に係る規制も含まれた配布資料では、証拠金倍率について、「仮想通貨の価格変動が法定通貨よりも大きいことを踏まえ、実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当と考えられる」と指摘している。

金融庁審議会の議事録(JVCEAの見解)

金融庁審議会の議事録によると、中島教授は以下のように発言を行なっていた。

業界の自主規制案である4倍や、あるいは海外の事例にある「2倍」という倍率が出発点になるのだと思う。

最終的にはヒストリカル・ボラティリティなどを見ながら、内閣府令で決めていくことになると思うが、米国の先物取引所では約2倍、EUの規制でも2倍になっている中で、日本だけが4倍にするという合理的な理由はなかなか見出しがたいのではないかと考えている。

他の委員の方からも、2倍を支持する意見があったように記憶している。

これらの内容に対し、JVCEAの奥山会長は、以下のように発言している。

私自身「4倍」が適切だと思っているわけではない。

当面、基本4倍と設定しながら、ボラティリティや、あるいは通貨ごとの変動要件など、しっかり見守りながら、業界の行き過ぎた(最大証拠金倍率)25倍という水準は是正していくための措置であるとは認識している。

また、ESMAや海外におけるボラティリティ規制も2倍でフィックス(固定)されている規制ではない、やはり流動的にボラティリティを見ながら変動するルールになっていると認識しており、そういったところも踏まえながら、今後の状況を見守りながら適切な自主規制が運営できるという形の中で取り組みたいと考えている。

bitFlyer Blockchain 加納氏の見解

この点について、投資銀行ゴールドマン・サックスの元トレーダーでもあるbitFlyer Blockchainの加納氏はブログ上で、外国為替(FX)の事例と「金融資産のリスクモデルについて」データを根拠に反論。「SPANという計算方法を元に適正値を算出、レバレッジはボラティリティーを元に決めるのが良い」と主張している。

仮想通貨レバレッジのリスクについては、「定量的に、そして過去の運用実績も踏まえて議論することが大事。レバレッジを下げすぎると、流動性は枯渇する。板に乗っている注文の量も減り、それが原因で大きく動くことになり、(投資家保護の理念と相反する)悪循環ともなりえる。」と警鐘を鳴らし、以下のように述べた。

ブロックチェーンの世界では資金の移動が非常に簡単で、残念ながらJVCEAのルールに準拠しない海外事業者に日本の資金が流出しているのが現状です。

日本が世界に先駆けて2度も法律を作り、セキュリティー、IT統制、内部統制、内部監査や経営管理体制のガバナンス態勢を整備してきました。今では仮想通貨ライセンスは世界で最も難しいライセンスと呼ばれています。すべては顧客資産の保護のためです。このような世界最先端の制度設計も現実に起こっている海外への資金流出では生かされません。

仮想通貨のレバレッジの議論は、今後の日本の仮想通貨業界の行方を大きく左右するほどに重要なテーマだと考えています。顧客不在の議論とならないように、最適な顧客保護と業界の発展のバランスに鑑みた制度設計が議論されることを期待しております。

出典:ビットコインの適切なレバレッジについて

レバレッジ規制議論と弊害

仮想通貨業界に精通する、Blockchain Researcher at BUIDLのKanaGold氏は、レバレッジ議論について以下のように述べ、東 晃慈氏の配信「ビットコイナー反省会」でも題材として取り上げるなど、オープンな場で一石を投じている。

また国内トレーダーからは、BitMEXのデリバティブ金融商品が、世界的に最も優秀かつ魅力的であり、東証並みの出来高を記録している点について、ゼロカットシステムや金利(Funding Rate)の仕組みを国内取引所でも導入すべきだと提言が挙がっている。

ゼロカットシステムは、その損失分を業者側が負担して口座残高をゼロにしてくれる仕組みだ。その原資にあるのが証拠金取引手数料などで、世界最大級の仮想通貨デリバティブ取引所として知られるBitMEXでは、独自に保険基金制度を設け、結果的に世界中の投資家から絶大な支持を獲得している。

これについて、TaoTaoの荒川社長がTwitter(質問箱)上で回答した。

BitMEXの商品の魅力については実際に多くの方からそのような指摘をいただくこともあり、承知しています。

ご指摘のゼロカットや金利(Funding Rateのことですよね?)についてですが、まず後者については先の商品性の一環として認識しており、弊社としてそういった商品を扱うことになれば、是非前向きに検討させていただきたいものだと思っています。

前者のゼロカットについては、欧州での状況等からも考え方としては有るものと理解していますし、適切に制度を設計し運用できれば投資家の皆様の資産の保護に資するものになると思います。ただ、規制の観点からはゼロカットの性質上、損失補填に該当する旨の指摘があることも事実で、これは仮想通貨以外の他の金融商品の状況を鑑みると簡単な話ではないようにも感じています。

出典:質問箱

総括

さいごに、レバレッジの議論について、匿名を条件にCoinPostの取材に応じた、業界関係者の見解を紹介する。

最大証拠金倍率「2倍」まで引き下げられるような状況になれば、投資家保護の仕組みが不十分な海外の取引所に利用者が流れることはより加速することになる。国内取引所は、実質的に仮想通貨の”現物を購入するゲートウェイの役割に限定されるため、事業運営自体が厳しくなるのではないか。

