分散型金融で注目の新トークン
新たな金融の形として分散型金融市場が投資家の注目を集める中、今月の取引高はすでに過去最高を更新している。その中で2017年の仮想通貨バブルを彷彿とさせる急騰を記録したDeFiトークンが、7月18日にローンチしたyearn.finance(YFI)だ。
ローンチ後1週間で最高値を記録
イーサリアムベースのDeFiプラットフォーム、yearn.financeのネイティブトークンYFIは、リリース後1週間(7月25日)で4661.97ドルの高値をつけた後、現在は3065ドル前後で推移している。
仮想通貨ランキングサイトCoingeckoで最初に記録された価格は31.65ドルだが、ベンチャー投資家のAndrew Kangによると、トークンがリリースされたプールの一つであるBalancerプールでは1YFI=3ドルでローンチされたとのことだ。
Kangの数字が正しいと仮定すると、YFI価格はリリース後、1000倍を優に超えたことになる。(KangはCoingecko及びCMCが、リリース直後は価格を追跡していなかったと主張している。)
YFIのローンチ時の総流通量は3万トークンに設定されているが、現在すでに2万9000トークンが流通している。
ユニークなトークンの稼ぎ方
yearn.financeはAave、Compound、Dydx、Fulcrumなどのレンディングサービスを利用してトークンの貸し出しを最適化する分散型のアグリゲータ・エコシステム。yearn.financeに預け入れたトークンは、yTokenに変換され、最も収益性の高いレンディングサービスを利用できるよう、定期的にリバランスされる。
yearn.financeは流動性プールの「Y Curvepool」をはじめ戦略的なイールド・ファーミングを提供するyEarnが運営している。
YFIはyearn.financeのyTokenのガバナンストークンで、「proof of liquidity(流動性の証明)」をステークすることによって獲得することができる。つまり、yTokenによって流動性を提供するユーザーのみに配布されるという仕組みになっている。
開発者のAndre Cronjeは、YFIを「全く無価値」なトークンであり経済価値はゼロだと主張。プレマイン(仮想通貨公開前のマイニング)も、セールもなく、買うこともできないとしている。しかし、YFIを獲得するのは簡単で、yearn.finance下に置かれる下記の取引プラットフォームにステーキングすることで流動性を提供すれば良いと述べ、「買わないで、稼ごう」と呼びかけている。
上限1000倍のレバレッジ取引が可能な「ytrade.finance」、Aaveプロトコル用の自動清算エンジン 「yliquidate.finance」、USDCで5倍のレバレッジをかけたDAI保管サービス「yleverage.finance」、自動化されたマーケットメーカー「yswap.exchange」などがその例となる。
脚光を浴びる分散型金融
YFI価格の急騰はICOブームにわいた以前の仮想通貨市場を彷彿とさせるが、分散型金融市場では、特にスマートコントラクト・トークンを中心に相場を牽引しているようだ。これまでにCompound(COMP)、Aave(LEND)、Maker(MKR)に資金が流入し、さらにChainlink(LINK)も大きく上昇した。
仮想通貨投資家は、大きなリターンをもたらすトークンの最初の波に乗り遅れないようにと目を光らせているようだ。しかし、詐欺まがいのプロジェクトも多かったICOとは異なり、DeFiプロジェクトの多くは技術に支えられている。また、イールド・ファーミングのような新しい分散型プラットフォームならではの投資手法も生まれており、ステーキングされた資産はDeFi市場全体で36・8億ドル(約3884億円)と見積もられている。
フラッシュクラッシュの例も
YFIの急騰率を上回る記録を作ったのが DeFiプロジェクトのAmpleforth。デリバティブプラットフォームFTXで、対米ドルで70万%という驚異的な暴騰を記録した。2ドル以下だった1トークンが、一時ビットコイン価格を上回る1万3400ドルに到達した。しかし、その数分後には、99.99%の下落となったという。なお、他の取引所ではこのような現象は生じていない。
急騰中の銘柄に飛びつくと高値掴みのリスクがあるため、十分注意したい。