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ブロックチェーン技術の「可能性」と「限界」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ブロックチェーンは万能薬ではない

社会を変革する可能性を持つ革新的な技術として注目を集めるブロックチェーン技術。しかし、世界経済フォーラム(WEF)第4次産業革命センターで、ブロックチェーン・デジタル通貨のプロジェクトリーダーを務めるAshley Lannquistは「ブロックチェーンは万能薬ではない」と主張する。今月公開されたWEFのブロックチェーンの活用事例レポートで、その背景を詳述している。

ブロックチェーン技術で汚職と戦う

WEFは米州開発銀行および南米コロンビアの政府機関と提携し、公共調達と公共部門の汚職に対するブロックチェーン技術の実現可能性および価値について包括的な研究を行った。

イーサリアムベースのパブリックブロックチェーンを利用し、政策、ガバナンス、市民参加など多面的な要素を考慮し、公共調達システムを構築するという、この実験的プロジェクトは「政府の透明性を目指すブロックチェーン技術研究」と題された報告書にまとめられ、6月15日に発表された。

ブロックチェーンの強みと脆弱性

報告書では、ブロックチェーンは「恒久的で改ざんが困難な記録保持、取引の透明性と可監査性、スマートコントラクトによる自動化された機能、プロセス内での中央集権化された権限と情報の所有権の削減」という特性により、汚職に対処するのには多大な可能性を持った新興技術であると高く評価している。

Lannquistは、分散化されたブロックチェーンでは記録の削除や検閲が非常に困難であるため、汚職対策は、ブロックチェーン技術が最も活かされる分野だと述べている。

このような多大なメリットがある一方で、イーサリアムのような、パブリック型のパーミッションレス・ブロックチェーンには複数の課題があるとして次のような点をあげた。

  • 仮想通貨の利用に関する法律または規制面の問題
  • 入札者の身元の匿名性が保たれない可能性(プライバシーの課題)
  • トランザクションのスケーラビリティ制限

なお、これらの課題、主に匿名性の問題に関しては、現在の技術レベルでは「プライベート」型ブロックチェーン、またパーミッション機能を持つブロックチェーンとの「ハイブリッド型」の採用により、解決される可能性もあると述べている。

さらに今後の技術開発やブロックチェーンエコシステムの発展により、匿名性やスケーラビリティの課題にも対応できる可能性があるとして、セカンドレイヤー技術や、イーサリアム2.0など次世代のベースレイヤープロトコルを例にあげた。

技術では解決できない問題

ブロックチェーンの多くの利点や課題解決の可能性を列挙する一方で、WEFは手放しでブロックチェーン技術を推奨するわけではない。

その最たる理由は、人的要素だ。

「ブロックチェーンは万能薬ではなく、汚職を完全に防止することはできない。ブロックチェーンをはじめとする、いかなる技術も、贈収賄や談合など、電子プラットフォーム外で発生する人間活動から汚職リスクを排除することは不可能だ。」

つまり、人間の行動問題の根底にあるものをテクノロジーで完全に解決することはできないということだ。

WEFは、ブロックチェーン技術の効果的なユースケースを実現させるには、社会および文化的背景に基づいた政策改革や継続的な政治的賛同が不可欠だと主張している。

このような社会的、人的要因を考慮すると、ブロッックチェーンベースの公共調達システムが汚職を排除するユースケースとして成り立つかどうかは「曖昧」だと結んでいる。

WEFの「ブロックチェーン権利章典」

WEFのグローバル・ブロックチェーン評議会が目指したのは、まさにこのような人的要因にアプローチし、社会と人々に恩恵を与えるためのブロックチェーン技術の活用と普及だ。その基盤として、同カウンシルは5月、「ブロックチェーン権利章典」とも呼ばれる、ブロックチェーンの価値原則を発表した。法的拘束力はないが、ブロックチェーンを普及させるための基本理念がこの文書には織り込まれており、すでに大手会計法人デロイトやイーサリアム開発企業ConsenSys等が署名している。

この原則の起草に携わったWEFのSheila Warrenは、他の技術同様、ブロックチェーン技術の恩恵と危険性(多くの詐欺的な利用)は、その戦略、開発、実装に至るまでの個々の意思決定にかかっていると述べている。ユーザー保護のためには、初めからユーザーの権利を念頭においた技術設計が不可欠であり、ブロックチェーンの真の普及を目指すには、出発点を誤ってはならないと警告している。

出典:WEF

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