業界としても提言を行なっているが、先行きが見えない状況だ。金融商品取引法に関する法改正を来年に控える中で、事業者は対応に追われることになるだろう。

金融庁審議会など、クローズドに近い場で行われる規制議論であるが、仮想通貨業界、ひいては国内の成長産業に及ぼす影響も甚大なため、金融庁が人選した一部有識者による聴取レベルのものではなく、このような重要テーマに関しては、複数の仮想通貨業界関係者を交えたディスカッションや、実利用者へのパブリックコメント募集など、よりオープンな仕組み作りが不可欠だ。

国内金融市場の実態に則した「投資家保護」につなげるためにも、開かれた議論の俎上に載せることで、業界が一丸となって規制当局の理解を求める必要がある。

関連:国内仮想通貨市場に深刻な危機感、ビットコイン(BTC)のレバレッジ2倍規制問題で

注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
15:15
bitFlyer、トラベルルール導入に伴う対応内容を発表
国内大手の仮想通貨取引所であるbitFlyerは、「トラベルルール」の導入に伴う対応策を公表した。MetaMaskなどの仮想通貨ウォレットは今後も利用が可能だが、国内で送金や預入が可能な暗号資産交換業者としては、Coincheckだけという状況が生じる格好だ。
15:07
群馬県沼田市、歴史文化保全のためNFTアート返礼品の「ふるさと納税」受付開始
群馬県沼田市は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営するトラストバンクやCoinBestと提携し、「ガバメントクラウドファンディング」を利用したNFTを返礼品とする寄付金の受付を開始した。
13:50
米債務上限合意で仮想通貨業界に朗報 マイニング増税案は見送り
バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長は、連邦政府の債務上限引き上げで最終合意に達し、米国政府によるデフォルトが回避される運びとなった。合意を反映した法案では、マイニング企業に対する新たな課税提案は阻止され、仮想通貨業界にとっては朗報となった。
13:20
BNBチェーンNFT市場Tabiが14億円を調達
BNBチェーンに注目したNFTマーケットプレイスであるTabiは、大手Web3企業Animoca Brandsが主導するエンジェルラウンドで約14億円の資金調達を果たしたと発表した。また、コミュニティ向けの報酬プランを5月29日からスタートさせている。
12:29
ソーシャルとライフスタイルの融合「BOOOST」 旅行先でトークンを貯めて大切な人に会いに行こう
徒歩や車移動といった日常生活とソーシャルアプリを融合させたweb3アプリ「BOOOST」利用のメリットを初心者向けに解説。 旅行先で暗号資産(仮想通貨)トークンを貯めて、友達と交流を図ることができます。
12:28
ビットコインは上昇一服、米債務上限法案の行く末見守る
米債務上限問題を巡り基本合意に達したとの報道を受け買われたビットコインは30日までに上昇を一服した。議会で可決するまで史上初のデフォルトリスクが燻っており、米債務上限法案の行く末を見守るため様子見基調が根強いか。
12:05
Geminiら、米SEC提訴の棄却を求める申し立て
米国の仮想通貨取引所であるGeminiと、融資企業の Global Capitalが米証券取引委員会が起こした訴訟の却下申立書を提出したことが、裁判所の公開文書を通じて明らかになった。訴訟の却下申立書が認められた場合は、訴訟は棄却される。
11:35
Bybit、カザフスタンで仮想通貨事業の原則的な承認を取得
ビットコインなどを扱う仮想通貨取引所Bybitは、カザフスタンで事業について原則的な承認を得たと発表。規制整備の進む同国から旧ソ諸国へサービスを展開していきたいと述べた。
10:50
エヌビディア、AI向けのスパコン発表
エヌビディアは、AIのためのスーパーコンピューターDGX GH200を発表。ゲーム領域などでの活用を想定しており、Google Cloud、メタ、マイクロソフトといった大手企業も利用する予定だという。
10:03
オアシス(OAS)、SBI VCトレードに上場へ
ゲーム専用ブロックチェーンプラットフォーム「Oasys」のネイティブトークン「オアシス(OAS)」の上場が、国内の暗号資産取引所SBI VCトレードにて確定したことが明らかとなった。予定上場日は5月31日、OASトークンの国内での取り扱いは、bitbankに次いで2つ目の取引所となる。
10:00
ロシア、国営仮想通貨取引所の設立計画を取り下げ=報道
ロシアは国営の仮想通貨取引所を設立する計画を取り下げたと伝えられる。その代わりに民間の仮想通貨取引所規制などに関する実験的な法的体制を導入することを検討している。
07:30
デジタル円、日銀がパイロット実験
日銀は、CBDCに関する実証実験の概念実証フェーズ2の結果報告書を公開。概念実証では、分散型台帳技術との連携も想定している。一般的に分散型台帳技術には、ブロックチェーンが含まれる。
05/29 月曜日
14:35
JPモルガン、金融系AI(人工知能)「IndexGPT」の商標登録を申請
米JPモルガンは金融システムに活かすための人工知能「IndexGPT」の商標登録を申請した。株指数の作成や投資コンサルティングなど様々な金融サービスに使うことを念頭に置いている。
13:25
JPモルガンのアナリスト、ビットコインが45000ドルに達する可能性を指摘
JPモルガンのアナリストは顧客向けの相場予想で、暗号資産(仮想通貨)ビットコインが45000ドル(630万円)に到達する可能性を示唆した。
12:31
中国北京市、Web3産業の政策支援強化へ 年20億円以上の投資計画 
中国北京市の科学技術委員会は、Web3イノベーションの開発をテーマとした白書を発表。北京市がWeb3産業育成のため政策支援を行っていくと述べた。朝陽区は毎年20億円以上を投資する計画だ。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア