BitMEXが解説、半減期影響の筋書き
BinanceAcademyのBitcoin Halving Countdownによれば、ビットコイン(BTC)の半減期まで、あと38日と迫る。
大手仮想通貨デリバティブ取引所BitMEXのリサーチ部は、来たる半減期がマイニング産業にもたらし得る影響に関するシナリオを考察。採掘業者の利益、およびマイニングハッシュレートへの影響について試算した。
ビットコイン価格の上下を考慮せず、一定値であることに基づいた場合、採掘報酬の半減の影響で採掘業界全体の収益率は約5割減となるが、現在の採掘業ストラクチャー(業界形態)を前提に、ハッシュレート(採掘速度)について30%〜35%の低下を予測する。
「ハッシュレートの減少は、ブロック報酬の減少だけによる影響ではない。採掘難易度の調整幅と産業ストラクチャー関係にも左右される」と説明した。BitMEXリサーチは、ビットコイン(BTC)半減期が影響を及ぼす試算シナリオについて、4部構成で解説している。
1. 採掘インセンティブ
短期的概観では、仮に収益がマージナルコスト(限界費用とも、電気代・機械代・土地代等)を上回れば必ずしも利益が出るものとは限らないが、既存の業者の多くは事業続行できると見る。
マシン本来の価格ではなく、限界費用が実際に稼動・シャットダウンを左右する最も重要な基準であることを踏まえ、理論上は、ビットコインの価格が下がったとしても、採掘業者の収益自体がコストより高ければ、マイニング施設をただちにシャットダウンする可能性は低いとしている。
コストのカーブ
レポートでは、マイニングのコストカーブ表を利用し、3つのシナリオについて考察。発行上限の変わらないビットコインでの価格変動で、採掘業者の採算も変化することになるため、採掘難易度に依存する形でハッシュレートも変化する。
そのため、カーブ表ではビットコイン価格が半減した場合、ハッシュレートがどのように影響を受けるか測定。ここでは仮説上、価格の半減がブロック報酬半減を代表して利用されるモデルになる。
まず図1では、直線チャートで表示。価格が6,000ドル台から3,000ドル台に半減した場合、ハッシュレートは約29%低下する試算に。
2つ目のシナリオでは、同じ価格の減少だが、使用するチャートはより『リアル』なカーブ型で、ハッシュレートは47%減になる。
最後は二次方程式チャートを利用。上記とまったく同じ価格の推移で算出されたハッシュレートの低下は、わずか-12%にとどまるという。
ここの方法論として、「価格が少しばかり変動すれば、図3のような小幅調整で済むが、BTC価格が暴落すれば、図2のようにハッシュレートも大幅減少傾向となり得る」と指摘した。
報酬半減期への応用
多くの採掘業者は上場企業ではないため、運営費用のストラクチャーは公開されていない。
先日、マイニングマシン商社Blockware Solutionsが公開した業界レポートデータによれば、過去幅広く普及した旧型ASICマシンのAntminer S9から最新鋭のS17に至るまでの所用電気コストを掲載。これらのデータを踏まえた上で、新たななコストカーブを作成した。
新たなチャートでは、最小コストを0ドルとして算出した結果、BTC=6,000ドル台から3,000ドル台まで急落した場合の均衡値としては、34%のハッシュレート低下に至る。
結論
BitMEXリサーチは、企業の費用ストラクチャーが非開示の側面もあることから、試算した結果の一部は推測にすぎない可能性があると認めつつも、半減期後のハッシュレートは30%〜35%の減少幅となる公算が高いと総括。「収益面で極めて高い負担がのしかかる」との予測を示した。
ただし、同レポートはあくまでハッシュレートへの影響のみを考察したものであり、半減期前後のビットコイン市場における希少価値を踏まえた需給の変化や、過去の相場のように材料視されてBTC価格が大幅上昇するケースは考慮していない。
ストック・フロー比率から算出する半減期後のBTC理論値については、以下の記事で詳しく考察している。
関連:「半減期と仮想通貨ビットコインの高騰」なぜ一緒に語られる? ストック・フロー比率から算出する理論価格を用いて解説
参考:BitMEXリサーチ