日本人共同創業者の横川毅氏と原田均氏が米国で立ち上げた証券インフラ企業アルパカ(AlpacaDB Inc.)は、2026年1月に1億5,000万ドル(約230億円超)を調達し、企業評価額11.5億ドル(約1,800億円超)のユニコーン企業へと成長した。
世界40カ国・300社以上の金融機関にAPI形式で取引インフラを提供する同社は、トークン化株式市場において世界シェア94%を握り、同分野を牽引している。Ondo Finance(オンド・ファイナンス)やKraken(クラーケン)といった大手プロジェクトとの提携を通じ、伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)を接続するインフラとして急速に存在感を高めている。
CoinPostは、同社共同創業者兼CPOの原田均氏にインタビューを実施。TradFiとDeFiの橋渡し、Instant Tokenization Network(ITN)の革新性、日本市場への展望、そしてグローバル金融インフラとしての将来像について話を聞いた。
アルパカ(AlpacaDB, Inc.)とは
米国に本社を置く証券インフラ企業。自社で取引の決済まで完結できるライセンスを持ち、株式・ETF・オプション・債券・暗号資産の売買や保管サービスをAPI(プログラム連携)で提供。世界40カ国・300社以上の金融機関が採用している。2026年1月のシリーズDで1億5,000万ドルを調達し、企業評価額11.5億ドルのユニコーン企業となった。三菱UFJイノベーション・パートナーズ、シタデル・セキュリティーズ、BNPパリバなど大手金融機関が出資者に名を連ねる。
日本法人のAlpacaJapan株式会社は、米国株取引を取り扱う第一種金融商品取引業者。現在暗号資産やトークン化有価証券の取り扱いはない。
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TradFiとDeFiの橋渡しとしてのアルパカ
まさにミッションそのものです。暗号資産やDeFiの世界はずっと理想論を掲げてやってきましたが、ここに来て一番大事なのは、リアルワールドアセット(RWA)がちゃんとアップグレードしていくことだと考えています。
その中で一番やりやすかったのが株式、特に米国株です。去年あたりからかなり盛り上がりが出てきました。ただ、RWAをトークン化するには、現物を適切に管理してくれる人が必要です。株式はかなり面倒なアセットで、コーポレートアクション(株式分割や配当など企業が行う資本政策)が起きて株式分割があったり、配当があったり、様々なことが発生します。
米国という資本市場を支えているアセットをディセントライズ(分散型・非中央集権)の世界に流していくとなると、レギュレーションやAMLも含めて、今までの暗号資産業界のやり方では通用しない。そこをちゃんと「ここまでは既存の仕組みの中でもできますよ」とアルパカが担保した上で、「ディセントライズでもこういうふうにできますよね」という現実的な橋渡しをする人が誰かいないと始まらない。
アルパカはTradFiとDeFiの両方を理解しています。こういう世界になっていくというのは、3〜4年前から見えていたので、それに向けてどういうインフラを作るかをずっと考えてきたところに、ちょうどタイミングが来たという感じですね。
Instant Tokenization Network(ITN)と流動性向上
まず大前提として、RWAのトークン化が流行るためには流動性が必要ですが、それを上手く提供できているところはまだまだ少ないのが現状です。
ではなぜ株が今盛り上がっているかというと、株は少なくとも現物市場がしっかりしているので、価格形成(プライスディスカバリー)に関しては依存できるんです。他のアセットでいきなりトークンから始めてしまうと、誰がマーケットメイクするのかという問題が出てきますが、株はありがたいことに流動性がすでにあって、プライスディスカバリーのところを作り込まなくてもある程度成り立つ。ステーブルコインのような1対1の裏付けの仕組みがちょうどいいわけです。
ここではっきり言うと、アービトラージの機会が存在しています。原株のマーケットは規制がしっかりしていて、米国ではNBBO(全米最良気配)などの規制があり、一定のスプレッドしか取れません。しかしクリプト側ではスプレッドがある程度広がっていても取引が成立します。
