「ビットコインは法律で守られる財産」
中国で仮想通貨ビットコインを「法律によって保護される財産」だと認める判決が出た。イーサリアムでも同様の判決が下されており、中国司法当局は、昨年に引き続き、仮想通貨を財産として認める方向性を維持している。
今回の裁判の発端は、ビットコイン強盗事件を巡るものだった。
2018年に上海で暮らすある夫婦のアパートに、4人組の強盗が侵入。暴力と脅迫行為によって2人が所有する18.88ビットコインと6466スカイコインを強奪し、犯人のアカウントに転送させたという。
裁判所は、この犯罪グループに仮想通貨の返却を要請、それが不可能な場合は、奪い取ったBTCおよびスカイコインを2018年当時の現地通貨相当額で返還するべきだと判断した。
しかし、4人の強盗はこの判決に対して上訴。「中国の法律は仮想通貨を財産として認めていないために、返却する必要はない」と反論した。
これに対して、上海第一中級人民法院は、ビットコインはインターネット上の仮想資産であり、法的に保護されるべきとした。ビットコインは価値、希少性、消費することができるといった特性を持ち、仮想の資産とみなされるという。
夫婦はスカイコインを取り戻すことは諦めたものの、裁判所は最終的に、4人の強盗に18.88BTC(2000万円相当)の返還を命じた。尚、夫婦がスカイコインの返却を放棄した経緯は明らかにされていない。
イーサリアムも法的財産と承認
この件はビットコインを巡るものだったが、中国ではイーサリアムでも同様の判決が出されている。
こちらの事件は、深センの企業で働いていたブロックチェーン・エンジニアが、以前勤めていた会社が所有するHaode Tradeのアカウントに侵入し、イーサリアムとHaode Trade独自のHaodeコインを盗んだもの。
深センの地方裁判所は、この事件に関して、イーサリアムなどの仮想通貨は中国の法律で保護される財産であるという判決を下した。
窃盗の犯人はHaodeコインと0.4 ETHを返却し、さらに人民元で原告に5,536.99元を弁償するよう命じられた。
この判決は、中国で仮想通貨を所有または譲渡することが禁止されないこと、また仮想通貨は法で保護される財産として認められることを示している。
「通貨」ではないが「財産」である
また2019年には、ビットコイン取引所からコインを引き出せなくなったことを巡る裁判で、ビットコインが法的な財産であると認められた事例がある。
この時、杭州インターネット裁判所はビットコインについて通貨としての合法性は否定。しかし、仮想財産という「商品」として価値があり、法律で保護される対象だとみなした。
この判断の理由としては、マイニングという労働を通じて生産される商品と考えられる点、使用価値、交換価値を持ち、また稀少性も併せ持つことが挙げられた。
中国では、2017年から仮想通貨取引が全面禁止されている。しかしビットコインマイニング産業は承認されており、また近年の裁判事例ではこのように、「仮想財産」として保有することは認められている。
この先、中国が仮想通貨を巡る政策を、国にもたらすメリットとデメリットのバランスを取りながら、どのように打ち出していくのか注目される。