韓国投資家が反発
韓国の憲法裁判所に340人を超える仮想通貨投資家が「韓国政府の仮想通貨規制による対策が違憲である」とする内容で訴状を提出。16日、違憲かどうかを確認するための公開弁論が実施された。中国大手仮想通貨メディア8BTCが報じた。
討論の内容としては、2017年12月から2018年1月の間に行われていた実名制KYC取引システムの導入を含む政府の措置が違憲であるとする投資家の訴えに関するものだ。
韓国の仮想通貨取引所では、法定通貨を取り扱う場合、銀行との連携が必要である規定が定められており、政府は資金洗浄などの不正行為を防ぐために身分証明の実名制KYCを実施した経緯がある。このシステムの導入で、中小規模の取引所が一部廃業に追い込まれる事態に陥るなど、韓国マーケットが縮小した要因として過去にも指摘されていた。
投資家の代表弁護士は、「政府の措置があるため、既存の銀行バーチャル口座が使用できなくなり、仮想通貨の交換価値が低下し、財産を自由かつ創造的に扱う権利は制限されている」と、論拠を示している。
また、政府の手段は金融実名法などの法律に基づいていないため、法的原則に違反していると指摘。「仮に憲法裁判所が憲法に準拠していると判断した場合、国家の経済的自由は金融当局によって踏みにじられることになる」と強く訴えた。
金融当局の主張
一方、対策措置を主導した韓国の金融当局代表は投資家の代表弁護士の指摘に対して、反論を行なっている。
実名制を採用した理由として、「偽造札を利用した匿名の仮想通貨取引は現行のトラッキング方法に多くの二次被害をもたらす可能性が高まるため、政府はそれを阻止するために実名制を導入した」と説明。
その上で、政府の行動が国民の基本的権利を侵害するものではなく、そのような法的な訴えは拒否されなければならないと主張した。
双方の主張のあと、裁判官は当時の政府がとった措置の背景と法的根拠について質問を行なった中で、金融当局の代表が「法的根拠はなかった」と認める発言を行なったことも明らかになった。
憲法裁判所は、公開弁論の内容に基づいて、数か月以内に違憲性に関する決定を下す予定だという。
韓国の仮想通貨業界は取引所の口座実名制の実施や、2017年9月よりICO資金調達への参加が禁止されている事態を受け、国内取引所の出来高の減少など大きなマイナスの影響を受けている。
今回の弁論内容がICOに触れておらず、政府においてもICOの解禁に関して今まだ有益な進捗は見られていないものの、憲法違反の角度から攻めることが今後同国の仮想通貨市場改善の切り口になるかもしれない。
なお、直近の動きでは、大統領直属の第4次産業革命委員会は韓国政府に対し、金融機関にビットコインデリバティブ取引を含む仮想通貨投資商品を提供する権利を付与するよう推奨している。
過去には請願書に10万近い署名
韓国では政府の規制方針に対し、強く反発してきた過去の事例もある。
当時、パク法相が仮想通貨取引禁止法案を発表した際、50以上の請願書が青瓦台(韓国大統領官邸)に提出。法務省の仮想通貨取引禁止法案を拒否する最も人気のある請願書には71000以上の署名が行われている。
その後、企画財政部(Ministry of Strategy and Finance – MOSF)および他の韓国仮想通貨タスクフォース機関が取引禁止の方針に賛同していない意向を示し、韓国政府が短期的には仮想通貨を規制しないという結論を下している。
参考:8BTC