例えば、通常のテスラ株を100ドルで買って、同時に暗号資産取引所ではトークン化されたテスラが101ドルで売れる状態にある場合、100ドルで買って101ドルで売るということができます。このスワップを瞬時にやれるのがITNの役割なんです。
これが実現するとマーケットメーカーたちはアービトラージで利益を得られるようになるので、結果としてトークンの価格がペッグしやすくなります。単にお金をつぎ込むだけではなく、こういうメカニズムがあるからこそ価格が安定してくる。USTのように崩壊したステーブルコインの教訓もあり、メカニズムとしてペッグを維持できる仕組みが重要です。経済的にその修正を行うインセンティブのある人がそこにいさえすれば、価格形成が担保される。そうなると人は信頼して使いやすくなるわけです。
Instant Tokenization Network(ITN)とは
アルパカが提供するトークン化株式の発行・償還インフラ。米国の規制認可を受けた機関向けに、株式のトークン化と償還を単一のAPIで完結できる仕組みを提供する。24時間365日アクセス可能で、従来の現金決済による遅延を排除。EthereumやSolana上でトークン化された米国株式の流動性向上を目的としている。
仕組み上は、従来の証券市場で株を買って、数秒後には自分のウォレットにトークン化された株式が届くというイメージです。アルパカに株式を預けて、トークンに変換し、あらかじめ登録されたウォレットアドレスにトークンが送られてくる。これを全世界で、各国の法律に準じた形で提供しています。
アルパカとしては米国の証券会社として、お客様に口座を開設していただき、ドルを預けて株を買ってもらう。買った株をトークンに変えるAPIコールを実行すると、登録済みのウォレットアドレスにトークンが届くという流れです。
トークン化株式市場でのシェア獲得
元々アルパカはこの世界を見据えていました。いずれこういう世界になっていくというのは分かっていたし、それに向けてクリプト関連のプロダクト開発を進めてきたことが大きな要因です。
具体的には三つの要因が組み合わさっています。まずTradFiの方でセルフクリアリング(金融・取引の自己清算)をしっかりやっていること。次に、暗号資産のトランザクションをさばけて、同じプラットフォーム上でステーブルコインを受け取って原株を買うということが以前からできていたこと。そして、リアルタイムで処理できる最新のシステム設計を採用し、APIで柔軟に連携できるということ。
こうした機能を全て備えているのがアルパカしかいなかったんです。ニーズが来た時に「アルパカならできる、他では難しそう」という状況になり、必然的にアルパカが選ばれるようになりました。
クラーケンについて言えば、うちのシリーズBの投資家であるトライブ・キャピタルのGPだったアルジュン・セティが、クラーケンのCEOになっています。2024年のアブダビ・ファイナンスウィークでアルジュンと色々な話をしましたが、その後クラーケンも同じ方向に進むことが見え、「アルパカと組んで色々やるぞ」という話になりました。
エコシステムへの影響という意味では、アルパカみたいなスタックがないとなかなか実現は難しかったのではないかと思っています。各社でアイデアが出てきた時に、数ヶ月のスピード感で実現できたのもアルパカの技術があってこそです。
セルフクリアリングとは
証券会社が取引の約定から決済・清算までを自社内で完結させる仕組み。通常は外部の清算機関に委託するが、自社で行うことでコスト削減や処理の迅速化が可能になる。米国ではFINRA(金融業規制機構)の厳格な審査を通過した証券会社のみが取得できるライセンスで、アルパカはこれを保有している。
フィクストインカム(債券)は十分にあり得ますね。Ondoなんかはそれ以前からトレジャリーのトークン化をやっていますし。ただ、話題性や個人投資家の関心という点では、やはり株式の方がはるかに大きいです。
不動産のトークン化も日本含めて動きが出ていて、例えばUAEなどは不動産を売りにしたいので政府レベルでトークン化を進めています。サウジアラビアもスクーク(イスラム債)のトークン化を進めようとしている。これらが米国株の次の2番手という位置づけですね。
面白い例で言うと、トルコのスタートアップが、銀行のクレジットリミット(小切手の何ヶ月先の支払い債権のようなもの)を紙からトークン化すると言っていて、それを小口化して支払い手段のように使ったり、不動産オーナーが将来の賃料をトークン化してそれでトークン化された株を買う、といった世界も見えてきています。まさにトークンエコノミーの世界だと思います。
日本市場への展望
まずビジネスとして、日本はアルパカにとって重要なマーケットです。米株の取次ぎや暗号資産のビジネスとして重要なポジションにあります。人材面でも日本は面白く、日本に来たい外国人はいるけれど満足する仕事がそんなにない中で、アルパカのような会社は魅力があります。フルリモートでグローバル採用をしていますが、日本もハブの一つとして機能しています。
RWAトークン化という文脈で言うと、ぶっちゃけて言えばトークン化は国に対する脅威だと思っています。ボーダレスが前提ですから。例えばSECのクリプトタスクフォースが立ち上がってパブリックコメントを受け付けた時、「そんなものはイリーガルだ」というコメントもあったが、しかしSECは「これをやらないと第三国でやられて困るでしょう。自分たちの監視下でやらないとどんどん逃げてしまう」と返したそうです。国もそのくらい脅威を感じているんです。
僕は正直に言えば、ボーダレスな世界になってほしいと思っています。ただ日本については、ガラパゴス化しないようにしたいし、してほしいと思っています。「Web3」という言い方もそうですが、日本の中だけで完結して日本人だけで考えて答えを出そうとすると危険です。
例えば株式市場の24時間取引の議論でも、日本の市場がどうこうという話ではなく、もうどんどん入ってくるし出ていくという中で、どう接続しやすくするかの方が大事です。DTCCではこうなっているから日本もそれに合わせた方がいいとか、アルパカは情報提供を通じてそうした貢献をしていきたい。日本独自で他国の人が使えないようなシステムになってはいけません。
日本にはアセットが大量にあります。例えばプライベートエクイティファンドのように今まで機関投資家しかアクセスできなかった商品をトークン化して小口にスライスし、日本どころかインドネシアの大学生がその一部を買っていくような世界観を、意識し始めています。
そのディストリビューションの部分でアルパカとしてやれることは結構あるだろうし、日本に拠点を持ち、日本語でそういうビジネスができるというのはアドバンテージでもあります。「待っていてもどうしようもない」ので、日本に入っていって直接話をして、ビジネスの機会を作っていきたいと考えています。
今後の展望:グローバル金融のOS(オペレーティングシステム)へ
社内で僕が言っているのは「オペレーティングシステム」ですね。WindowsやAndroidのようなものです。
色々なメーカーが作った様々なハードウェアがあって仕様もバラバラなのに、Windowsが出てきて同じWindows SDKを使って作れば東芝のパソコンでもNECのパソコンでも同じように動くようになった。それと同じことが、グローバル金融ではまだ実現できていません。UKのレギュレーションは日本とは違う、同じベンダーはそれぞれあるけどポータブルじゃない。
アルパカのインフラがそこを全部抽象化するレイヤーになれば、例えば海外のフィンテック企業が「日本にも展開しよう」とか「アフリカに進出しよう」とか、そういう話がもっと早く進むはずです。新しいフィンテックのアイデアが出てきた時にも、低予算でどんどん試せる。いちいちライセンスを取って、キャピタルを準備してという膨大な時間がかかっていたものが、アイデア一つでアプリを作れて、ニーズがある場所でビジネスができるような世界です。
さらに先を見据えると、今は証券市場に上場した株をトークン化するという流れですが、最終的には「なぜ証券市場に上場しなければいけないのか」という問いに行き着くはずです。既に上場している会社が「上場株の3割はオンチェーンで発行します」ということを考え始めている。信用を担保するディスクロージャーや透明性の仕組みがオンチェーンで確立されれば、5年後にアルパカがIPOする時に「証券市場に上場する意味が分からなくなりました」と言って、オンチェーンで直接発行し始めるかもしれません。
そういう世界になっても、ブローカーの役割は絶対に必要です。シングルチェーンにはならないはずで、マルチチェーン間の決済を誰が担当するのか。レバレッジを提供する信用供与の仕組み、「この人は後で払ってくれるだろう」という信用を担保する人——それはブローカーの本質的な役割です。今までの10年20年のやり方をそのまま続けようとする人たちは淘汰されるかもしれませんが、アルパカはどんどんその先に向かっていく。それがアルパカの5年以上先のビジョンです。
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